皆さんは、動画の倍速視聴をしたことはあるだろうか。2倍速、1.5倍速などに動画の再生速度を速くすると、人物の動きこそ多少不自然さが出るが、言葉など内容は十分に聞き取れ、画質も悪くない。慣れてくると問題なく視聴できるだろう。
最近、再生速度を調整できる動画プラットフォームが増えてきた。たとえば、Netflixは2019年10月より、モバイル・タブレット端末を対象に試験的に再生速度調整機能を導入している。これに対しては、映画監督であるジャド・アパトー氏などクリエイター側からの批判が集まっているようだ。
一方、多くの10代の子どもたちの間では動画の倍速視聴が当たり前となっており、SNSで情報を得て効率的に楽しんでいるようだ。最新の10代における動画視聴事情についてお届けしたい。
倍速視聴は、以前からDVDプレイヤーやテレビのハードディスクレコーダー再生などでは可能だったが、最近は多くのネットサービスで利用できる。YouTubeやAmazonプライム・ビデオ、dTV、ニコニコ動画など、多くのサービスに再生速度調整機能があるのだ。
HTML5上で再生されるコンテンツなら再生速度を早くできるChrome拡張機能「Video Speed Controller」も、現状93万ダウンロードされる人気だ。倍速視聴に対するニーズが高まっていることがわかるだろう。
ある大学1年女子は、ドラマやバラエティなどを好んで見ている。「いつも見ている番組は、たとえリアタイ(リアルタイム)で見られてもあえて録画してから見る」という。録画の場合はCMを飛ばせるし、倍速再生もできるからだ。選択肢にあれば、わざわざNetflixやAmazonプライム・ビデオなどで見ることもあるという。「普通の速度だとだるい。時間の無駄と感じる」。高校時代には、塾の動画で学習することも多かったという彼女。やはり時間効率を考えて再生速度を上げて学習していたという。
実は、彼女と同じように感じる10代の若者は少なくないようだ。人のスピーチを聞く場合は1.4〜1.5倍速が最適であり、若者の方が再生速度を上げる傾向にあるという話もある。若者はスマホ世代であり、待てなくなっているという影響もあるかもしれない。
彼女たちが倍速で視聴する動画には、ある傾向がある。「友達の間で話題のドラマとかあったら、話についていくために見たい。でも時間がない」という。特にLINEやTwitterなどのSNSで話題になっている動画コンテンツは、なるべく見たいと考えるようだ。
たとえば、日テレの「あなたの番です」や「3年A組—今から皆さんは、人質です―」などは、犯人当てやストーリー展開でSNSが盛り上がっていたそうだ。「周りはみんな見てたから、見てないと話についていけない。流行りのYouTube動画とかも見なきゃいけないし。でも全部見るのは時間が足りない」。
今は情報過多時代だ。動画で視聴しなければならないコンテンツも多いが、動画はある程度の時間を拘束されることになる。彼らにはその時間が耐えられないのだ。「動画を見ている間も暇だからインスタとかチェックしたり、LINEの返事をしたりする。コンテンツが1つしか消化できないと時間がもったいないから、もっとコスパよく楽しみたい」。
この場合のコスパは、時間的なコストパフォーマンスのことだ。時間を無駄にせず、得るべき情報を効率的に得たいと考えているというわけだ。付き合いのために内容さえ抑えておけばいい動画は、倍速視聴がちょうどいいということになる。
一番驚いたのは、「最悪、動画は別に見なくても、内容さえわかればいい。Twitterとかまとめサイトとかで大体つかめるから、話についていければむしろいいかも」という発言だ。情報としてつかめていれば、直接見て楽しむ必要はないというのだ。「ギガも減らないし時間もかからないしむしろいい」。
逆に一度得たコンテンツをSNSで消費することも好きなようだ。「『あなたの番です』はハマって、翔太(主人公)のインスタ(@ shouta.anaban1019)とかもフォローしていた。公式(@anaban_ntv)のインスタでオフショットとか見られたから、周囲で盛り上がっていた」。
動画の消費スタイルも、年代やニーズによって変わってきているようだ。若い世代の楽しみ方は意外と合理的な面もあるので、参考にしてもいいかもしれない。
高橋暁子
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。
ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/
Twitter:@akiakatsuki
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