改正薬事法の完全施行は土壇場で厚労省がどんでん返し--委員の不信感も募り混沌

別井貴志(編集部)2009年05月03日 10時00分

 改正薬事法(概要PDF)がこの2009年6月1日に完全施行される予定だが、目前に迫ったこの時期にきてもインターネットを含めた通信販売のあり方などについては、その混乱の度を極めている。

 簡単に改正薬事法に関するこれまでの経緯を振り返っておく。基本的に現行の薬事法(昭和35年法律第145号)は1960年に施行されたものだ。これが、1990年代に入ると国により政策として薬事法に関連する規制改革がさまざまに実施され始まった。1998年には栄養ドリンクが、2004年にはビタミン剤や整腸剤が、といった形で医薬部外品の指定範囲が新しく指定され、コンビニエンスストアなど薬局以外の店舗でも取り扱えるようになったことなどがある。

 そして、今回完全施行されようとしている改正法は、2006年6月8日に衆院本会議で可決・成立した改正薬事法案に端を発する。店頭医薬品(一般用医薬品)をリスクに応じて3区分に分け、副作用リスクに応じた販売ルールを定めること(一部の医薬品について医薬部外品へ指定替えすることなく薬局以外で取り扱いができるようにする)を柱にした案で、周知期間を3年とったうえで施行されることとした。つまりこの6月に施行されるわけだ。

 厚生労働省(厚労省)は、2007年3月30日に成分確定した「一般用医薬品の成分リスト」に基づき、一般医薬品を特にリスクの高い第一類医薬品(H2ブロッカー含有胃薬、毛髪用薬など、新たに承認された第一類医薬品)、比較的リスクの高い第二類医薬品(主要な風邪薬や解熱剤、胃腸薬、妊娠検査薬など、指定第二類医薬品)、比較的リスクの低い第三類医薬品(ビタミン剤や整腸薬、消化薬など)との3つに分けた(通知資料PDF1同PDF2)。この分類は2008年10月8日に一部変更(全文PDF)されている。リスクの程度に応じた販売方法についても定め、このうち第2類医薬品と第3類医薬品について、薬局・薬店の薬剤師でなくとも、実務経験1年以上で、都道府県が実施する試験に合格した「登録販売者」であれば販売できるようにした。

 そして、インターネットを含んだ通信、郵送販売の是非を問う議論が本格的に始まったきっかけは、厚労省が2009年2月6日に公布した「薬事法施行規則等の一部を改正する省令」(全文PDF概要PDF)だ。この省令は、2008年2月8日の第1回から7月4日の第8回まで行われた「医薬品の販売等に係る体制及び環境整備に関する検討会」の報告書(PDF、2008年7月4日付)に沿う形で案が策定され、パブリックコメントを経て2009年2月6日に公布された。

 検討会の報告書、および省令では、そもそもの原点である現行の薬事法の精神にのっとり、対面販売の原則が強調され、事実上としてインターネットを含んだ通信販売においては、もっともリスクの低い第三類医薬品の販売のみを認める内容だった。対面販売の原則とは、販売時に行う情報提供は、一般用医薬品の適切な選択や購入、使用に直接つながるものであることから、専門家(第一類医薬品は薬剤師、第二類と第三類医薬品にあっては薬剤師もしくは登録販売者)として責任ある判断を行えるよう、情報提供時に購入者側の状態を的確に把握する方法として、薬局か店舗において、専門家によって対面で行うことをいう。

 こうした内容であったため、省令案が公表された2008年9月17日以降、医薬品をインターネットで販売している事業者や長年伝統薬や漢方薬を郵送販売していた事業者らが、解熱鎮痛剤や風邪薬、胃腸薬、水虫薬、妊娠検査薬、および漢方薬など大半の医薬品は今後一切購入が出来なくなるのは消費者の利便性を損なうなどとして、一斉に異論を唱え始まった。そして、直接厚労省や舛添要一厚生労働大臣に対して反対意見を送ろうとする運動や、署名活動が盛んに展開された。

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