ホムペの存在は、アマチュアミュージシャンの情報発信には欠かせない存在となっているようだ。ライブで配るチラシだけでは伝えられる情報量が限られるが、ホムペであれば最新の情報をたくさん発信できる。さらにメールフォームを使うことでライブのチケット予約販売ができることから、予約の電話を受けるための電話番をする必要がなく、音楽活動や仕事に支障が生じないというのもメリットとなっている。
また、彼らが拠点とする八王子は大学が多いことから、地方出身のファンが大学を卒業して地元に戻ってしまうケースも多いという。そうしたファンの人たちとつながるためのツールとしても、ホムペは重要なのだそうだ。
だがこうしたメリットはホムペに限ったものではない。最近ではミュージシャンのサポートに力を入れるマイスペースのように、PC側で手軽に情報発信できるツールも充実している。PC版とモバイル版のサイトを用意しているミュージシャンも多い。かなねいろの2人もホムペの更新は主にPCからしているそうで、携帯電話しか使えないというわけではない。
それでも彼らがホムペを中心にしているのは、「最も若い人だと14歳」(水本氏)というように、携帯電話を積極的に使っている若いファンが多いということ、そして携帯電話であればほとんどの人が持っていて、ライブ会場などどこでも、いつでもサイトを見てもらえるという点が大きいという。
また、彼らの音楽活動の主軸はライブであり、ネットが主ではないことも理由の1つになっていると言えるだろう。彼らは取材時(3月17日)、iらんどミュージックファクトリーの音楽配信機能を使用しておらず、ホムペ上で試聴できる楽曲は数曲しかなかった。
このことについて丸山氏は「(ホムペ上に)配信楽曲が増えすぎると、アーティストとして軸がぶれてしまう。ライブを見てもらい、楽曲を聴いてもらいたいので、音楽配信やCDリリースだけをするというのはちょっと自分たちの方向性とは違う」と話す。彼らはあくまで、ホムペをファンに向けて活動をアピールするためのツールとして位置づけている。ライブに来てもらったファンに自分たちの活動や近況を知ってもらうのが目的なので、凝ったサイトやコンテンツは必要なく、ホムペで十分だというのだ。
ホムペへの誘導手段もシンプルだ。路上ライブなどで配布するチラシにURLやQRコードを入れておき、そこからアクセスしてもらうというのが主となっている。掲示板やPRページに書き込んでホムペをアピールすることはしておらず、ネットを経由したアピールには積極的でないようだ。
ただ、「今までファンが(ホムペに)何を求めているか分からなかった。最近は音楽事務所の人などと話をするようになり、ファン視点で考えたら着うたなどの配信も必要だろうという意見があって、やってみようと思った」(丸山氏)というように、ホムペ上にコンテンツを用意し、ネット上でアピールすることの重要性に気づいていない部分もあったという。それゆえ今後は着うたや待ち受け画像など、ホムペ上のコンテンツを増やしてアピールしていきたいとも話していた。実際、取材後再び彼らのホムペを確認したところ、iらんどミュージックファクトリーの音楽配信機能を用いて自主制作CDの楽曲を試聴できるようになっていた。
アマチュアのミュージシャンやお笑い芸人などに活用されているホムペだが、彼らがメジャーデビューして芸能事務所に所属したり、有名になったりすると共に閉鎖される例は多い。
これは、所属事務所の戦略上、個人の情報発信を制限する場合が多いためだ。だがホムペを閉鎖してしまうことが、デメリットにつながることもあると魔法のiらんどの佐竹氏は指摘する。「(アーティストが運営してきた)ホムペはアーティストだけのものではなく、ファンと一緒に作ってきたもの」(佐竹氏)だからだ。魔法のiらんどには「メジャーデビューに伴ってホムペを消して欲しい」という相談が持ち込まれることもあるが、「消すのは構わないが、一緒に作ってきたファンも確実に離れますよ」と説明しているという。実際、それが理由で従来のファンが離れてしまったケースもあるのだそうだ。
プロとなったアーティストがかつて使用していたホムペが残っているケースも時折見られる。先のアーティストでいうとマキシマムザホルモンのホムペは、現在も「跡地」として存在している。また、TOKYO FMのラジオ番組「SCHOOL OF LOCK!」とSony Musicが主催する10代限定ロックフェスティバル「閃光ライオット」でグランプリを獲得したGalileo Galileiのように、アマチュア時代からホムペを使ってきたアーティストが、デビュー後もホムペの一部機能を使い続けるなどして、継続して人気を得るという例もある。
「(音楽・芸能事務所の)マネージャーの多くは30、40代で、ウェブで何かをやるのは危ない、サイトを訪れた人から何を言われるか分からないと考えがちだ。アーティストの情報管理は大事だが、それによってクリエイティブの幅が狭められてしまうのは問題だ」と、佐竹氏は話している。
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