ドローンとAI活用で有機栽培生産者を増やす--「ドローンワインプロジェクト」

 ドローン・ジャパンは4月14日、ドローンとAIを活用し、農薬・化学肥料に頼らない栽培支援技術として、ワインぶどう畑(テロワール)を見える化することで、「ブドウ樹と雑草との区別分布」「ブドウ畑の地力分布」として表現する技術を開発したと発表した。

 この技術を活用することで有機栽培生産者を増やすことを目指し、「ドローンワインプロジェクト」をスタートする。このノウハウを活用し、国内での米農家支援にもつなげていくことを計画する。

ブドウ畑の地力分布
ブドウ畑の地力分布

 協力生産者の畑から収穫されたブドウの一部を原料にしたワインは、2020年のヴィンテージワイン、「ビコーズ, アイム シャルドネ フロム サザンフランス」(輸入:フィラディス)と、「アッサンブラージュ ブラン 2020」(輸入:成城石井)の販売が、4月14日からスタートした。

 ドローンワインプロジェクトでは、農地の上にドローンを飛ばして農場の情報を取得する農業リモートセンシングを実施した。ドローンでの撮影については、ドローンの自律航行方法、カメラの種類と設定から解析手法までさまざまなパターンを試行。さらに圃場を三次元化し、それを東京大学大学院農学生命科学研究科の特任准教授である郭威氏が開発したアルゴリズムを活用することで、これまでは難しかった雑草と共生するブドウの木の生育評価ができるようになった。

このプロジェクトの協力生産者の畑から収穫されたブドウの一部を原料にした2020年のヴィンテージワイン「ビコーズ, アイム シャルドネ フロム サザンフランス」「アッサンブラージュ ブラン 2020」
このプロジェクトの協力生産者の畑から収穫されたブドウの一部を原料にした2020年のヴィンテージワイン「ビコーズ, アイム シャルドネ フロム サザンフランス」「アッサンブラージュ ブラン 2020」

 その結果、ドローンで撮影した画像と色とあわせ、3次元情報を加えることで、「ブドウの葉と雑草の区別分布」を可能にする新たなAI画像解析技術を実現した。この技術を活用した分布図は、雑草と共生するワイン用ブドウの栽培に活用でき、有機農法や減農薬など、農薬、化学肥料を抑えたワイン用ブドウ育成に役立てられる。

 ブドウ畑の地力分布は、ワイン用ブドウの樹勢の生育期ごとに、形、色、大きさを学習し、AI画像解析することで地力分布図をつくる技術。この地力分布図を活用することで、精密な肥料設計と計画が可能になり、化学肥料を少なくできるという。

ブドウの葉と雑草の区別分布
ブドウの葉と雑草の区別分布

 南フランスガスコーニュ地方でワインを生産するフィリップ・フェザス氏は、「ワイン用ブドウの栽培は、単に地力(作物を育てる力)を上げればいいわけではない。地力が上がりすぎると、樹勢が強くなりすぎ、病気になりやすくなる。その箇所がドローンの活用で特定できれば、必要な処置が可能となり、病気を防ぐことにつながる」と生産者の視点でドローン活用のメリットを説明する。フェザス氏は有機農法を実施しているが、「人間も抗生物質の摂り過ぎで抵抗力が下がる。畑も化学物質漬けにしてはいけない」という信念を持って取り組んでいるという。

 ランドック地方でワイン作りを行うベルナルド・カマン氏は、「ブドウ畑の地力分布」を参考とした精密施肥を行うことで化学肥料を少なくする栽培を実践した。カマン氏は、「環境保全への配慮や責任、コスト管理という意味で、精密農業のために必要な情報をドローンによって取得できるようになることに期待する」と話す。

 ドローン・ジャパンでは、これまで「ドローン米」として米作りにドローンを活用し、有機農法や減農薬などに取り組む米作りを支援してきた。しかし、有機農法は日本ではなかなか浸透しなかった。

 今回、フランスのブドウ作り農家と提携した狙いについて、ドローン・ジャパン 代表取締役社長の勝俣喜一朗氏は、「日本の有機農地面積が0.5%であるのに対し、フランスの有機農地面積は10%で日本の20倍。今回、フランスのワイン用ブドウを作る農家と組んだのは、ドローンの目を通してフランスから学び直すことができるのではないかと考えたから。日本政府は2050年に向け、有機農地面積を25%、現在の50倍にするという目標を掲げた。フランスはそのためのロールモデルになるのではないかと考えた」と説明した。

ドローン・ジャパン 代表取締役社長の勝俣喜一朗氏
ドローン・ジャパン 代表取締役社長の勝俣喜一朗氏

 フランスの農地の中でもっとも栽培面積が大きいのはワイン用ブドウで、ドローン&AIを活用してブドウの有機栽培に関する新技術の開発と検証を行い、「日本の米作りにフィードバックできる学びを得ていくことが今回のプロジェクトの目的」(勝俣氏)のひとつとする。

 また、農薬と化学肥料の過剰な使用が気候変動に影響を及ぼすとされていることから、SDGsの観点で農薬と化学肥料を最小限もしくは使わない農業技術となるよう、ドローン&AIを活用していく。

 今回提携した農家は、フィラディスと成城石井がすでに輸入・販売しているワイン生産者。両社のワインを販売しながら、現地でのブドウ畑へのドローン&AI技術定着を進めるとしている

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