パナソニックは4月15日、「RE100ソリューション」実証施設「H2 KIBOU FIELD」を滋賀県草津市にオープンした。燃料電池工場の電力を、水素を使って賄う自家発電設備を整え、事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーで賄う。
H2 KIBOU FIELDは、パナソニック エレクトリックワークス社の草津拠点にオープン。5kW純水素型燃料電池99台(495kW)と太陽電池(約570kW)を組み合わせた自家発電設備と余剰電力を蓄えるリチウムイオン蓄電池(約1.1MWh)を備え、ここで発電した電力で草津拠点内にある燃料電池工場の製造部門の全使用電力を賄うとともに、3電池連携による最適な電力需給運用に関する技術開発を検証する。
パナソニック エレクトリックワークス社スマートエネルギーシステム事業部燃料電池/水素事業統括の加藤正雄氏は「パナソニックが向き合うべき社会課題は、世界のエネルギー動向と災害などに対応するレジリエンスの強化。これらの対策のためには分散型社会への移行が必要。その1つが今回のRE100の実証だと考えている」と、実証施設建設の背景を話した。
施設内では、3電池を連携させたパナソニック独自開発のエネルギーマネジメントシステムを使用し、工場での電力需要データや気象予報データ(将来対応予定)、運転中の機器モニタリング情報を元に、電力需要に追随し、太陽電池の発電量の計測から発電パターンを計画。純水素型燃料電池の発電量を計画的に運転調整をし、電力の余剰や不足に対し蓄電池を活用するなど、最適で安定した電力の供給を目指す。
純水素型燃料電池は、5kWのものを99台設置し、複数台を連携。1台ごとの発電時間の変化を予測シミュレーションし、機器ごとに稼働する時間をできる限り平準化することで、機器間の運用のバラツキを軽減させ、機器劣化を抑制する。小型の5kw純水素型燃料電池を複数台設置することにより、機器を1台ずつ発電させたり停止させたりする運用が可能になるため工場内の稼働を止めることなく、無停止でのメンテナンスも可能だ。
水素は、施設内にあるタンクへ岩谷産業からタンクローリーで供給してもらうとのこと。「自然エネルギーは天候などに左右され不安定、水力、火力発電は安定しているが、水力は有限、火力は脱炭素に向け縮小していくべきもの。また、発電場所と使う場所が離れており、送電ロスが生じるという課題もある。水素は送電ロスもなく、双方向に形を変える電気と水素で、脱炭素社会と安心、快適なくらしを両立できる」(加藤氏)と水素を活用する理由を説明した。
水素で発電する純水素型燃料電池は、パナソニックが手掛ける「エネファーム」のコア技術を応用。ガスから水素を取り出し、水素で電力とお湯を供給するエネファームに対し、純水素型燃料電池は、ガスを使わず水素を使用するため、燃料処理器がなく、構造がシンプルで、小型、高効率を実現できるとしている。
今後は、H2 KIBOU FIELDで検証を重ね、社内グループ工場や事業者への価値提供をしていく計画。欧州や中国への展開も見据える。「工場やスーパーなどへの展開を考えている。水素についてはまだルールができていない部分もあるので、自治体などと協力してルールを決めた上で導入していきたい。欧州や中国といった海外展開も見据え、2023年度から実用化、本格導入を開始する」(加藤氏)と今後について話した。
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