12日の東京株式市場で、NTTの株価が値幅制限いっぱいのストップ(5万円)高となり、50万1000円まで買い進まれた。同社株が大引けでストップ高まで買い進まれたのは、1998年10月7日以来なんと約5年1カ月ぶりのこと。表向きは、前日11日に発表された9月中間期の連結決算が事前の大方の予想に比べて好調だったことが評価され、株価が上昇したとされている。しかし市場関係者の一部からは、「好決算によるサプライズは単なるきっかけに過ぎない。NTTのような超大型株がストップ高となるにはほかにも理由がありそうだ」との見方が浮上している。
NTTが11日に発表した2003年9月中間期の連結決算(米国会計基準)は、売上高5兆4124億円(前年同期比0.8%増)、営業利益8366億円(同1.6%増)、税引き前利益8426億円(同9.5%増)となった。さらに、2004年3月期通期の連結営業利益については、従来予想の1兆3140億円から1兆4480億円へと1340億円上方修正された。
今回の中間決算で最も注目すべき点は、NTT東西両社を主体とする地域通信部門の営業利益が大幅な増益基調となったことだ。9月中間期のNTT東西の合計の営業利益は期初予想の570億円から1260億円へと690億円も上方修正された。これは、NTT東西から大量の人員が新設の設備系、営業系のアウトソーシング子会社群に再配置されたことなどにより採算が向上し、人件費や業務委託費、減価償却費を中心に合計1900億円のコスト削減に成功しているためだ。さらに、NTTドコモの自社株買いに伴う同社株の売却益492億円の計上で営業外損益が膨らんだことも、税引き前利益を押し上げる要因となった。つまり、リストラによるコスト削減と子会社の保有株の売却益による好決算ということだ。
外国証券のアナリストは「確かに、事前に決算を発表したNTTドコモ、NTTデータの9月中間期の連結業利益がともに減益だっただけに、今回のNTTの決算にはある程度のサプライズはあった。ただ、どう過大に評価してもストップ高に結びつくような内容とは言い難い。急騰の背景には株価の位置と株式需給のタイミングがあったようだ」としている。確かに11月4日まではなんとか50万円絡みの水準で推移していた株価が5日、6日と連日の急落をみせるなど、同社の株価はこのところ下げ基調となり、6月半ば以来の安値水準である45万円レベルにまで低下して割安感が出ていた。
さらに、準大手証券の投資情報部では「12日の朝方にNTTにまとまった買いを入れ、急上昇のきっかけをつくったのは外国人投資家だった。しかし、その後小康状態にあったNTTの株価が一気にストップ高まで買い上がったのは、国内のネット証券を利用して売買している個人投資家と一部の証券会社の自己売買部門だった。つまり、ソフトバンクが年初来高値から40%も下落しているなど、一連のIT関連株が一斉に値崩れを起こし、手詰まり感が強まるなかで、目標を失ったかなり投機色の強い資金が、シンボルストックとしてNTTに向けて集中的に流入したのではないのか」としている。
確かに50万円を割り込んだNTTの株価に割安感はあるものの、NTTグループ自身は今後3年間で、固定系通信事業の不振により1兆円の減収を見込んでいることを忘れてはならない。さらに、株式需給の面では政府保有株の売却問題も依然としてくすぶり続けている。当面、NTTの株価の上値余地はかなり限られたものになりそうだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス