日本株の米国株相場離れと国内ハイテク株の行方

 市場関係者のあいだで、日本の株式相場の米国離れを指摘する声が日増しに大きくなっている。2月下旬以降、NYダウ平均株価やナスダック総合指数が下落傾向となり、調整局面入りが鮮明となっているのに反して、日経平均株価は昨年来高値を更新し続ける堅調な展開が続いている。昨年までは、米国株式相場の動向をそのまま引き写したような「写真相場」といわれる状態が続いていただけに、この米国離れともいえる株価推移の先行きに注目が集まっている。

 東京株式相場が出来高を伴い目立って上昇しはじめたのは、ちょうど1カ月前の2月下旬から。日経平均株価は2月25日の安値1万617円から3月18日の高値1万1647円まで9.7%上昇した。これに反して、NYダウ平均株価は2月19日の高値1万753ドルから3月15日の安値1万92ドルへと6.8%下落。さらに、ナスダック総合指数は、1月26日の高値2153ポイントから3月16日の安値1927ポイントへと10.5%下落している。

 東京株式相場上昇の背景について大手証券のストラテジストは「3つの理由に集約できそうだ」と語る。まず1つめの理由は、中期的な企業業績の回復傾向が鮮明になってきたことだ。「金融機関が抱えてきた不良債権の処理に一応のメドがつき、製造業を中心とした事業会社も継続的なリストラの進ちょくによって、今3月期に続き来期も利益を捻出しやすい企業体質の強化が見込める」と同ストラテジスト。

 2つめは、中国を中心としたアジア地域の経済成長だ。同氏は続けて「アジア地域は従来から日本にとって効率的な生産拠点となっていたが、今後所得水準が高まるにつれて重要な消費地にもなる。さらに、最近メキシコとのあいだで結ばれたFTA(自由貿易協定)なども好材料といえる」と指摘する。

 3つめは外国人投資家の積極的な日本株買いがスタートしたことだ。世界的に長期金利が低下傾向を示すなかで、外国人投資家は少しでも有利な投資先を探しているが、「米国や欧州の株式市場に割高感があるのに比べ、日本は株価の戻りがまだ小幅に止まって割安感があるため注目されている。さらに景気面でも、これまで長期間低迷を続けていた内需の回復に期待が持てるという判断のようだ」としている。

 確かに2月下旬以降の日本株上昇のけん引役となったのは、いわゆる内需関連といわれる業種の銘柄群で、不動産、建設、鉄鋼、化学、小売、銀行といったセクターの株価指数が上昇率上位を占めることになった。これに比べて電機はほぼ横ばい、精密機械の業種別指数に到っては日経平均が上昇しているなかで、小幅ながら下落しているのだ。

 米国の株価が調整局面に入っていることについて外国証券の電機業種担当アナリストは「IT関連を含むハイテク株については、その主力銘柄が国際優良であり、業績などの動向が瞬時に世界中の投資家に知れわたる。したがって、買いのタイミングがどうしても前倒しとなり、業績がピークを打つ前にすでに株価面では売りが先行する習性を持っている。米Intelの1〜3月期の売上高が予想の範囲にとどまるとの発表を受けて株価が急落したのはその典型例だ。当然日本のハイテク企業も同様で、業績の動向に比べて株価はかなり先行することになる。これに加えて外国為替相場の波乱展開も大きく作用する」としている。

 昨年春から秋にかけて、ハイテク株を中心とした全体相場は急上昇をみせたが、その象徴的存在とされたNECの株価が上昇しはじめたのは1年前の4月下旬のこと。はたして今年もIT関連を中心としたハイテク関連銘柄主導の上昇相場は訪れるのか。

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