3大企業にベンチャーも絡む検索エンジン市場のいま - (page 3)

別井貴志(編集部)2005年05月19日 23時37分

ブログはかならずしも3強が優位にあらず

 こうした大手3社の熾烈な競争が続く中で、もっとも熱いサービスが「ブログ」だろう。ブログサービスでは、Googleが2003年1月にPyra Labsから買収して提供を開始したBloggerがあり、日本語での提供も2004年11月から開始された。米Yahoo!は2005年3月16日にブログとSNSを組み合わせた新サービス「Yahoo! 360°」のベータ版を展開し、日本では2005年1月に「Yahoo!ブログ」ベータ版を開始している。また、MSNは日本でティー・オー・エスと組んで2004年8月から「MSN Spaces」をベータ版として開始し、その後2004年12月に正式版に移行し、米でも開始された。

 アフィリエイトブームもあって日本でもブログは盛り上がりを見せており、2005年5月に発表された総務省の調査では、2005年3月末時点での日本のブログ開設者はのべ約335万人もいるという(グラフ3)。複数のブログサービスを掛け持ちで利用している実態を考慮すると、純粋なブログ利用者は約165万人いる。その中で、少なくとも月に一度はブログを更新しているアクティブユーザーは約95万人いる。2007年3月にはのべ利用者が2.3倍増の約782万人、アクティブユーザーは3.1倍増の約296万人になると予想している。

グラフ3:日本のブログ開設者数の現状と予想(2005年3月末現在)
出典:総務省
*「インターネット利用人口に占める割合」は純ブログ開設者数の占める割合で、インターネット利用人口は総務省調査

 また、2005年3月末時点で少なくとも月に一度はブログを閲覧する人は約1651人で、2007年3月末には2.1倍増の約3455万人になると予想している(グラフ4)。

グラフ4:日本のブログ閲覧者数の現状と予想(2005年3月末現在)
出典:総務省
*インターネット利用人口は総務省調査

 さらに、2004年度のブログ市場規模は約6億8000万円で、アフィリエイトなどを活用してブログを経由した物販の売上などを加味した販売総額(アフィリエイトの報酬やアフィリエイトを通じた販売額などの合計)など、関連市場も含めた規模は約34億円と推定。これが、2006年度には20.7倍増の約140億6000万円になり、関連市場を含めた規模は40.5倍増の約1377億円にものぼると予想している(グラフ5)。

グラフ5:日本のブログ市場規模予測
出典:総務省
*「ブログサービス市場」=有料ブログサービス、「ブログ広告市場」=ブログを活用した広告、「ブログソフトウェア市場」=企業向けブログソフトウェア販売、「ブログ出版市場」=ブログを活用した出版、「ブログEC市場」ブログを活用した電子商取引。市場規模はこれらの総額だが、「ブログ市場規模」ではブログECの販売貢献額(アフィリエイトなどの報酬・手数料など)をベースとし、「ブログ関連市場規模」ではブログECの販売総額(アフィリエイトなどの報酬・手数料とそれを通じた物販の合計)をベースにした

 このように潜在成長性が著しいブログだが、実はGoogle、Yahoo!、MSNはこの分野で出遅れた。利用者数や開設者数でもライブドアやgoo、はてな、ココログ、エキサイトなどに先行された。ただし、さすがに日本に強いYahoo!は急速に巻き返している(グラフ6)。だが、やはり出遅れた影響はある。熾烈な争いを展開しているはずの「検索」の分野で他者に先行を許しているのだ。

グラフ6:ブログサービスの利用動向(2005年4月)
出典:gooリサーチとjapan.internet.comによる共同企画調査「アンカーリサーチ with goo」の「第14回:Blog に関する調査」より。過去1カ月以内に訪問したブログで利用されていたブログサービスをアンケート調査したもの

ベンチャーの逆転もあり得るプッシュサービス

 ライブドアの未来検索やgoo、ドリコムなどの企業をはじめとして、BulkfeedsやblogWatcherといった個人やベンチャーなども含めた「ブログ検索」は、すでに参入者が非常に多い。米国でブログ検索サービス最大手のテクノラティはデジタルガレージと提携して、完全子会社のテクノラティジャパンを2005年1月に設立している。Ask Jeevesも、2005年2月にブログやニュースフィードなどの検索や登録、発信、共有など総合サービスを手がけるBloglinesを買収し、既に日本語でのサービスも行われている。2005年夏にはBloglinesの検索機能にTeomaを導入し、Ask JeevesとBloglines2005年中に統合させる予定だ。

 このように先駆者や参入者が多いのは、ブログがRSSやAtomと呼ばれる見出しや要約、更新情報などのメタデータを構造化して記述するXMLベースのフォーマットを用いているからだ。誰でも利用できる標準化されたデータ構造なので、この情報を利用すれば、通常のウェブ検索よりも素早く最新の情報を検索しやすい。

 RSSやAtomは別にブログに利用が限られたわけではない。サイトやコンテンツの更新情報以外でも、RSSやAtomを利用したサービスやビジネスはアイデア次第でまだまだ出てくるだろう。出遅れたYahoo!も「My Yahoo!」で新着情報などにRSS配信機能を付けたほか、RSSリーダー機能も装備した。

また、RSSを広告に利用する動きも急だ。Googleは2005年5月にGoogle AdSenseネットワークからのテキスト広告や画像広告を、RSSやAtomのフィードと組み合わせて配信するサービスをベータプログラムとして開始した。日本でもネットエイジグループが4月からRSSを利用した広告出稿や配信サービス「RSSコンテンツマッチ広告」を展開し、その事業を専門に行うRSS広告社を設立している。

 さらに、企業内におけるブログ活用を推進するために、日立製作所とシックス・アパート、ドリコム、ネットエイジが共同で「イントラブログ・コンソーシアム」発足させる動きなどもある。

 ブログやRSSを利用したサービスは、ユーザーが能動的に利用する通常の検索とは異なり、プッシュ型コンテンツの意味合いが強い。プッシュ型サービスでは、あらかじめユーザーが指定した検索ワードに新しい検索結果が見つかった時に、自動でその内容が電子メールで送信される「Googleアラート」なども展開されているが、この分野ではGoogle、Yahoo!、MSNといえども安泰ではないだろう。大手のみならずベンチャー企業にもビジネスチャンスがある。

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