10月30日に東京ベルサール御成門タワーで行なわれた「CNET Japan FoodTech Festival 2019 “食”の新世界に挑戦するイノベーターたち」。クックパッドの住朋享(すみともみち)氏が登壇した、「料理×テクノロジーが未来をどう変える? 世界で加速するスマートキッチンの今とこれから」では、世界的なスマートキッチンの動向を把握するとともに、明日からどう活用すべきなのかを認識させる50分間だった。
スマートキッチンとは、いろいろなスマート家電がIoTとつながることで、さまざまなことができるようになること。最新の動向はCESやSKS、IFAといった展示会に足を運べば見えてくる。
スマートキッチンの特徴は、たとえば冷蔵庫の中にセンサーが取り付けられていて、中に何が入っているかわかったり、レシピも文章を読むのではなく、映像を投影して手順に迷うことなく進められたりする。あるいは、電気オーブンレンジの中にカメラが入っていて、今何を焼いていて、どのくらいで出来上がるかを自動で判断してくれるといった、料理をする上でかゆいところに手が届くような機能を提供するものだ。将来的には、ロボットアームが料理人になりかわって調理をするという未来も描かれている。
現在、どのくらい普及しているかという具体的なデータはないが、スマートホームの普及と概ねシンクロしているという。スマートホームの現状は2、3%と低い数字だが、2023年には10%程度まで普及すると見込まれている。実は家電はおよそ10年サイクルで買い換えると言われており、2017年のデータでは年間、電気オーブンレンジが約1億179万台、冷蔵庫は1億2620万台も世界中で販売されている。2023年には20%程度の割合でスマート家電が出荷され、2028年には誰もが何かしらのスマート家電を所有していると予測する。
今のトレンドは2つあり、1つは精密に料理をするもの。中でもほとんどの家電メーカーが作っているのがスマートオーブンだ。温度計を食材に刺すことで、肉の中の温度がわかるので、誰でも完璧な焼き加減、たとえばミディアム・レアができるようになる。また、海外ではスチームオーブンの機能ももたせ、低温調理をサポートしているメーカーがほとんどである。
住氏は「実際にオーブンを使ってみると、焼き加減を思い通りにプログラムできるのが特徴で、ベイクドやトーストなど、焼き方をいろいろと組み合わせて調理ができる。中の状況は、スマホで確認でき、カメラも付いているので、リアルタイムで状況を把握できる。また、過去の記録が振り返られるため、温度の推移と映像を確認して、プログラムの修正ができるのも便利」とスマートオーブンで肉を焼いたときの体験を語った。
さらに、オーブンは調理後の掃除が面倒。そこで、上下水道を直結させて、食洗機のように洗う機能がついたものも登場。手入れ不要で使えることを謳っている。
また、IHクッキングヒーターと温度プローブの連動機能もある。たとえば、味噌汁を温め直すといったとき、目を離していると沸騰して、風味が飛んでしまうときがある。そこで、温度プローブを味噌汁の鍋に入れておくと、ちょうどよい温度で停止するといった、微細な温度コントロールを可能にしている。
もう1つのトレンドは、スマート冷蔵庫だ。最近は、中にカメラが付いている冷蔵庫が増えてきており、中の食材を理解して、不足しているものはそのまま注文するといったことも可能。後付カメラも登場しており、どんな冷蔵庫もかんたんにスマート冷蔵庫になる。
なぜスマートオーブンと冷蔵庫が流行っているのか。住氏は「何を作るか考えるところから料理して食べるところまでに、さまざまなユーザーペイン(痛み)がある。そのユーザーペインの大きなところを、この2つの製品で解決できるから」と分析する。
食事をしようとしたときのペインとしては、
・なにを食べるか決まらない。
・店に行くのが面倒。
・家にある食材がわからない。
・レシピがわからず必要な食材がわからない。
・実際に調理をしようとしても切り方や、焼き方などがわからない。
などといったものがある。このようなペインを解決する方法としては、Meal kitを利用したり外食をしたりということが考えられるだろう。
しかし、「人間は“料理をしたい”という本能を持っている」と住氏は語る。「人間は、大昔は狩りをする生き物。そこから狩りする人、料理する人と役割分担が生まれている。人間の役割分担を生んだのは、火の発明と料理の発明が発端と言われている」。
料理をする際のペインを解決してくれるスマートオーブンと冷蔵庫が流行っているのは、料理をしたい本能が働いているからだとした。特に海外では、日本の炊飯器並みにオーブンを使う機会が多く、オーブンがスマートになると料理するところのペインが大きく解決する。
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