Samsungは、その規模と影響力の大きさゆえに、準政府組織のように見えることがある。同社は韓国経済の成長を支える原動力であり、今年は1万7000人を新たに雇用し、また597億ドルを投資して低迷する国家経済のてこいれを図ると公言している。そして、Samsung Electronics前社長のDaeje Chinは、現在は情報通信大臣として大統領に直接意見を述べる立場にある。
![]() Daeje Chin情報通信大臣 |
一方、Samsungが政府機関さながらの批判にさらされることもある。たとえば、一部の政治家や市民団体は、Samsungをはじめとするコングロマリット(財閥)が十分な税金を納めていない点を指摘し、改革を求めている。
「韓国企業を軽んじている者はいない」と調査会社The Envisioneering Groupの社長Richard Dohertyはいう。「韓国企業は、日本企業の専売特許と見なされてきた革新性と、中国に迫る安い人件費を兼ね備えている」
Samsungの成功を支えたのは技術力だけではない。積極的なマーケティング戦略もこれに劣らない役割を果たした。ロンドンに拠点を置く広告・ブランド調査会社Interbrandによれば、Samsungの「ブランド価値」は2002年の83億ドルから、2003年には108億ドルへと実に31%も上昇したという。
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韓国ではどこに行ってもSamsungの名を目にする。 同社は1938年にByung-Chull Leeによって創立された。当初は野菜と干物を満州と日本に輸出する会社だったが、まもなく製粉・製菓業に進出する。現在の「Samsung」となったのは1951年だ。社名のSamsungは韓国語で「三つの星」を意味する。 1969年にはエレクトロニクス部門が創設された。当初は白黒テレビのみを製造していたが、1974年にはチップの製造に乗り出す。 各グループ企業は独立して経営されているが、Lee一族による同族経営は今も保たれている。会長兼CEOのKun Hee Leeは創立者の直系の子孫であり、ハーバード大学を卒業した同氏の息子は後継者の最有力候補と見られている。 Samsungは巨大なコングロマリットであり、家電のほかにも自動車製造、病院、マンション開発、保険、精糖、デパート、繊維、建設、化学薬品、高級ホテル、造船など、広範な産業分野に進出している。傘下の製紙工場が生産した紙を使って発行される新聞も、Samsung帝国の一部だ。 ただし、Samsungと名の付くものがすべて、このコングロマリットの一員というわけではない。たとえば、ソウルの江南区にあるけばけばしい結婚式場「Samsung Wedding Chapel」はSamsungとは無縁の施設であり、同社の商標を不法に利用しているにすぎない。 --Michael Kanellos |
Samsungの認知度はソニー、Dell、Hewlett-Packardには及ばないものの、その差は急速に縮まっている。
「いよいよSamsungが真価を発揮するときが来た。北米市場での最大の課題はブランド力だが、私の見たところでは、それも克服されつつある」とGartnerのアナリストVan Bakerはいう。「消費者市場ではブランドがすべてを決める」
2003年のSamsungの総売上高は541億ドル、純利益は50億ドルだったが、今年はその両方が急速に伸びている。それと対照的に、家電分野では最強のブランド力を持つとされていたソニーは、2003年度の純利益が前年比23%減の8億5100万ドルとなり、大規模なリストラを余儀なくされた。
「家電の世界では、ブランド品とそうでない商品には、実勢価格で50〜60%もの差がある」とSamsungのKimはいう。
マーケティングの専門家であるKimにとって、この違いはお馴染みのものだろう。KimはこれまでSpencer Trask Software、Dun & Bradstreet、Lotusなど、さまざまな企業でキャリアを積んできた。SamsungがKimに白羽の矢を立てたのは、会社のイメージを一新するためだ。
古参社員の多くが会社の変化を脅威と感じたのも無理はない。彼らにとって、Kimは最悪の恐怖を体現する存在だった。Kimは韓国人だが、米国で育ち、米国で教育を受けている。入社初日、彼は各部門のバイスプレデントをはじめとするお歴々に数百ページに及ぶ詳細な報告書を配り、長いプレゼンテーションを行った。
![]() Samsungのスウォン事業所のロビーには創立者Byung-Chull Leeの胸像が飾られている。
(写真:Michael Kanellos) |
この会議に出席したある人物によれば、Kimの発表はむっつりとした沈黙で迎えられたという。敵意を察知したSamsung ElectronicsのCEO、Jong Yong Yunは幹部たちをぴしゃりと戒めた。
「君たちが何を考えているかは想像がつく。だが、彼に手を出してみろ。君たちは終わりだ」
この後、Samsungは欧米スタイルの徹底したマーケティングキャンペーンを展開することになる。同社は2000年に広告代理店Foote Cone & Beldingに自社の広告を一任し、「マトリックス・リローデッド」などの映画、オリンピックへの協賛、印刷・オンライン媒体への大量出稿を通して、自社の製品とブランドを着実に浸透させていった。
Samsung Electronics North Americaの戦略マーケティング担当シニアバイスプレジデントPeter Weedfaldによれば、昨年の11月だけで330のウェブサイトに10億の広告が表示されたという。そして、この秋には新製品がずらりと並ぶ直営店がニューヨークにオープンする。
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「Samsungがブランディングに取り組むようになったのは比較的最近のことだ。1999年まではブランドを戦略上重要な資産とは考えていなかった」とSamsungのシニアブランドマネジャーCatherine Coleはいう。「安物を安く作る会社--それが、当時のわれわれのイメージだった」
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