本田技研工業(Honda)は12月21日、先端科学技術の研究を担うホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパン(HRI-JP)が開発した、聴覚障がい者と健聴者の双方向コミュニケーションをサポートするシステム「ホンダ・コミュニケーション・アシスタンス・システム」(Honda CAシステム)の社内利用を9月から本格的に開始していたことを明らかにした。
Honda CAシステムは、現場における聴覚障がいのある従業員とのコミュニケーションをきっかけに、2017年より開発プロジェクトをスタート。
同社では、聴覚障がいのある従業員と健聴者との主なコミュニケーション手段は筆談だったという。しかし、会議の場などリアルタイムに双方向でのコミュニケーションが求められるシーンにおいては、意思疎通の正確性、スピードなどで多くの課題があった。
そこで、現場での課題を聞いたHRI-JPの技術者が、同社の持てる技術を生かし、聴覚障がい者と健聴者のコミュニケーションを円滑にしようと、2017年にHonda CAシステム開発プロジェクトをスタートさせた。
開発においては、HRI-JPがホンダ太陽・ホンダR&D太陽と共同で行ったという。なお、2020年9月より、同社のほか、ホンダ太陽とホンダR&D太陽の各事業所(二輪事業本部ものづくりセンター 2020年1月〜、四輪事業本部ものづくりセンター 2020年9月〜、埼玉製作所寄居工場 2020年9月〜)において本格利用を開始している。
Honda CAシステムでは、同社独自の技術として、スピード重視型と正確性重視型の2つの音声認識エンジンを使用。リアルタイム表示と正確性の高いテキスト変換を両立しているという。
また、発話と同時に自動的に音声認識を開始。発話ボタンや音声認識を開始するためのウェイクアップワードが不要であるため、会議の流れやコミュニケーションを妨げないという特徴がある。なお、同社の社内業務を考慮したチューニングにより、社内専門用語も高い正確性で変換可能だという。
音声認識に加え、キーボード入力や手書き入力による発言も可能。入力開始と同時に画面色が変わり、発言の意志を表すなど、聴覚障がい者が議論の輪に入りやすい工夫している。さらには、ひとつの画面に全員の発言が表示され、会議の流れを把握しやすくなっている。
同システムは、在宅勤務時でも打ち合わせが行えるようにオンライン会議にも対応しているという。
同社によると、Honda CAシステムの導入により、聴覚障がい者が会議の流れを把握しやすくなり、タイムリーに発言できるようになったことで、チームの一体感や仕事へのモチベーション向上といった効果が出ているという(ホンダR&D太陽の聴覚障がいのある従業員6名の調査による)。また、内容のすべてを筆談する必要がなくなったことで、筆談者の負荷が減り、会議時間の2〜3割短縮という効果も確認した。
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