Appleが「iOS 16」のパブリックベータ版を公開した。今秋の正式リリースに先駆けて、新OSの機能を試すチャンスだ。iOS 16では、コミュニケーション、パーソナライゼーション、プライバシーをキーワードに、iPhoneのロック画面、「メッセージ」や「ウォレット」などのアプリが強化される。
Appleの年次開発者会議「Worldwide Developer Conference(WWDC)」の基調講演で発表されたiOS 16は、発売前から話題をさらっている「iPhone 14」と同時に正式リリースされる予定だ。対応機種は「iPhone 8」以降となる。
iOS 16の注目機能をまとめて紹介する。
「もうタイプミスで恥をかくことはない」と断言するのは、Appleのソフトウェアエンジニアリング担当バイスプレジデントのCraig Federighi氏だ。同氏によれば、メッセージアプリにはユーザーからの強い要望に応えて、次の3つの新機能が加わった。
1つ目は、送信済みのメッセージを編集する機能だ。つまりメッセージの送信後に誤字に気づいても、後から編集できるようになる。編集されたメッセージは、下のステータス部分に小さく「編集済み(edited)」と表示される。
2つ目は、送信直後であればメッセージの送信自体を取り消せる機能だ。これは今回のアップデートの中で、筆者が一番使う機能となりそうだ。メッセージを書いている途中で誤って送信してしまっても、「送信の取り消し(Undo Send)」を使えば読まれないうちに削除できるので、友人や家族に慌てた様子を見られずに済むかもしれない。
3つ目は、メッセージやスレッドを「未読」としてマークする機能だ。すぐには返信できないが、後で必ず対応したいメッセージがある時に重宝するだろう。
iPhoneユーザー、特に「Face ID」搭載iPhoneのユーザーが、普段最も目にする画面と言えばロック画面だろう。iOS 16では、iPhoneのロック画面が大幅にアップデートされる。まず、長押しでロック画面を編集できるようになる。スワイプするだけで色々なスタイルを試すことが可能だ。選んだスタイルに合わせて、背景写真のカラーフィルターやロック画面のフォントが引き立て合うように変化する。Googleが「Android 12」で投入した「Material You」のApple版とも言えそうだ。
時刻や日付のフォントをカスタマイズし、気温やアクティビティリング、カレンダーといったロック画面用ウィジェットを追加することもできる。イメージとしては、「Apple Watch」のロック画面のコンプリケーション(文字盤部分に表示される情報)が近いかもしれない。
異なるウィジェットを組み合わせカスタマイズしたロック画面を数パターン保存しておけば、スワイプ操作で簡単に切り替えられる。ロック画面に表示される写真を自動で変更するフォトシャッフル機能も追加された。
iOS 16に期待されている機能のひとつに、常時点灯ディスプレイがある。この機能はすでにほぼ全ての「Android」スマートフォンに搭載されており、Apple Watchも対応しているため、iPhone 14にも搭載されることを期待したい。
ロック画面の写真が通知で隠れてしまわないように、iOS 16ではディスプレイの下部に表示されるようになる。複数の通知が届いても画面が通知で覆われることなく、縦型のカルーセル形式で表示されるため、見た目がすっきりするだけでなく、iPhoneを片手で操作する人にとっては非常に使い勝手がいい。
通知に関しては、他にも改善点がある。バスケットボールの試合のスコアをチェックしている時など、1つのアプリから大量の通知が届くことがあるが、ライブアクティビティを使えば、ロック画面上で最新情報がリアルタイムで更新されるため、通知の洪水に悩まされる心配はない。
この機能があれば、スポーツの試合やワークアウト、フードデリバリーなど、リアルタイムで変化する情報を簡単に追跡できるようになる。
インターネットでは、一種の必要悪としてCAPTCHA(Completely Automated Public Turing test to tell Computers and Humans Apart)が利用されてきた。CAPTCHAはウェブサイトやサービスにアクセスしているのが人間であり、ボットではないことを確認するためのテストだ。個人的には、CAPTCHAはうっとうしい。ゆがんだ文字を読んだり、トラックを含む画像を全部見つけたりしなければならないからだ。iOS 16では、この洗練とはほど遠いプロセスに代わるものとして、「プライベートアクセストークン」が導入される。
Appleのウェブサイトにあるデモ動画によると、このトークンに対応しているウェブサイトでは、CAPTCHAを行わなくてもログインし、人間だと認証してもらえる。この動画によれば、Appleは対応サイトを増やすために複数の企業と話し合いを進めているとのことだ。つまり、iOS 16が正式にリリースされてもCAPTCHAを完全に回避できるわけではない。しかし対応サイトが増えれば、ストレスは減る可能性がある。
ウォレットアプリに関しては、取り込むことのできる州発行の身分証明書が増えるほか、セキュリティやプライバシー機能が強化される。iOS 16では、年齢などの個人情報も保護される。例えばウォレットには詳細な生年月日は表示されず、身分証明書と21歳以上であることのみが表示される。
また、「メール」やメッセージアプリを使ってキーを簡単に共有できるようになる。キーを受け取った相手は、そのキーを自分のiPhoneのウォレットアプリに追加できる。現在は共有キーの標準化や、無料開放に向けて取り組んでいるという。
「Apple Pay」については、支払方法が増えるほか、「Apple Payで後払い」機能が追加される。これは後払いサービスの「Klarna」に似たサービスで、Apple Payを使って買い物をした場合、その代金を6週間で4回に分割して支払えるようになる。金利も手数料もかからない。支払い予定はウォレットアプリで管理でき、支払日や金額も簡単に確認できる。
しかもApple Payでの注文であれば、ウォレット内で注文履歴やレシート、追跡情報を確認できるため、注文の処理状況を把握しやすい。
「iOS 15」では、「画像を調べる」機能を使って写真を解析し、植物やランドマーク、ペットなどを識別できるようになった。iOS 16では、この機能がさらに進化する。例えば画像上で対象物にタッチすると、その対象物を背景から抜き出してメッセージなどのアプリに追加できるようになる。簡単に言えば、長押しで写真の背景を削除できるツールだ。
Appleは「マジック」という言葉を多用しがちだが、この機能に関してはまさにマジックだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」