今年も9月25日から5日間、米Appleのプライベートイベント「Apple Expo」がフランス・パリで開かれた。Appleとの付き合いが長くないためか、Appleにはいつも予想を裏切られるのだが、今回もその通り。期待していた「iPhone」の欧州ローンチに関する発表は、前の週に英ロンドンで行われたし、会場にiPhoneの姿もない(「iPod Touch」で十分かも)。それでも、Apple Expoは「Macworld Expo」に匹敵する欧州最大のMacイベント。パリ南にある会場に、フランスのみならず近隣諸国からMacファンが詰め掛けた。
Apple Expoは、毎年9月にパリで開催される。技術系イベントとしてはフランス最大の規模を誇り、毎年約7万人の人が来場する。
どうしてフランスなのか?Apple側はきちんとした答えをくれないが、どうやら歴史的な経緯があるようだ。Apple Expoが最初に開かれたのは1984年。フランスでMacintoshの出だしが好調だったこともあり、年次イベントとなった。
これには、Appleに籍を置いたフランス人の影響もあるだろう。数年前までAppleの欧州拠点はフランスにあり(現在は英国)、ここからは、フランスでトップを務めその後米国本社の副社長になったJean-Louis Gassee氏(「Be OS」で有名)、NeXT Computer Interface Builderを開発したJean-Marie Hullot氏などのフランス人が出ている。もちろん、フランスにはMacユーザーも多い。世界のPCの約9割以上がWindowsといわれる中、フランスはMacの比率が高いことで知られている。Macはファッション、アート関係者を中心に人気で、Apple関係者によると、フランスにおけるシェアは「四捨五入すると10%」という(それでも、Apple Storeはまだフランスにはない)。
このように、フランスに強い開発者コミュニティとユーザーコミュニティがあることを考えれば、Appleがここでイベントを開くのは当然の流れ、といえるだろう。こちらのプレスの中には、CEOのSteve Jobs氏が個人的にパリが好きだから、という人もいる。
さて、このようなAppleとフランスの長い蜜月にも変化が見られる。Apple Expoは、2000年の「Mac OS X」ベータリリース、2004年の「iMac G5」発表など、Appleにとっても重要な発表を行う場所だったが、2004年以降、目玉となるような新しい発表もないし基調講演もない。また、Apple Expo自体も変わりつつある。iPodに代表されるように、Appleの製品カテゴリが拡大していることを受け、バッグ、靴、自動車など以前には考えられなかった企業が出展するようになった。iPhoneの欧州進出を受け、今後この方向性はさらに加速するだろう。
Apple Expoのポジショニングは変わってきたが、これからもフランスおよび欧州のMacファンのためにApple Expoが続くことを願っている。
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