「企業成長に欠かせないイノベーションの起こし方」というテーマで開催された2020年のCNET Japan Live 2020。近年、日本の大企業による新規事業創出やベンチャー企業との協業、オープンイノベーションの取り組みが急増しているが、なかなか成果につながらないケースが散見される。
そこで、三菱電機 未来イノベーションセンターの担当者2人が、「0-1のその先へ!大企業で新規事業を創出し続ける方法」と題した講義とパネルディスカッションを行った。モデレーターは起業家や戦略コンサルタント、エンジニアが多く集い、自社でもスタートアップを創出し続けるイグニション・ポイントのStrategy Unitの事業責任者である本間善丈氏が務めた。
まずは、事業アイデア創出から、プロトタイピング、マーケティングまで、継続的な支援経験を多く有する本間氏が、大企業が新規事業を創出し続ける方法を紹介した。
「大企業が新規事業を創出しても実際の成功率は13%程度しかない。なぜうまくいかないのか。大企業は、既存事業の遂行がキャッシュを作っていく上で重要だが、それに凝り固まって新規事業を創出するエコシステムを構築しないまま、とりあえず新しいものを作れという号令のもと、進めていくケースが多く、失敗の可能性を高めてしまっている」と本間氏。
社内で新規事業を作ろうと議論すると、結構思いを発散しがちで、カオスになるケースが多い。イノベーションのエコシステムを構築する際、下記の画像のようなフレームワークがあるので、これを参考にしながらやっていくと、比較的議論が発散しないで進めていけるという。
新規事業を起ち上げるにはトップマネジメントのリーダーシップが重要だ。たとえばトヨタ自動車の場合は、シリコンバレーのAI研究所設立を社長自らが主導。うまくいくようにしっかりサポートしている。また、パナソニック コネクテッドソリューションズ社は、2015年にイノベーションセンターを設立したが、直轄組織として社長がしっかり面倒をみており、軌道に乗ってきている。
一方で、某企業ではCxO(Chief x Officer)レベルのガーディアンが不在で、ボトムアップで進めているため、かなり苦労しているという。「トップマネジメントのリーダーシップがないと、イノベーションや新規事業の組織の人たちは非常に苦労する」と本間氏は訴えた。
また、イノベーションに対してどれだけ投資していくかも考える必要がある。たとえば、コア事業に関しては70%、周辺事業に関しては、投資の20%。革新事業企画は10%というのがよくあるケース。ただ、この比率が正解ではなく、企業によって少しずつアレンジする必要がある。うまくやっている企業は、革新事業に対しても一定の投資を続けている。
従来型のイノベーションプロセスは、事業計画をしっかり作成して、資金調達をし、研究開発して、場合によっては工場を作り顧客を開発していく。しかし、これだと巨額の投資が失敗したときに無駄になってしまう。
一方でリーンなイノベーションプロセスなら、まず顧客を見つけて、実証実験を行い、うまくいきそうなら、事業計画を立てて、工場を建てていく。これにより、やり直しや練り直しが可能となり、投資が効率的にキャッシュ創出につながる。本間氏は「初期のアイデアの仮説は間違っていることを前提にFail Fast、Fail Cheap、Fail Smartを実行し、1つ1つ確認しながらリスクを潰すことで成功確率を引き上げられる」と語った。
新規事業において、アイデアの創出からEXITまで、しっかりプロセスを立てることが重要だ。たとえばアイデア募集をしたり、初期のスクリーニングをやったり、そのあとアイデアの初期審査をし、次に仮説を構築して技術シーズや、ビジネスモデル仮説検証を行い、技術フィジビリティを検証した上で事業化するといったことを、社内で構築することが重要になってくる。
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