手にして変わった「驚きがないiPhone 5」--松村太郎のAppleニュース一気読み

 今週のAppleに関連するCNET Japan/ZDNet Japanのニュースをまとめた「今週のApple一気読み」。

 いよいよ「iPhone 5」が発売された。市場の予測では、650万台から1000万台が、発売の週末に出荷されると見られており、米国でも日本から15時間遅れて発売となった。ケータイショップの予約は既に初回入荷分は終わっており、サンフランシスコ周辺のApple Storeを何店舗か回ったが、1日たって各店舗の在庫も底をつきつつあるようだ。

 しかしAppleが発表した発売後最初の週末の売上台数は、500万台という数字。これは、iPhone 4Sよりも100万台多い数字ではあるが、市場には失望を与えている。端末の供給が絞られたとの見方があり、初回入荷に漏れた人たちの予約が発送され始めるなど、Appleによる何らかのコントロールが垣間見られる。一方で、中国のiPhone組み立てを担当するFoxconnの工場での暴動などもあり、今後の供給状況によっては売上台数に影響を与える可能性も出てきた。

iPhone 5発売、iOS 6登場とその第一印象

 とにかく、手放しに褒めるとはこのことだ。少し怖いくらいに――

 iPhone 5が発表され、実機が一部のプレスの手に渡ってそのレビューが掲載されはじめてもなお、iPhone 5への評価は高まり続けている。先週に入ってAppleの株価は終値で700ドルを超え、iPhone 5発売の9月21日も700ドル台で取引を終えている。「iPhone 4S」が発売された頃は400ドル前後で、エクソン・モービルを時価総額で越えると話題になったことを考えると、全く桁が違う評価がなされていることが分かる。

 筆者も含めて、今回のiPhone 5に対しては「驚きがない」という枕詞を贈らざるを得ない。もちろん事前に情報がリークされていたこともあるが、LTE対応、画面の大型化、プロセッサの進化など、発表イベントでもスペックを中心に語られる側面が強く、またライバルへ追いついたという見方を越えるものではなかった。

 しかし、この冷めた視点が、実機を持ったときの質的変化の大きさを強調してしまう。

 iPhone 5はiPhone 4Sと比較して、本当に軽い。驚くほど軽いのだ。そしてその軽さをさらに強調するように薄いボディ。しかしそのボディでも、LTEやPassbook、ディスプレイなどのマイナス要因にきちんと対処して、iPhone 4Sよりも長持ちし、夜まで充電しなくても持つようになった。Lightningケーブルの追加購入に二の足を踏んでいる筆者としては、充電ケーブルを枕元にセットしておくだけで良いのはありがたい。

 どこか、「ケータイとは、こうあるべきだ」という感覚を思い起こさせてくれるiPhoneが、“iPhone 5”なのだ。

 iOS 6は、開発者だけでなく、ユーザーにとっても「プラットホーム化するOS」を感じさせてくれる。例えばTwitterやFacebookログイン、Passbookといった機能は、アプリ開発者がこれらのサービスをうまく活用すればするほど、ユーザーにとってより快適な環境がもたらされる。

 具的的にいえば、新しいアプリを入れる度にTwitterのユーザー名とパスワードを入力しなければならない、なんてことはもう必要なくなる。iOS 6とアプリ、クラウドの精密な連携が、iPhoneのユーザー体験にきちんと反映される点で、高い期待を寄せることができるし、今後アプリによる更なる「iOSのハック」が進む過程で、再び評価していきたい。

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地図の問題 - Appleはこれからどう取り組むのか

 iOS 6に対する批判で世界中からわき上がっているのが、Googleから独自のアプリに切り替えた地図だ。世界で統一された美しい地図を提供しようというAppleの姿勢と、不完全だったり不正確な情報掲載という2つの側面はあるが、これまでのGoogleマップの便利さ、正確さを下回っている点で、ユーザーからの批判がわき上がっている。

 目玉機能であるFlyover機能で都市の中を鳥が飛ぶように探検できるエリアも限られているし、航空写真の継ぎ目が大きなゆがみを作ってしまっていたりしており、批判を通り越して笑いものになっている様子も見受けられるほどだ。Appleはこれらの批判や指摘に対して、感謝するとコメントし、改良するとしている。

 各国の文化で違う空間のとらえ方、地図の表現の仕方のせめぎ合いもある。例えば欧米では住所のルールを見ても分かるとおり道路(ストリート、アベニュー)が大切であるのに対し、日本の住所は道ではなくブロックのエリアが大切だし、日本や欧州のように鉄道が発達しているならば、道路よりも鉄道や駅の方が重要なランドマークになる。このあたりの取扱をどのように吸収するのか、地図が好きな筆者としても気になるところだ。

 ではiOS 6の地図がまるっきりダメなのか? 表示されるデータは確かにダメだが、表示する仕組みは未来があるかも知れない。Googleマップは一定の面ごとに画像を読み込んで表示しているが、Appleの新しい地図はベクターデータで、データ量として軽くできる。また航空写真を読み込む際に、表示されるグリッドから、地形データを持っていることも分かる。

 データの正確性を増し、充実することで、地図というかジオラマのような体験に変わっていくのかも知れない。そんな期待を長い目でしつつ、今は道に迷わないために、代替の地図アプリを使っておくべきだろう。

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iPhone 5が登場して、ライバルとの競争や裁判への変化は?

 iPhone 5がスマートフォン市場に与える影響は発売後の週末、そして1カ月のセールスを見ながら判断するとして、iPhone 5がしばらくの間、スマートフォンのトップブランドで在り続ける状況は変わらないだろう。またボディの質の高さから、これ以上iPhoneらしさを追究したり、iPhoneらしさに対抗したり、スペックでの競争を挑むと、消費者からしらけた視線が向けられることになりそうだ。

 一方で、筆者が感じているのは、「では、iPhoneやスマートフォンにどんな成長余地があるのか」ということ。ソフトウェアやアプリは、省電力化のアイデアやプラットホーム化、生活連携といった余地は大いに残っているし、特にAppleには地図の改善をお願いしたい。しかしそれをポケットにしまい込む端末の「次」の姿は、どんなものになるだろうか。

 裁判に関しても、サムスンはiPhone 5を特許侵害の端末に加えるとしており、まだまだ解決の出口には遠そうだ。

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