では、この競争を制するためにはどうすればよいのか。それは「同じカテゴリーの競合商品に比べてどのようにいいか」を伝えながら、同時に、そもそも「なぜ自社商品が属するカテゴリーを選ぶことが必要なのか」という文脈を作り上げ、伝えていくということです。
先程の例で言えば「眠りの改善」に関するさまざまな選択肢の中で「枕」を選択する理由を明確にすることとなります。ただしこの場合、気をつけなければいけないポイントがあります。「眠りの改善に関する世の中のすべての選択肢」に対して、「自社商品の属するカテゴリー(この場合は“枕”)がいちばん良い」という発想は、非現実的・非効率であるということです。
たとえば、「医薬品」「サプリメント」に対する「枕」の優位性は伝えられたとしても、お金のかからない“非商品”の解決策である「入浴法」「早起き法」などに対して、その優位性を伝えることは難しいかもしれません。ではその時にはどうするのか?
それは「競うのでなく、仲間になる」ということです。つまり「入浴をキチンとし、早起きをする」ということをしてもらいながら「寝る時には外部から何かを摂取するのでなく、枕を変えることで、睡眠が格段に良くなる」というライフスタイル全体としての文脈を作り上げ、そこに自社商品を位置付けていくことが重要になってきます。
この連載でも何回か言及していますが、残念ながら現在の日本の景気はまだ実感するほどよくありません。これを「消費」という観点でみると「“財布の中身”が一定、または減少する中で、いろんなカテゴリーがその“財布の中身をとりあう競争”をして、それが激化する」ということを意味します。その中で上記のように「“生活者視点”でカテゴリー外の競合を踏まえながら、自社商品の選択につながる文脈を創っていくこと」は非常に重要といえます。
昨年のad:tech Tokyoで、あるマーケティングリサーチの専門家の方が「メーカーのマーケターは、自社のカテゴリーに関してはプロだが、残念ながら他のカテゴリーに対しては素人であるケースが多い」という指摘をしていました。そして、ビッグデータは「生活者の“自社商品が属しているカテゴリーの購買行動”以外の行動履歴」を収集できることになり「他カテゴリーも含めた競争に打ち勝つ、重要ヒントを示唆してくれる可能性がある」ということを言われています。
「他カテゴリーも含めた中で、自社商品が選択されるシナリオ」を仮説としてもった上で、生活者の生活行動に関するビッグデータを眺めてみると、大きな発見があるかもしれません。
前回・今回と生活者の“インサイト探索”におけるルールを実例とともにお伝えしてきました。最終回となる次回は、マーケティングを実際に機能させるために必要な“周囲のステークホルダーのインサイト”を踏まえたプランニングについて、お伝えする予定です。
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