ソフトバンクは5月8日、2018年度通期の決算を発表した。売上高は前年同期比4.6%増の3兆7463億円、営業利益は前年同期比12.8%増の7195億円と、増収増益の決算となった。
同日に実施された決算説明会で、同社代表取締役社長 執行役員 兼 CEOの宮内謙氏は、その要因としてスマートフォンの累計契約者数の拡大があると話す。実際、同社のソフトバンクとワイモバイルブランド、そして子会社であるLINEモバイルのスマートフォン累計契約数の合計は前年同期比10%増の2208億円となり、195万件の純増を記録しているという。
そのスマートフォンの通信料金に関して、4月15日にNTTドコモが新料金プラン「ギガホ」と「ギガライト」を発表したことから、宮内氏は料金プランについて改めて言及。さまざまな割引を適用した場合、大容量プランではソフトバンクの「ウルトラギガモンスター+」の方が月額料金が安く、またライトユーザー向けのプランに関しても、ワイモバイルの料金プランの方がお得だとアピールした。
宮内氏は「我々は3年半前からワイモバイルを立ち上げ、2年前からはスマートフォン動画の時代が確実にくると予見して大容量プランをやってきた」と話し、両ブランドで提供している料金プランに自信を示す。そのため、今後は何らかの微調整をする可能性はあるものの、基本的には現在の料金プランで「これからも戦っていける」(宮内氏)と考えているという。
また宮内氏は、3年前から話していたという「1億層スマホ」の実現に向け、ソフトバンクブランドの新しい料金プラン「スマホデビュープラン」を発表。これはフィーチャーフォンをスマートフォンに機種変更することで、各種割引を適用すると1年間月額980円(2年目以降は1980円)で利用できるプランで、9月30日までに加入すれば6000円相当の「PayPayボーナス」も進呈される。
低価格の料金プランを、ワイモバイルではなくソフトバンクブランドで提供する理由について、宮内氏は「ソフトバンクブランドで携帯電話を使っていた人が家族にいる時に、加入できる(低価格なプランがある)と喜ばれる」と話し、顧客からのニーズに応えたものだと説明。スマートフォンを体験していない人はまだ国内に2000〜3000万人はいると宮内氏は見ており、そうした人達を取り込むためのプランと位置付けているようだ。
なお現在、国会で端末代と料金の“分離プラン”を義務化する電気通信事業法の改正に関する審議がなされているが、宮内氏は分離プラン未導入のワイモバイルに関して、2019年度の上半期中に導入すると回答した。ただし、分離プランの導入による端末価格の上昇に関する対策については、「いろんな知恵を出していきたいが、戦略的なものが多々あるので回答は控えたい」と答えるにとどまった。
携帯電話事業ではスマートフォンのほか、IoTやAIなど新技術に関連した法人ソリューションの拡大や、2020年のサービス開始を予定している5Gの拡大などで成長を見込むとしている。しかし、より大きな成長を見込んでいるのが、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの出資企業などと合弁で展開する新事業だ。すでにWeWorkやDiDiなどとのジョイントベンチャーを国内に展開し、順調に拡大を続けているほか、4月4日にはインドのOYOと合弁で「OYO Hotels Japan」を立ち上げ、日本でホテル事業に参入することを明らかにしている。
さらに宮内氏は、QRコード決済サービスの「PayPay」に関しても言及。PayPayは累計登録者数が700万を突破するなど順調に拡大を続けており、「何があっても大成功させたい」と意気込むが、一方でこの分野では今なお新たな事業者が次々と参入している状況で、競争は激化の一途をたどっている。
そこで宮内氏は「圧倒的なインフラを構築するには相当な投資が必要だ」と話し、ソフトバンクグループを説得してPayPayに資本参加をしてもらったことを明らかにした。ソフトバンクグループからの投資は460億円となり、PayPayの資本金は920億円となる。宮内氏はこの投資資金を顧客や店舗の拡大、そしてシステムの拡充に積極投資し、競争に勝ち抜きたいとしている。
もう1つ、次の成長に向けた一手として宮内氏が打ち出したのが、ソフトバンクによるヤフーの連結子会社化である。両社はこれまで兄弟会社として多くの連携を図ってきたが、子会社化することでより一層密な連携を図ることとなる。
ソフトバンクは2018年にヤフーの株式を12%取得しているが、2019年6月にヤフーが実施する第三差割当による新株発行を4565億円で引き受けることで、出資比率を44.64%にまで高め、子会社化するとのこと。一方で従来の親会社だったソフトバンクグループジャパンが持つ36.08%の株式は0%となる。
ヤフーは9000万を超える利用者と100を超えるサービス、3000名を超えるITエンジニアなど多くのリソースを持つ。それらをソフトバンクが持つリソースと統合することで、スマートフォンとサービスをシームレスに連携させ、非通信分野の強化を図り双方の成長を加速するのが、子会社化の最大の狙いになるという。ただし具体的なシナジーに関しては、「戦略そのものなので、まだ話せない」(宮内氏)と答えた。
今回の子会社化を受け、決算説明会にはヤフーの代表取締役社長である川邊健太郎氏も登壇。「何千人もの(人数を抱える)サービス会社が一体となって事業をやることで、我々にしか作れない便利な機能を提供できるし、今まで以上の巨大なシナジーを提供できると考えている」と話し、子会社化による取り組みに意欲を示した。
今回のヤフー連結子会社化を受け、2020年3月期(2019年度)の連結業績予想はヤフーの業績を含めたものとなり、売上高4.8兆円、営業利益8900億円を見込むとしている。
ヤフーの2018年度業績を単純に合計した、ソフトバンクの2018年度の業績と比べた場合、前年比で売上高約1000億円、営業利益300億円の大幅アップになるとのこと。ただし、ヤフーを除いた業績は、競争激化の影響などもあり「堅めに見ている」(宮内氏)とのことで、2018年度より伸びは落ちるとのことだ。
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