ソウル発--かつては安売りチェーンの棚に並ぶような製品をつくっていたあの韓国企業が、次の有力なITブランドになるかもしれない。
Samsungは、わずか4年あまりの間に変身を遂げ、いまでは業界のトップ企業に名を連ねるようになっている。この秘訣は、同社が部品生産のノウハウを、徹底したブランド、マーケティング、デザイン戦略と組み合わせたことにある。コンピュータと家電の融合が急ピッチで進んでいることを考えると、同社が市場リーダーになる可能性が十分にあると業界アナリストは口をそろえている。
数字もこの説を裏付けているようだ。テレビ、ビデオレコーダ、フラットパネル・スクリーン、PCモニタ、PCメモリ、デジタルカメラ用フラッシュメモリの各分野で、Samsungが世界市場で首位に立っていることを示すさまざまなデータが出されている。
同社は、携帯電話市場では2000年の6位から今年は3位に浮上し、世界市場で10.8%のシェアを獲得している。2004年の第1四半期には合計2000万台の携帯電話を出荷したが、このペースでいけば今年度の市場シェアは15.1%となり、現在第2位のモトローラを抜くと見られている。「5年前のわれわれは、コモディティ市場でくすぶっている、名もない企業だった」と、Samsungのグローバルマーケティングを統括するエグゼクティブバイスプレジデントEric Kimはいう。KimはSamsung躍進の立役者の一人といわれる人物だ。「5年前は北米市場で廉価なテレビを売っていた。しかし、われわれは意識的な努力によって、ローエンド市場から抜け出した。また携帯電話市場では、いまやNokiaやMotorolaと肩を並べる存在になっている」
Samsungのグローバルマーケティング担当エグゼクティブバイスプレジデントEric Kim |
Samsungの急成長は、この国が数年前の経済危機から脱したことと直結している。1997年にアジアを襲った不況は韓国を財政危機の瀬戸際まで追いつめた。Samusungは労働力の約34%を削減することを余儀なくされ、世界合計で8万3800人いた従業員は5万5000人に激減した。このほかにも100の事業部を売却、解散、あるいは再編しなければならなかった。
復活への道を模索していたSamsungは、アナリストや米国企業のトップが繰り返し口にするある言葉に活路を見いだした。それは「高級路線への転向」だった。
Samsungは安価な電子機器や家電製品といった従来の製品ラインを捨て、ハイエンド製品を扱うようになった。最新の機能と洗練されたデザインを持つ高級携帯電話はその1つだが、この戦略は功を奏しているようだ。販売台数ではMotorolaに及ばないものの、売上高では同社を抜いた--2003年の売上高は、 Motorolaが109億ドル、Samsungは110億ドルだった。
今年は80インチのプラズマテレビ、電子部品をスタンドに収めることで画面部分の容積を減らした52インチのプロジェクションテレビ、衛星テレビを受信できる携帯電話、2メガピクセルのカメラ付き携帯電話といった高額商品の発売が予定されている。さらに野心的なのは、国家戦略に沿って開発が進められている「デジタルホーム」関連技術だ。
「韓国政府の目標は、2007年までに1000万世帯にホームネットワークを普及させることだ」と、Samsung先端技術研究所のバイスプレジデントYong Duk Yoonは語った。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」