日本版Facebookに成長するか?--大学生に特化したSNS「LinNo」 - (page 2)

原田和英(アルカーナ)2008年07月09日 08時00分

 このSNSは、各大学別にSNSが分かれているのが特徴で、たとえば、LinNoの慶應義塾大学版や早稲田大学版が存在する。より密度の濃いコミュニケーションと精度の高い情報を得るのならばこの仕掛けが有用に機能するかもしれない。登録する時も大学のメールアドレスが必須。この大学用メールアドレスの把握は、セキュリティ面も含めてユーザー管理に活用できるだろう(念のため:同じ仕組みを持った学生向けSNSは他にもある)。

 現在、対象大学は「青山学院、関西学院、慶應、国士舘、駒沢、上智、成城、千葉、中央、東京、日本、文教、法政、明治、横浜国立、立教、立正、早稲田」の18大学。7月3日より関西方面へも展開しているそうだ。ただし、この大学別にSNSを分けるという戦略は「大学別の人とはつながれない(少なくとも現状は)」という不利な点もあり、これがどう作用するかは今後の動向次第だろう。なお、Facebookの初期は、各大学のレイヤーがあり、その上に全体のレイヤーがあるという構成だった。

 機能としては、SNSでよく見られる「日記」「足跡」「メッセージ」以外に大学生ならではのコンテンツとして「授業の登録」や「サークル」などがある。自分が履修している時間割も登録でき、そこから友人と繋がることもできる。また、授業は教授(担当者)名でも検索できる。学部や学科、カテゴリ(一般教養、ゼミなど)、キャンパスでの絞り込みも可能。

 また、「授業」ではノートの共有ができる他、「トピック」という掲示板で情報交換も可能。また授業の評価もでき、「履修中」「履修済み」「履修検討中」といったステータスと共に「履修してよかったか」という点をマルバツで投票できる。

 「サークル」とは、SNSのコミュニティーのような機能。既存のサークルのコミュニティーもあれば、独自のコミュニティーもある。たとえばテニスサークルや文化系サークルなど既存サークルの「サークル」や、「早慶戦今年こそは・・・」「リンノキャンペーン」といったこのサービスならではの「サークル」もある。またこの「サークル」ではイベント情報も登録可能。

 変わった機能としては「リンノボックス」というものがあり、ファイル、動画、テキスト、リンクなどを共有できる。ファイルとして投稿できるのは「doc、xls、ppt、pdf、docx、xlsx、pptx」といったマイクロソフトOffice関連のファイルに対応。授業のメモやファイルなどの共有に利用されるのだろう。動画はYouTubeのリンクを張ることで共有。それにより動画を保有する負荷を避けているのだと思われる。

 また、同じ授業、サークル、学年・学部の人などをランダムに表示する機能もあり、友人作りのきっかけを作っている。携帯電話からも利用も可能だ。

 このサービスの特徴としては、大学生のニーズに即したコンテンツに特化しているという点が強みだろう。今までの学生SNSというと、一般的なSNSと同じ機能を提供しており、ただターゲットを学生にしているというだけのものが多かった。それに対し、LinNoでは「授業」「ノート」「サークル」など学生向けのコンテンツを提供している。

 開始は2007年の12月に慶應義塾大学から始まった。そのせいか、学生から聞いたところ「慶應が一番盛り上がっている」という声もある。しかし、慶應義塾大学のSFCキャンパスの生徒によると「時間割・レポート登録・教官との連絡・ウェブ会議室などを備えた学内のシステムSFC-SFSがある」とのことなので、そのような既存サービスとの差異化をどう進めていくのかは気になるところ。

 年内には登録大学数として50校を目処にしているそうだ。なお、このように広範囲の大学をターゲットにできる運営の特徴として「企画から組織運営のすべてを大学生が担当することにより、自主性が高く、スピード感のある組織運営を実現しています。」という点がある。つまり、各大学SNSの運営を大学生に委ねているということだろう。これも一説には、やはり行動力のある学生が担当しているそうで、そのようなオフラインとのネットワークも強みとなるだろう。

 運営会社はコミュニティファクトリーのスピンオフでできた「リンノ」。代表を務める松本龍祐氏は以前、中国初のSNS「UUME」の日本支社にも参画していた。なお、2008年3月に第三者割当増資を行い、資本金は2億1495万円なので当座は運転資金には困らなさそうだ。

 このSNSが十分な学生を集めることができれば、まだ日本では数少ない特化型SNSの成功事例となる可能性もあるだろう。

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