ニューヨークダウ平均株価の1万ドル台回復、フセイン元イラク大統領の拘束など買い支援材料が浮上しているにもかかわらず、東京株式市場は依然として平均株価1万円を挟んだ神経質な展開で、下値不安を残した軟調な動きが続いている。こうした低迷相場から脱し切れない要因として市場関係者のあいだでささやかれているのが、指標とされるIT関連代表銘柄の相次ぐエクイティファイナンス(新株発行を伴う資金調達)強行による全般相場に与える需給悪化懸念だという。
ソフトバンクは12月11日引け後に、海外エクイティファイナンスを発表した。最大で2300億円という直近のNEC、ソニーに続く大型の資金調達が嫌気され、今週に入っても個人投資家からの見切り売りが止まらず、株価は18日にとうとう3000円の大台を割り込んだ。これについて市場関係者は「ソフトバンクは値動きの激しさなどから、個人投資家好みの象徴銘柄。エクイティファイナンスで需給が一段と悪化し、投資意欲を冷やすとの懸念が強まった。個人投資家からは“株価が年初来高値の7370円に比べて半値以下の水準となっているなかで、エクイティファイナンスを強行する経営者の考えが理解できない。とにかく株主を軽視していることだけは確か”との厳しい声が聞かれるほどで、グループ会社のソフトバンク・インベストメント、ヤフーなどの株価急落も含め株式市場に大きなマイナス影響を与えた」としている。
NECの株価は、17日に一時前日比22円安の726円まで売られるなど続落している。これは、その当日が2億5000万株の新株発行の株券交付日と2300万株の株式売り出しの受け渡し日に当たっており、株価が公募・売り出し価格の1株711円を上回っていることから、増資に応じた投資家からの利益確定の売りが先行したようだ。
同社は11月21日に新株発行による公募増資を行い、2076億円の資金調達を行うと発表した。発行株数は2億5000万株(海外分が9600万株)。さらに投資家の需要が旺盛であった場合には、主幹事の大和証券SMBCがNECの既存株主から2300万株を上限とする株式を借り受けて売り出しを実施、売り出し相当分の株式をNECが大和証券SMBCに割り当てるという内容のものだった。
ソニーは12月1日に、発行総額上限2500億円のユーロ円建て転換制限条項付転換社債型新株予約権付社債の発行を発表した。これにより先行きの株式への転換による1株利益の希薄化が懸念されて株価がジリ安傾向を辿り、下落に歯止めがかかっていない。エクイティファイナンスが公表される前の株価3800円に比べて現在の株価は3500円レベルでの推移となっている。
それぞれまったくタイプは異なるものの、IT関連の指標銘柄という共通項を持つこの3銘柄のほぼ同時期に実施された大規模なエクイティファイナンスは、全体相場にも予想以上のマイナス影響を与えているといえそうだ。
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