英国最速のスーパーコンピューター「Cambridge-1」が正式に稼働を開始した。だが、扱うのは正確な天気予報や恐竜絶滅の調査ではない。このコンピューターは、医療の進歩とライフサイエンス産業の活性化が専門だ。
NVIDIAが設計と構築に総額1億ドルを投じたCambridge-1は、デジタル生物学、ゲノミクス、創薬などの分野で、英国の研究能力を強化することを期待されている。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックで、NVIDIAの米国のエンジニアが英国の同僚を支援するために大西洋を横断できないという制約があったにもかかわらず、このスーパーコンピューターはわずか20週間で構築された。
エンジニアが支援できない代わりに、同社はCambridge-1を予定通り完成させるため、高度な計算モデリングや遠隔操作可能なモバイルロボットなど、さまざまな技術を駆使した。
医療データは指数関数的に増加している。この傾向は新型コロナのパンデミックで加速する一方だ。このデータは、適切に使えば貴重なものになる可能性がある。新薬開発での意思決定に役立ち、個人に最適化した治療で患者のケアを改善する。
だが、NVIDIAによると、英国の研究者はこれまで、所有する膨大な量のデータに取り組み、活用するために必要な計算能力を利用できなかったという。
Cambridge-1がその状況を変えるだろう。このスーパーコンピューターは、400ペタフロップスのAI性能と8ペタフロップスのLINPACK性能を有し、大規模なAIプロジェクト(このスーパーコンピューターの場合は、特に医療研究の推進に特化した機械学習アプリ)を構築、実行するよう設計された「NVIDIA DGX A100」を80個搭載する。
DGX A100の性能は、20個でCPU数百個に相当する。NVIDIAは、Cambridge-1が英国で最速とうたった。このシステムは、世界最強のスーパーコンピューター500台をランク付けするTOP500リストでも41位にランクインしている。
NVIDIAの創業者で最高経営責任者(CEO)のJensen Huang氏は「英国最強のスーパーコンピューターであるCambridge-1は、世界をリードする企業や学界の研究者がライフワークに従事するのを助け、英国ではこれまで不可能だった規模とスピードで、疾病やその治療の手掛かりを解き明かす」と語った。
経済コンサル企業Frontier Economicsの最近の報告によると、Cambridge-1は向こう10年間に英国で最大6億ポンド(約920億円)の価値を創出する可能性があるという。
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