ラスベガス発--サムスン電子が絶滅の危機にひんしたポータブルテレビに救いの手を差し伸べようとしている。
韓国の電子機器メーカー大手であるサムスン電子は米国時間1月7日、当地で開催中のConsumer Electronics Show(CES)において、地方テレビ局が電話や車載テレビにデジタル番組を放送できるようにする技術を公開した。
このA-VSB(Advanced Vestigal Side Band)という技術は基本的に、建物や歩道の通行人といったさまざまな障害物による干渉からデジタル放送のストリームデータを隔離する仕組みになっている。サムスン電子の官公庁担当バイスプレジデントJohn Godfrey氏によると、A-VSB放送は、米国、カナダ、およびメキシコの通常のデジタル放送と同じ周波数を利用するという。
現在、車の中ではポータブルテレビを使ってアナログ放送を受信することができる。しかし米国では、2009年でアナログテレビ放送が終了する。デジタル放送開始後は、A-VSBを使わない限り外出先で番組を見ることはできなくなる。
サムスン電子によると、A-VSBで重要なのは、通常のデジタル放送と同じ周波数帯を使うため、導入が比較的低コストで可能な点だという。放送局側は、新しい機械を購入するほか、移動体にも確実に送信できるようモバイル信号に「ターボコード」を利用する必要がある。さらに、デジタル信号をモバイル用にチューニングし、暗号技術などを付加する必要もあるが、これには既に導入済みのインフラが利用できる予定だ。A-VSBはある意味、強化はされているものの、既存のデジタル放送とほぼ同じ信号だと言える。
Godfrey氏は「放送局は既存の機器と帯域を使える」と語っている。
韓国のデジタル放送局各局は、モバイル向けの番組を異なる信号に載せて放送していると、Godfrey氏は語っている。同国では、当初のペースこそ鈍かったものの、携帯電話でのテレビ視聴が人気を獲得しつつある。
A-VSBは、ある意味で限られた市場になる。Godfrey氏は、A-VSBではスポーツテレビ局ESPNを視聴できない点を指摘する。これは、A-VSBがローカル放送向けだからだ。A-VSB対応のバスに試乗した複数の人によると、テレビ画面がフリーズするケースが何度かあったという。それでも、何か対策を取らなければ車載テレビが生活の中から消えることになる。
サムスン電子では、この技術を2007年前半に標準化団体に提出し、2008年には製品を発売したい意向だ。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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