インターネットサービスを提供するエッジの株価が、これまでの株式市場の長い歴史の中でも例を見なかった異常な値動きをみせている。昨年末の12月25日から今月20日まで15営業日連続ストップ高となった後、21日から連日のストップ安を続ける超波乱展開となっている。なぜこうした異常な動きとなっているのか、その背景を探った。
15日連続のストップ高という前代未聞の異常な株価上昇劇の背景にあるのは、従来の1株を100株にするという、これまでにもあまり見られなかった大規模な株式分割だ。同社は12月末日現在の株主を対象にこの株式分割を実施した。株式分割権利付き最終日である12月24日の終値は22万2000円。したがって、翌日の100分割後の基準価格は2220円ということになった。
これまでは、破たん企業以外に最低投資単位数千円で投資できる銘柄は存在せず、分割発表時から話題を集めていたが、12月25日は朝方から売り注文の1万倍に達する約140万株(約4800件)もの買い注文が殺到した。この株数は一般的な1000株単位なら14億株に相当し、マネーゲームに沸いたあしぎんフィナンシャルグループのピーク出来高(6億株)も大きく上回る異常な水準だ。
株価が15日連続でストップ高となった背景には、単に売買最低単位が2220円と極端に引き下げられたことによる買い易さや、流動性向上への期待感だけではない。100分割に伴う、新株交付(2月20日)前の需給ひっ迫も一因といえるだろう。株価が21日に1万8220円の高値をつけたとき同社の時価総額は約9457億円に跳ね上がり、新興3市場トップの楽天を大きく上回った。
一方、新株の発行日取引の株価は2700円水準で、親株とは大きな開きがある。発行日取引というのは、新株が発行された後に決済することを約束して手元にない新株を売買する取引。新株交付の前日まで売買され、新株公布日に親株と併合される。本来であれば親株と同等の評価がされてもいいはずだが、新株還流日にかけて株価が急落するケースが一般的なうえ、発行日取引の特殊性も影響している。例えば反対売買は可能だが、決済はあくまで新株発行後。システム対応や手間の面で、オンライン証券をはじめ扱っていない証券会社が多いほか、扱っていても委託保証金が多額など、この取引に参加できる投資家は限られているのが現実だ。
15営業日連続ストップ高のあと、一転してストップ安が続いている背景には何があるのか。新株交付(2月20日)まで需給ひっ迫を背景に異常な株価を形成してきたが、そろそろ新株還流による反動安が意識され始めたということだ。先行して昨年9月末に21分割の株式分割を実施したインボイスは、ストップ高を続けた後、取引時間中に売買が成立した翌日から波乱展開となっており、エッジも重要な局面を迎えている。ファンダメンタルズを無視して派手な株価パフォーマンスを演じてきたが、ここにきて新株交付(2月20日)後の需給悪に意識が向かっているようだ。
エッジの2004年9月期の連結経常利益は、前期比55%増の20億4300万円になる見通しだ。新たに構築したポータルサイトを軸に展開する消費者向け事業の大幅な拡大を見込んでいる。さらに、法人向けのウェブコンサルタント事業も大型案件の比率が増加する見通しとなっている。また、2002年に営業権を取得した無料ネット接続サービス「ライブドア」をより活用するとして、2月1日から社名も「ライブドア」に変更する予定だ。
ただ、会社予想の今9月期の連結1株利益は23.7円に過ぎず、株価1万8220円で試算した連結PER(株価収益率)は768倍と、異常値というほかはない。例えば、連結PER 20倍と想定した場合の妥当株価は474円ということになる。したがって、今回の異常株価は、ファンダメンタルズとは一切関係ない市場内特有の需給要因によるものだということがいえる。
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