韓国最大の携帯メーカーサムスン電子が音楽サービス市場に本格進出した。
3月初旬、サムスン電子と音楽配信サービスのSoribadaは、音楽配信事業に必要な端末とコンテンツを相互提供し、音楽関連商品も共に開発していくという内容の覚書(Memorandum of Understanding:MOU)を締結した。両社は3カ月以内に本契約を結ぶ予定だという。
Soribadaはファイル交換により音楽をダウンロードできるサービスだ。2000年にサービスを開始。当時は無料でファイル交換ができるということで人気を集め、韓国でも1、2位を争う最大級のサービスに発展した。しかしこれが著作権侵害であると音楽関連団体などから訴えられ、一時サービスが中断する時期もあったものの、2006年から有料サービスを行うなどして、法廷関連の問題もほぼ解決している状態だ。
このようにSoribadaの明るい兆候が見えた途端に発表されたサムスン電子との提携。そこにはどんな意図があるのだろうか。
サムスン電子は知ってのとおり、半導体やLCD、携帯電話を通じてハードウェア領域において大きな成功を収めているメーカーではあるが、コンテンツの競争力にいたっては決して強いと言えないのが現状だ。
しかし今後それでは携帯電話市場で勝ち抜くことはできない。折りしも世界の携帯電話市場は音楽サービス花盛り。AppleのiPhoneをはじめ、メディア配信サービスなどを手がける米Loudeyeを買収したNokia、2006年に音楽配信サービス「M-BUZZ」を開始したSony Ericssonなど、端末とセット売りできる強力なコンテンツを、メーカー自らが持つようになってきているのだ。
たとえ魅力的な音楽携帯があっても、その競争力はコンテンツの豊富さにも左右される。そのためサムスン電子としてもコンテンツ確保は切実な状況だ。そんなタイミングで法的問題がほぼ解決し、もともとコンテンツや会員も豊富なSoribadaに、サムスン電子が魅力を感じない理由はないだろう。
こうしてサムスン電子が音楽サービスを強化すれば、韓国市場にも少なからず影響が及ぶことが予想される。
韓国では3つのキャリアがそれぞれ独自の音楽配信サービスを提供しており、携帯電話による音楽配信サービスの代名詞のようになっている。サムスン電子も「Anycall Land」といったウェブサイトを通じて音楽配信を行ってはいるが、今のところは、それほど存在感のあるサービスとは言いがたい。
しかしここでSoribadaという有名サービスの看板を引っさげてサービス拡大を図れば、キャリアによる音楽配信サービスとも対等に戦えるほどの勢力になるだろう。そうなるとキャリアとメーカーによる会員の取り合い合戦が始まることは必至だ。大手メーカーによる音楽配信参入が相次ぐ世界市場も同様といえないだろうか。
3月中旬にサムスン電子は、特定の携帯電話向けとしては初めて歌手のビヨンセを広告モデルとして起用するなど、音楽携帯の強化に向け少しずつ歩み始めている。Soribadaとサムスン電子との強力によりコンテンツはどのような形でサービスされ、これが他社にどのような影響を与えていくのか、2007年のサムスン電子はコンテンツにも注目が集まる。
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