主力ハイテク銘柄の多くが株価低迷にあえいでいるなかで、一部市場関係者のあいだから、パイオニアについてハイテク銘柄出直り相場の先導役として期待する見方が浮上している。
同社は、カーエレクトロニクスとホームエレクトロニクスを主力事業としているが、最近ではデジタル家電部門の伸びが急速で、デジタルハイビジョン放送向けプラズマテレビ(PDP)が好調な推移をみせている。とくに、2006年からハイビジョンの本放送が予定され、現在は試験放送中の欧州での売上高が拡大している。同社では「2006年にサッカーのワールドカップ・ドイツ大会が開かれることも追い風。欧州のPDP普及率は日本に比べてもまだ低く、これをきっかけに攻勢をかけたい」(広報担当)としている。
PDPの技術は主に日本で開発されたものの、液晶テレビに比べ画面の大型化が容易な半面、薄型テレビとしては重量が重いのが難点。同社のPDPも43型と50型の2種類。ただ、日本に比べて部屋のサイズが広い欧米ではむしろ大画面テレビとしての需要が多いといわれる。2004年のPDP需要は、日本では前年比60%割増の45万台の見通し。しかし、欧州では60万台、米国でも86万台の見通しと、ほぼ倍増の勢いが予想されている。準大手証券のアナリストは「パイオニアは現状でもPDPの世界シェアの15%を占めているが、今後は早期に20%に引き上げるのが目標」としている。
米国の格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスは、9月9日付けでパイオニアの無担保長期債務格付け「Baa2」を引き上げ方向で見直すと発表している。今回の見直しは、同社の収益力に支えられた財務の安定性が継続的に向上しているとの見方を反映しているという。
7月28日に発表されたパイオニアの2005年3月期の第1四半期(4〜6月)の連結営業利益(米国会計基準)は前年同期比35%減益となった。これはDVD(デジタル多用途ディスク)レコーダなどのデジタル家電製品の単価下落による売上高原価率の悪化、広告費用の増加が大きく響いたためだ。ただ、広告費増は、同社の販売戦略の積極化のためであり、今3月通期の連結業績について会社側は、従来の営業利益500億円(前期比14%増)、経常利益480億円(同14%増)の見通しを変えていない。
パイオニアの株価は8月以降2000円台前半の安値圏でもみあいを続けてきたが、9月3日の2290円で2番底をつけ、そこから上昇に転じたかたちとなっている。16日現在で株価は2400円台まで回復している。市場関係者は「DVDにしても、PDPにしても販売台数自体は今後も順調な推移が見込まれている。問題は販売価格の低下がどこまで食い止められるかにかかっている。そのなかでカギを握るのは、やはり欧米のクリスマス商戦でのPDPの売れ行きだ。株価面では、こうした業績動向のほかに、信用取引の買い残が膨れていることも上値を抑える要因となっている。当面のフシとみられる2600円を大きく超えてくるようだと、一気に3000円に接近することも十分想定できそうだ」としている。
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