NVIDIAの英国最速スーパーコンピューターが目指すもの - (page 2)

Daphne Leprince-Ringuet (ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部2021年07月15日 07時30分

 2020年の発表以来、実際に5つの組織がこのシステムに早期アクセスした。その中の1社、オックスフォードに拠点を置くOxford Nanopore Technologiesは、Cambridge-1の計算能力を活用してゲノム配列決定を行い、科学者がワクチンと薬物治療の設計を決定するために、新型コロナウイルスがどのように進化するのか理解するのを助けた。

 NVIDIAによると、Cambridge-1は、研究者がゲノム配列決定に使うアルゴリズムを、数日ではなく数時間で改善できるようにする。これは、精度と速度の両方の改善に役立つ。現場では、科学者によるウイルスの突然変異への対応を加速する。

 Cambridge-1はまた、新型コロナの危機を超えて、医療の進歩に貢献することが期待されている。例えばAstraZenecaは、Cambridge-1で反応予測や分子の最適化を行うことで、薬剤開発を促進する次世代アルゴリズムを実行することに重点を置いている。

 AstraZenecaのアルゴリズム「MolBART」のアップグレード版「MegaMolBART」は、既にCambridge-1でトレーニング中だ。MolBARTは、手作業でラベル付けされた大規模データセットを必要としない、自己管理型プログラムだ。化合物のデータベースを閲覧し、多様な化学構造間の関係を学習できる。研究者はこのアルゴリズムで、データベースには存在しないが薬剤候補になる可能性のある分子構造のアイデアを得られる。

 NVIDIAは臨床レベルでは、ロンドン大学およびGuy's and St Thomas' NHS Foundation Trustとも長期の協力関係にある。これらの機関の科学者たちは、既にCambridge-1を使ってさまざまな疾病の診断を改善している。

 数万枚の脳のMRIスキャンデータでAIモデルをトレーニングした後、研究者はCambridge-1で脳の合成画像を生成した。NVIDIAによると、放射線科医でさえ、この画像を本物と区別できなかったという。

 科学者はこの合成データで、年齢や病気の種類など、さまざまな特徴のある脳の画像を閲覧できるため、認知症、脳卒中、脳腫瘍、多発性硬化症などの症状がどのように見えるかをより詳細に理解できるようになった。

 Guy's and St Thomas' NHS Foundation TrustのCEO、Ian Abbs氏は「医療におけるAIの力は、患者の診断を加速し、乳がん検診などのサービスを改善し、臨床ニーズに応じて患者をリスク評価して優先順位を付ける方法を支援するのに役立つ」と語った。

 Cambridge-1に関するNVIDIAの5つ目のパートナーである製薬大手GSKは、新薬の成功を予測するために、Cambridge-1での遺伝子データ分析に重点を置いている。同社によると、スーパーコンピューティングによるアプローチは、治療で成功する可能性が2倍になり、治療薬として承認される可能性が高い新薬の設計に役立つという。

 NVIDIAはCambridge-1が正式に稼働した今、より多くの研究プロジェクトが参加し、現在蓄積されている健康データを最大限に活用することを期待している。その目的は、患者の転帰(治療後の状況)を改善することだ。

 同社は例えば、既存の新型コロナワクチンを改造して新たな変異株と戦う上でCambridge-1が主導的な役割を果たすと予想している。また、新型コロナの影響や危険にさらされる人口の割合を予測することで、長期的な影響についての科学者の理解を深めることもできるとみている。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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