ドローン市場の夜明け

2017年はドローンの“産業利用”が進む年に--建設やインフラ活用で期待 - (page 2)

細谷元(Livit Singapore)2017年01月18日 17時34分

建設などインフラ系のドローン活用が増える?

 ドローンの産業利用が増えると言われるなかで、どの産業で広く普及するのだろうか。PwCのレポートによれば、ドローン活用によるソリューションの市場規模は約1270億ドル(約15兆円)。そのうち最大はインフラで452億ドルだ。次いで、農業324億ドル、輸送130億ドル、警備100億ドル、メディア88億ドル、保険68億ドル、電気通信63億ドル、鉱業44億ドル。

 ゴールドマン・サックスが推計したドローンの産業別予想最大市場規模(Total Addresable Market)でも、建設が111億6400万ドルともっとも大きい。次いで、農業59億2200万ドル、保険14億1800万ドル、石油・ガス・精製11億1000万ドルとなっている。

 これらのレポートを見ると、建設などインフラ系におけるドローン活用が増える可能性が高いことが分かる。実際、世界の建設市場ではコスト圧縮が喫緊の課題となっており、ドローンなど自動化のための手段の導入需要は高い。

ドローンの普及には実用性と安全性の両立が重要だ
ドローンの普及には実用性と安全性の両立が重要だ

 すでに米国の一部の建設現場では、ドローンを活用したビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM)を実施している。ドローンで建設現場のデータを取得、そのデータからプロジェクト・マネジャーが建設の進捗を確認することで、建設プロセスを効率化できるという。

 今後はバーチャル・リアリティ(VR)技術とドローンを融合させたソリューションが普及するとも言われている。ドローンで取得した建設周辺情報をもとに、VRで建物が完成したときのシミュレーションを実施し、設計者やプロジェクト・マネジャーが建設する前の段階で問題点を見つけられるようになる。これにより、多くの時間とコストを節約することが可能になる。

 2番目にドローン活用の市場規模が大きい農業でもデータ取得に広く活用される見込みだ。これらのデータは、コストを削減しながら収穫量を上げる、つまりROI改善に役立つとされている。

 たとえば、作物の発育状況や健康状態によって肥料の量や殺虫剤・除草剤の散布量が変わってくるが、ドローンでデータ取得することで、最適な量を迅速に投入できるようになる。これまでのように畑全体に一定量の肥料や殺虫剤を散布するのではなく、必要な場所に必要な分だけ適用できるようになるので、コスト削減によるROI改善が見込める。データ集めは人手でも可能だが、その場合数日を要してしまい効率的ではない。ドローンであれば数時間でデータ収集を完了できるのだ。

 このようにドローンはカメラ・センサ技術やデータ解析技術と融合することで、これまでデータ取得が難しかった分野でそれを可能にし、さまざまな産業でROIを改善する手段として広がっていくだろう。このほかアマゾンのPreme Airのように輸送手段として、またネットワークを広げる通信手段として、ドローンは社会インフラに組み込まれる可能性を秘めている。

 ただし、ドローンが社会インフラの一部として機能しはじめるのは、アーリーマジョリティーに普及するタイミング。その普及のための技術的・法的基盤を築くのがアーリーアドプターの段階だ。このように俯瞰して考えると、2017年からの動きがドローンの普及にとって非常に重要であることが分かる。

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