先週末の3日の東京株式市場は、主力ハイテクを中心に買いが優勢の展開となり、日経平均株価は11月19日以来2週間ぶりに1万1000円の大台を回復した。その全体相場上昇のリード役となったのが、NECグループ企業の株価が軒並み上昇したことだ。12月2日に発表されたNECによる突然の上場2社完全子会社化による株式市場の波紋を探った。
NECは2日、同社のソフト関連子会社のNECソフトとNECシステムテクノロジーを公開買付(TOB)と株式交換によって完全子会社化すると発表した。TOB価格はNECソフトが1株当たり3200円、NECシステムテクノロジーが同4200円。買い付け期間は12月6日から来年1月20日。TOBで全株の買い付けができなかった場合は、2005年6月1日に株式交換によって完全子会社とする。NECは、NECソフト株の37.13%、NECシステムテクノロジー株の66.67%を所有しており、両社の完全子会社化によりグループのシステムインテグレーションサービスとソフトウェア開発の事業体制の再構築を図る。
この発表を受けて翌日3日の東京株式市場では、NEC本体の出来高が1億株を超え、第2位となった日産ディーゼルの3417万8000株の3倍以上とダントツのトップとなった。株価も一時、前日比41円高の616円まで買い進まれ、終値は同39円高の614円となった。また、NECソフトは前日比400円高の3070円、NECシステムテクノロジーも同500円高の3770円と買い進まれ、2社ともに大引けで2000万株を超える買い物を残してストップ高比例配分で引ける買い人気を集めた。さらに、コンピュータ保守のNECフィールディングが同124円高の2095円、半導体専業大手のNECエレクトロニクスが同280円高の4890円で取引を終了した。この日は社名に「NEC」と名のつくグループ上場会社は、軒並み値を上げる展開となった。
NECではこの完全子会社化について、「グループの事業体制を再構築することで、ソフトウェアに対するニーズの高まりに対応するとともに、迅速な意思決定と柔軟かつ効率的な経営施策を実施するために行う」としている。ある中堅証券では、「このところ表立った好材料もなく、NECの株価は富士通の後じんを拝すなどさえない展開にあったが、思い切った経営方針の転換が、株価面ではポジティブにとらえられたようだ」と指摘している。
しかし、一方では突然の上場子会社2社の完全子会社化に批判の声も上がっている。外国証券のアナリストは「NECはこれまで、子会社の経営力強化によりグループ力を高める戦略で、子会社の上場を積極化してきた。しかし、ここにきて海外向け第3世代携帯電話の中核部品に組み込むソフト開発の遅れが響き、NEC本体の今3月期連結営業利益の減額修正につながった。これがきっかけとなり、コンピュータ以外の分野でのソフト開発のニーズが飛躍的に高まっていることに対応するために、グループ会社に分散していたソフトの開発力を一本化して効率を高めていく。しかし、2003年9月に新規上場してわずか1年しか経っていないNECシステムテクノロジーを完全子会社化によって上場廃止するという一貫性のない経営戦略に、株主からの批判が起きることも十分予想される。少なくとも経営首脳陣の先を見通す能力の乏しさは、問題とされても仕方のないところだろう」としている。
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