医師のJason Nagata氏にとっては、見慣れた光景だった。カリフォルニア大学サンフランシスコ校の小児科学助教授でもある同氏は、摂食障害で入院している10代の若者の治療に当たっている。その多くが、病院のベッドに横になっているときでさえ、ダイエットや減量といった話題のコンテンツをソーシャルメディアに投稿したり、共有したりしているのだという。
「摂食障害の患者は、過食や拒食、減量に関連するコンテンツをめぐる悪循環に陥りやすい」、とNagata氏は話し、そうした患者の場合は、回復のために病院側がソーシャルメディアへのアクセスを遮断しなければならないこともあると説明する。
Instagramやその親会社Meta(旧Facebook)などのソーシャルメディアプラットフォームは有害なコンテンツの巣窟となっており、とりわけ若年ユーザーの不安と抑うつを助長していると何年も前から批判されてきた。こうしたサイトの利用が、否定的なボディイメージや摂食障害につながるとも指摘されている。フィルターや画像編集で加工された、現実的でない理想化されたスタイルを強調する写真が大量にアップされているからだ。ByteDanceが運営するソーシャル動画サイト「TikTok」も、爆発的な人気を博している反面、10代の若者の摂食障害を肯定するような動画が表示されるという批判を受けている。米国時間12月8日には、Instagramの責任者Adam Mosseri氏が、「Instagram」アプリの若年層ユーザーの安全を守る取り組みについて米議会で証言することになっており、この問題はさらに厳しく取り上げられそうだ。
(注:本記事は、米証券取引委員会に提出されたFrances Haugen氏の告発資料に基づいている。同資料は、Haugen氏の弁護団によって編集されたのちに議会にも提出されており、その編集版を、米CNETも含む報道機関組合が入手した)。
Instagramは2020年に独自のショートビデオ機能「リール」を開始している。そのInstagramもTikTokも、過去数カ月の間に、メンタルヘルスに関するガイドと、否定的なボディイメージや摂食障害を抱える人を支援するための資料を公開してきた。しかし、つい最近になって、こうしたInstagramの取り組みも、リークされた内部文書によって影が薄れてしまった。それが、「Facebook Files」として知られる一連の文書である。最初にThe Wall Street Journalの連載記事として発表されたこの文書には、自社のプラットフォームがメンタルヘルスに及ぼす影響について同社が自ら調査した結果も含まれている。例えば、Instagramユーザーの33%、Facebookユーザーの11%が、それぞれのプラットフォームによってボディイメージの問題が悪化したと考えていることも明らかになった。また、Instagramユーザーの半数以上が体型コンプレックスを抱えていることも分かっている。
Metaは、1つの文書の中でこう結論している。「総合的に考えて、InstagramおよびFacebookの利用が体型コンプレックスを助長しうると示唆する証拠は十分にある」
10代のメンタルヘルスに関するMetaの内部文書をリークしたのは、Facebookの元プロダクトマネージャーだったHaugen氏だ。その文書がThe Wall Street Journalで報じられたことを受け、Facebookはその調査資料一式に注釈を付けたものを公式に発表した。10代の少女が抱えるボディイメージの問題に関するデータに関して、Metaは、一般的な10代のInstagramユーザー層というよりも、「以前から問題を抱えていた」人々がInstagramをどう受け止めているかがこの反応に反映されている、としている。
しかし、Metaの調査結果を読んだ専門家、例えばノースウェスタン大学の心理学教授であるRenee Engeln氏などからは、摂食障害とボディイメージに関する問題について違う懸念もあがっている。「問題の範囲があまりに広大であり、何らかのリソースに紐づけるだけで解決できるものではない。人々が苦しんでいるのは、そうしたリソースとのつながりがないからではない。文化全体が深刻に毒されているとき、それでは現在の問題は解決しない」
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