ポータルサイト「Daum」を運営するDaum Communications(Daum)が、韓国Microsoft、およびセットトップボックスメーカーのCelrunと覚書を締結し、IPTV事業に進出する意向を発表した。
「オープンIPTV(仮称)」と名付けられたこのサービス。映像コンテンツだけでなく、ブログやチャット、検索などあらゆるWebサービスを利用できるほか、デバイスもテレビをはじめ、PCやUMPCなど多様に対応する点が、最大の特徴となっている。
おもにDaumがIPTVに特化したコンテンツなどビジネスモデルを考案し、韓国Microsoftは自社のIPTVプラットフォームである「Mediaroom」を提供、Celrunはセットトップボックスの提供を、それぞれ担当する。
また「Xbox 360」をセットトップボックスとして利用できるようにもする方針であるほか、「既に他国の20事業者が採用している」(Daum)というMediaroomを通じて、海外とのコンテンツ交流をも狙っている。そのためCelrunでは海外向けのセットトップボックスを供給する予定もたてるなど、当初から目標は壮大だ。
この事業のため3社はジョイントベンチャーを立ち上げ、第2四半期中には実際のサービスを開始したいということだ。
オープンTVが始まれば、Daumにとっては事業拡大の大きなチャンスになる。IPTVをさまざまなデバイス向けに、国内外でサービスするという当初の目標が実現すれば、Daumが利用される機会が格段に広まるというものだ。
ところで韓国で現在、IPTVサービスを提供しているのはKT(Mega TV)とHanaro Telecom(Hana TV)、LG DACOM(My LG TV)だ。
中でもKTは、Daumの最大のライバルである「Naver」を運営するNHNと、IPTVにおける検索エンジンの提供で提携している。これにより、たとえばMega TVを見ていて、番組に気になるタレントが出きた際、すぐにNaver検索でその人のプロフィールを検索できるようになる。これ以外にもNaverが保有するその他のコンテンツや、NHNによるゲームポータル「Hangame」のコンテンツも提供される予定だ。またKTはSCE Koreaとも提携しており、「PLAYSTATION 3」をMega TVのセットトップボックス代わりに利用できるようにもなっている。
韓国トップクラスのポータルサイトと、世界トップクラスのゲーム機同士が、IPTVで激突している構図となっているのだ。
ただしこの戦いの構造には、決定的に異なる点がある。それはオープンTV陣営には、自社でネットワークを持つ通信事業者がないということだ。KT、Hanaro Telecom、LG DACOMはいずれも通信会社である。
こうした点はオープンTVにとって、不利な材料にもなり得る。安定したIPTVサービスを提供するには、通信事業者たちが保有するネットワークを確保しなければならないからだ。ネットワークを確保することになれば、その対価を支払うことになりコストが上がる。コストが上がった分は顧客にしわ寄せが来かねない。IPTVサービス分野ではライバルとなる通信事業者とオープンTV陣営が、どう話し合いをつけるかが鍵になる。
NHNがKTと提携したのだから、Daumもその他の通信事業者と提携できたのかもしれないが、あえてそうではない道を選んだ。自身のネットワークを利用してもらうことを主目的とする通信事業者のそれとは異なり、Daum自身が主導権を握って、コンテンツ力、デバイス力で、多様な人にIPTVをサービスするというのは、文字通り“オープン”TVの長所である。しかしその前にはサービスの根幹を握る通信事業者との話し合いという、大変大きな難関がある。彼らといかにうまく交渉し、優れたコンテンツを、できるだけ安価に提供していくかが、オープンTVが描く壮大なサービスの成功を左右することになりそうだ。
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