これまでソフトバンクは、ボーダフォンの買収で生じた純有利子負債の削減に取り組んできた。2008年時点で約1.9兆円あった連結純有利子負債を2012年3月末までに半減し、2014年度末にはゼロにするとしてきた。現状では目標を大幅に上回り、2012年3月末(2011年度末)時点で純有利子負債は0.5兆円まで削減。支払利息も半減し、ソフトバンクの格付けも創業以来の最高水準へと上がっている。「どこの角度から見ても、財務体質は一気に改善できた。日本中の会社の中でも、3年間で1.3兆円を返済したという会社はそうざらにない」と自信を見せる。
一方で、目標の純有利子負債ゼロが見えてきた今、「何が何でもゼロという方針だったが、株主の多くから、そのままゼロまで持って行くのは極端すぎるのではないか。それはソフトバンクらしくないという、お褒めなのかお叱りなのか──という言葉をいただいた」とし、純有利子負債を適正水準にし、新たに「株主還元」を加え、バランスを考えて運営すると新戦略を発表した。
適正水準の具体的な数値については、「今の段階ではまだ控えたい。成長と株主還元のバランスをにらみながら考えていく」とコメントした。
新方針における2011年度の配当金は1株あたり8倍となる40円(2010年度は5円)にするという。14年度の増配予定を前倒しで実施するもので、総配当額は439億円(2010年度は54億円)になる見通し。
なお、自然エネルギー事業については、「あくまでも本業ではなく、日本のエネルギーを転換する呼び水になるように事例を作っていく」とし、出資規模は総資産の1%未満におさえ、連結業績への影響は軽微だとした。
今後の目標達成に向け、中心となるのは移動体通信事業だ。現状、純増契約数ナンバーワンを維持し、ウィルコムも買収後に2倍を超える累計契約数を獲得するなど、復活を遂げている。移動体通信料の売上げ増加率は、データARPU比率(1契約当たりの月間平均収入)、移動体の営業利益増加率ともに世界ナンバーワンとした。
その理由として、早くから音声通話ではなくデータ通信を中心とした収益構造を目指してきたからだという。「(ボーダフォンを買収したときも)携帯電話の会社をやるつもりはまったくない。電話をやるために買うんじゃなくて、モバイルインターネットのために買う。音声依存型のところからデータ依存型にするのだと当初からいっていたが、それが現実のものになった」とした。
一方で、以前から言われるソフトバンクモバイルの弱点は電波の問題だ。これについては、Wi-Fiスポットによるアクセスポイント数、基地局の増加などの対策を行ってきたが、プラチナバンドとも呼ばれる900MHz帯を獲得。7月25日に900MHz帯のサービス開始を予定している。現在発売している端末では、フィーチャーフォンのPANTONE 4、iPhone 4/iPhone 4S、iPad 2、新しいiPadが900MHz帯に対応しており、すぐに利用できるという。さらに今後発表予定の2012年夏モデルには全機種が900MHz帯に対応するという。
「経営から見ても、電波が届きにくい最大の弱点を改善することは収益に大いに役立つと理解している」とし、今後も電波状況の改善に力を入れていくとした。
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