大型連休前に相次いで発表された主力ハイテク企業の前3月期決算と今3月期の業績見通しを受けて、大半の総合電機各社の株価が反落に転じているなかで、年初来高値を更新し続ける富士通の株価面での強さが際立っている。果たして今3月期の業績回復見通しは本物なのか。
富士通が4月27日に発表した、前期の2004年3月期の連結決算は、売上高4兆7668億円(前々期比3.2%増)、営業利益1503億円(同49.7%増)、経常利益497億円(同4倍)、最終利益497億円(前々期は1220億660万円の赤字)となった。最終損益が黒字転換したことで2期ぶりに復配し、期末配当3円を実施する。
前3月期増益の最大の要因となったのは、まず、プラズマディスプレイ(PDP)事業の黒字化など電子デバイス関連の伸長があげられる。主力のソフトウェア・サービスの営業利益は、欧州地域の子会社再編で特別損失を計上したため、前期比377億円減の1387億円となったものの、好調なAV(音響・映像)機器関連の電子デバイスの営業利益が同591億円増の275億円と、前年度の赤字から黒字に転じ、ソフトウェア・サービスのマイナス分をカバーした。
さらに、前3月期決算の大きな特徴は、巨額な特別損益の計上で、これまで足かせとなっていた事業構造の大幅な改革をほぼ達成したことにある。特別利益では、ファナック株の売却により1170億円、厚生年金基金の代行返上による1465億円など合計2948億円を計上。一方で欧州、北米を中心としたグローバルな再編による損失や、国内ソフトウェア・サービスの基本構造の見直しによる回収不能額683億円の償却など特別損失1875億円を計上することで、長年の足かせとなってきた事業の構造改革をほぼ達成したことになる。
今期の2005年3月期の連結業績について同社は、売上高4兆9500億円(前期比3.8%増)、営業利益2000億円(同33%増)、経常利益1200億円(同2.4倍)、純利益は700億円(同40.8%増)を見込み、配当は年間6円を計画すると発表している。また、連結1株利益は35円を予想している。
今期の増益の背景となっているのは、前期に思いきって回収不能額の償却を実施したソフトウェア・サービス部門での営業利益の改善を見込んでいるためだ。さらに、引き続く世界的なデジタル家電需要の継続に加え、アテネオリンピック、サッカーユーロカップなどのスポーツイベントに関連した特需により、PDPや、デジタル家電向けのロジックICなどが堅調に推移することも寄与するためだ。
さて、今後の株価推移についてだが、準大手証券の投資情報部では「今3月期の業績が順調に拡大する可能性が高いことは確か。しかし、株価はそれをかなりの部分織り込んでいるようだ。今期の連結1株利益予想は35円だが、株価は772円(4月30日の年初来高値)で試算したPERはすでに22倍と割安感には乏しい水準となっている。株価は今後も強含みのジリ高傾向が続きそうだが、今後株価が1000円台乗せを目指すには、かなりインパクトのある好材料の出現が必要となりそうだ」としている。
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