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2013年春の中堅・中小企業のIT投資指標

ノークリサーチでは、中堅・中小市場における2013年春の定点観測調査を行った。

「アベノミクス」だけでなく、政権交代前から続く中堅・中小の企業努力などを加味した市場認識が大切
▼経常利益DI / IT投資DIともに改善を示すが、その背景には以前からの取り組みもある
▼ IT投資は「変化なし」が6~7割程度、1~2割の「増加」見込み企業の状況把握が重要
▼攻めの業績改善は年商5~50億円/年商300~500億円で見られ、IT投資訴求でも有望
▼ IT投資原資を捻出しやすいのは製造業/建設業、小売業/サービス業はまだ慎重姿勢

PRESS RELEASE(報道関係者各位) 2013年4月22日

ノークリサーチQuarterly Report  2013年春版(Vol 021)
2013年春の中堅・中小企業のIT投資指標

調査設計/分析/執筆: 岩上由高


株式会社ノークリサーチ(本社〒120-0034 東京都足立区千住1-4-1 東京芸術センター1705:代表伊嶋謙ニ03-5244-6691URL:http//www.norkresearch.co.jp)では、中堅・中小市場における2013年春の定点観測調査を行った。本調査は2013年より4月、7月、10月、1月の四半期毎に実施する。本リリースはその結果速報をまとめたものである。
調査対象企業: 年商500億円未満の国内民間企業1040社の経営層および管理職
調査対象地域: 日本全国
調査対象業種: 組立製造業/加工製造業/建設業/流通業/卸売業/小売業/IT関連サービス業/一般サービス業/その他
調査実施時期: 2013年4月


「アベノミクス」だけでなく、政権交代前から続く中堅・中小の企業努力などを加味した市場認識が大切
▼経常利益DI / IT投資DIともに改善を示すが、その背景には以前からの取り組みもある
▼ IT投資は「変化なし」が6~7割程度、1~2割の「増加」見込み企業の状況把握が重要
▼攻めの業績改善は年商5~50億円/年商300~500億円で見られ、IT投資訴求でも有望
▼ IT投資原資を捻出しやすいのは製造業/建設業、小売業/サービス業はまだ慎重姿勢


▼経常利益DI / IT投資DIともに改善を示すが、その背景には以前からの取り組みもある
以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業全体におけるIT投資DIと経常利益DIの変化をプロットしたものである。
[IT投資DIの定義]
今四半期以降のIT投資金額が前四半期と比べてどれだけ増減するかを尋ね、「増える」と「減る」の差によって算出した「IT投資意欲指数」例えば、2013年4月時点でのIT投資DIは2013年4月~2013年6月までのIT投資意向を示した「先行指数」となる。(当該四半期のIT投資増減の「実績値」ではなく、投資意向を反映した「見込み値」である点に注意)
[経常利益DIの定義]
前回調査時点と今回調査時点を比較した場合の経常利益変化を尋ね、「増えた」と「減った」の差によって算出した「経常利益増減指数」例えば、2013年4月時点での値は2013年1月時点と比較した場合の経常利益増減の実績値となる。
前回と比べてIT投資DIは+4.2ポイント改善、経常利益DIは+5.6ポイント改善となった。アベノミクスが推進する金融緩和による円安効果などにより、景気回復への期待が高まっている。それが中堅・中小企業のIT投資意欲や経常利益にどこまで波及しているのか?が今回の焦点といえる。経常利益DIはリーマンショック以降では最も高い数値を示している。だが、その要因は後述するように必ずしもアベノミクスの成果だけではなく、厳しい円高が続く状況下での中堅・中小企業の地道な努力の成果も少なからず関係している。また、IT投資DI(投資実績ではなく、その時点での投資意向を示す数値である点に注意)は厳しい経済環境下での業務効率改善や先延ばしにされていた更新需要などにより2012年8月に一時的に改善したものの2012年11月(衆院解散が宣言された直後)の調査では今後の変化を見越して慎重姿勢となり、再び下落する結果となった。
IT投資DIの2013年4月時点での改善幅は経常利益DIよりも小さく、アベノミクスの成果が中堅・中小企業のIT投資意向を大きく改善させるまでには至っておらず、以降で示すようにアベノミクス以外の様々な要因を加味して現状を捉える必要がある。


▼ IT投資は「変化なし」が6~7割程度、1~2割の「増加」見込み企業の状況把握が重要
以下のグラフはIT投資増減の変化を年商別および業種別にプロットしたものである。
前頁に示したDI値はIT投資が「増加する」と回答した割合から「減少する」と回答した割合の差による指標だが、この値だけでは「アベノミクスも含めた昨今の変化が今後の中堅・中小企業におけるIT投資意向にどれだけ影響を与えているか?」の全体像を把握するには十分でない。
IT投資DIが+4.2ポイント改善を示す一方、以下のグラフが示すように依然として6~7割程度の中堅・中小企業が「IT投資額はほとんど変化なし」と回答している点に注意する必要がある。ただし、年商別や業種別の変化を丁寧に見てみると、「増加」の割合が前回調査時点から10ポイント以上増加しているケースもある。このように、昨今の変化を正しく捉えるためにはアベノミクス効果で全てを一律に説明するのではなく、年商(企業規模)や業種に固有の傾向を踏まえ、政権交代以前から中堅・中小企業が地道に進めてきた取り組みにも着目する必要がある。次頁ではそれらを詳しく述べていく。


▼攻めの業績改善は年商5~50億円/年商300~500億円で見られ、IT投資訴求でも有望
以下のグラフは経常利益DIおよびIT投資DIの変化を年商別にプロットしたものである。
[年商5億円未満]
経常利益DIは+4.0ポイント改善したが、IT投資DIは-1.6ポイントの下落となっている。経常利益の増加要因としては「消費者の購買意欲が高まっている」が挙げられる一方、減少要因では「消費者の購買意欲は依然として低い」「有望な販路を開拓できない」といった回答も多く、円安や株高がもたらす期待感と物価上昇に起因する不安感が織り交ぜられた状態となっていることがわかる。
経常利益の改善分をIT投資に振り向ける余裕はまだなく、IT投資減少要因では「売り上げが低迷し、IT投資費用を捻出できない」「景気が本当に回復するかをもう少し見極めたい」が多い。次の四半期に向けた経常利益DI見込みも現状から+1.0ポイント改善している。ただし、物価上昇と給与改善の時間差によっては再び業績悪化やIT投資意欲の減退が起き得る点に注意が必要である。
[年商5億円以上~50億円未満]
経常利益DIは+5.2ポイント改善、IT投資DIも+3.0ポイントの改善となっている。経常利益の増加要因としては「新たな製品やサービスが好調である」が比較的多く挙げられている。これは後述するように製造業や流通業(運輸業)における業態拡大などが主な要因だが、全体に占める割合で見た場合には経常利益が増加した企業は3割弱に留まる点に注意する必要がある。また、次の四半期に向けた経常利益DI見込みは現状から+1.7ポイント改善している。一方、IT投資の増加要因では「売上が向上して、IT投資費用が捻出できた」「製品/サービスの開発にITが必要である」が比較的多い。つまり、同年商帯ではアベノミクス以前から新規商材開発に着手し、その成果を受けてITを活用した取り組みを進めようとしている一部の企業がDI値の改善を牽引している。
[年商50億円以上~100億円未満]
経常利益DIは+15.8ポイント、IT投資DIは+11.7ポイントと大幅な改善となっている。ただし、経常利益増加要因では「雇用調整や人件費削減が進んでいる」が多く、IT投資増加要因では「サポート期限切れのため、刷新が必須である」が多い。さらに次の四半期に向けた経常利益DI見込みは現状から-9.5ポイントの下落となっている。このことから、同年商帯はDI値改善幅は大きいが、少なくとも次四半期の業績には厳しい見通しを持っており、IT投資も現状維持が中心になると予想される。
[年商100億円以上~300億円未満]
経常利益DIは+5.6ポイント、IT投資DIは+10.1ポイントの改善となっている。経常利益の増加要因では「消費者の購買意欲が高まっている」「新たな製品やサービスが好調である」などが挙げられているが、他年商帯と比べ理由が分散する傾向にある。
IT投資の増加要因では「売上が向上して、IT投資費用が捻出できた」が多い。経常利益の改善が景気動向にやや依存していると考えられ、物価上昇の影響などから次の四半期に向けた経常利益DI見込みは現状から-2.3ポイントの下落となっている。
[年商300億円以上~500億円未満]
経常利益DIは+0.1ポイントとほぼ横ばい、IT投資DIは+3.2ポイントの改善となっている。経常利益の増加要因では「業態の拡大や転換が成功している」が多く、IT投資の増加要因では「製品/サービスの開発にITが必要である」と「サポート期限切れのため、刷新が必要である」が多い。現時点での経常利益DI改善幅は小さいが、次の四半期に向けた経常利益DI見込みは現状から+7.1ポイントの改善となっている。今四半期に経常利益が増えたと答えた企業の割合は全体の3割弱だが、こうした一部の企業がアベノミクス以前から業態の拡大/転換を進めており、今後はITを活用した取り組みを進めようとしていることがわかる。


▼ IT投資原資を捻出しやすいのは製造業/建設業、小売業/サービス業はまだ慎重姿勢
以下のグラフは経常利益DIおよびIT投資DIの変化を業種別にプロットしたものである。アベノミクスによって各業種にもたらされる影響としては一般的に以下のような事柄が挙げられることが多い。
[プラスの影響の例]
組立製造業/加工製造業: 円安による海外での販売増加
建設業: 公共事業の増加による売上拡大
卸売業/小売業/サービス業: 株高などによる消費者の景気回復に向けた期待感
[マイナスの影響の例]
組立製造業/加工製造業/建設業/流通業(運輸業): 円安による燃料費や資材費の高騰
卸売業/小売業/サービス業: 給与改善よりも物価上昇が先行することによる家計の圧迫
このように同じ円安でもプラスとマイナスの双方の影響がある。また実際に中堅・中小企業を対象とした調査結果を踏まえると、アベノミクス以前からの取り組み成果も経常利益やIT投資のDI値に少なからず影響していることがわかる。また、懸念された中小企業金融円滑化法の終了については、金融機関における各種の取り組みや政府補正予算による資金繰り支援策などによって、経常利益の減少要因として挙げる企業の割合は現段階では1割程度に留まっている。次頁では調査結果に基づいた業種別傾向の詳細について述べていく。

[組立製造業]
経常利益DIは+20.8ポイント、IT投資DIは+19.0ポイントの大幅な改善となっている。経常利益の増加要因では「新たな製品やサービスが好調である」「企業の設備投資が増えている」「在庫調整や生産調整が進んでいる」が多く挙げられ、次の四半期に向けた経常利益DI見込みは現状から+1.2ポイントの改善となっている。一方で、IT投資の増加要因では「サポート期限切れのため、刷新が必須である」が多い。同業種の中には、リーマンショック直後の厳しい状況下でも複数の生産方式に対応するためのIT投資を行いつつ、新しい商材の展開(半導体装置の受託生産から福祉用具メーカとしての業態拡大など)などといった取り組みを進めてきた企業も存在する。今後も一部の企業では新たな取り組みが進むと予想されるが、直近の四半期については更新需要主体のIT投資意向を示している。
[加工製造業]
経常利益DIは+10.9ポイント、IT投資DIは+3.4ポイントの改善である。経常利益の増加要因では「新たな製品やサービスが好調である」「在庫調整や生産調整が進んでいる」が多く挙げられる一方、次の四半期に向けた経常利益DI見込みは+0.6ポイイントとほぼ横ばいになっている。また、IT投資の増加要因では「製品/サービスの開発にITが必要である」が多い。同業種では「金属加工のノウハウを生かした鍋製品の開発/販売」や「迅速な製造/納品という強みを生かし、旋盤の交換部品ユーザ企業に直接提供する」といったように下請けに留まらない業態拡大に取り組む企業も存在する。円安による資材調達コストの増加などを見込んで経常利益の見通しは慎重だが、下請けからの脱却などに伴うIT投資については今後も一部の企業で取り組みが進むと予想される。
[流通業(運輸業)]
経常利益DIは+23.7ポイントの改善、IT投資DIは-1.1ポイントの微減となっている。経常利益の増加要因では「業務アウトソーシング活用による影響」「業態の拡大や転換が成功している」が挙げられている。ネット通販における物流サービスニーズの増加などに伴い、同業種の中には従来よりもきめ細かい配送を請け負うなどの取り組みを進める企業も存在する。しかし、円安に伴う燃料費高騰の懸念などから、次の四半期に向けた経常利益DI見込みは-3.6ポイントと慎重な姿勢を示している。
IT投資の減少要因としては、「売上低下や人件費上昇などにより、IT投資費用を捻出できない」「景気が本当に回復するかをもう少し見極めたい」といった回答が多い。同業種ではIT投資費用の捻出が容易ではないため、ITソリューションを提供する側としては、ネット通販における物流サービスを請け負うことで短期間に売上を向上するための経営プラン提示など、IT活用だけに留まらない高い視点からの支援が必要になると考えられる。
[建設業]
経常利益DIは+6.4ポイント、IT投資DIは+1.3ポイントの改善となっている。経常利益の増加要因としては「公共事業に伴う案件が増えている」が多く挙げられ、次の四半期に向けた経常利益DI見込みも+9.5ポイントとなっている。アベノミクスによる公共事業への取り組みが中堅・中小の同業種にも波及しつつある状況といえる。ただし、資材調達力や人材確保力が大企業ほど強くないため、「円安で資材のコストが上がっている」や「人材を確保するためのコストが上がっている」を経常利益の減少要因として挙げる回答も見られる点に注意する必要がある。IT投資の増加要因では「更新需要の時期」が多く、減少要因として「IT投資を捻出できない」「景気が本当に回復するかをもう少し見極めたい」という回答も多い。ITソリューションを提供する側としては、見積/調達の精度や効率を向上させて利益を改善するなど、公共投資で得た売上増の効果を最大化するための提案を行うことが有効と考えられる。
[卸売業]
経常利益DIは-1.4ポイントの減少だが、IT投資DIは+10.8ポイントの改善となっている。経常利益の減少要因では「消費者の購買意欲は依然として低い」が多く挙げられ、アベノミクスの効果が一般消費者の購買意欲を大きく変えるまでには至っていない状況が垣間見える。だが次の四半期に向けた経常利益DI見込みは+4.8ポイントとなっており、時間の経過と共に波及が期待されている。IT投資の増加要因では「サポート期限切れのため、刷新が必要である」に加えて、「販路の創出や拡大にITが必要である」も挙げられている。ITソリューションを提供する側としては、消費者の購買意欲が更に高まり、同業種の新規投資意欲も高まってきた段階で、ビジネスマッチングサイト活用による機会創出やマーケティング情報提供による付加価値提供などの提案を検討する価値がある。
[小売業]
経常利益DIは+11.0ポイントの改善だが、IT投資DIは-0.1ポイントとほぼ横ばいとなっている。経常利益の増加要因では「消費者の購買意欲が高まっている」が多く挙げられている。ただし、小売業は前回調査のDI値が非常に低かったこともあり、アベノミクスの効果よりも前回からの反動も大きく影響していると考えられる。給与改善に先行しての物価上昇などを懸念して、次の四半期に向けた経常利益DI見込みは-21.8ポイントと厳しい見通しとなっている。物価の上昇を価格に転嫁することが難しいため、IT投資減少要因としても「売上が低迷し、IT投資費用を捻出できない」が多く挙げられている。アベノミクスの効果が一般消費者の給与改善に結びつくまで、同業種のIT活用についてはやや厳しい状況が続く可能性がある。
[IT関連サービス業]
経常利益DIは+9.4ポイント、IT投資DIは+13.9.ポイントと大きく改善している。「企業の設備投資が増えている」といった経常利益増加要因を受け、自らの製品/サービスの開発に必要なIT投資を行っている状況といえる。ただし、次の四半期に向けた経常利益DI見込みは-13.8ポイントと厳しい見方を示しており、業態の拡大/転換や販路の確保/拡大を課題として挙げる回答が見られる。
[サービス業]
経常利益DIは-0.9ポイント、IT投資DIは-0.5ポイントと共に微減となっている。「新たなサービスが好調である」という企業は経常利益も増加しているが、IT投資の増加要因は「サポート期限切れのため、刷新が必要である」が多い状態に留まっている。
次の四半期に向けた経常利益DI見込みも+0.5ポイントと慎重である。現状維持志向を打破するためにも、ITソリューションを提供する側としては必要に応じてコンサルタントなどとも協調しながら、新たなサービス創出とそれに伴うIT活用を提案していくことが今後求められてくると予想される。


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株式会社ノークリサーチ
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