もっとも普及している「Flash」を支える4つの強み
パソコンユーザーの98%にリーチできるFlash。その高い普及率から多くのビジネスモデル、導入事例が存在する。Flashの高いシェアは「最大リーチ」「コンテンツ保護」「高画質」「ビジネスモデル」が支えているという。
パソコンユーザーの98%にリーチできるFlash
DMO(ダイナミックメディア)テクニカルエバンジェリスト
太田禎一氏
9月17日、ベルサール神保町においてCNETの主催による「ネットで考える、映像戦略」セミナーが開催された。このセミナーでは、効果的なマーケティングツールやビジネス戦略としての映像戦略について、主要プレイヤーがセッションを行った。最終回となる第4回は、アドビ システムズ株式会社 DMO(ダイナミックメディア)テクニカルエバンジェリストである太田禎一氏による講演「オンラインビデオビジネスの地殻変動 〜 hulu.com、BBC iPlayerが Flash Videoを採用する理由」の内容を紹介する。
太田氏は、オンラインビデオビジネスには「戦略」「コンテンツ」「技術」の3つの重要な要素があると述べ、特にコンテンツと技術が重要であるとした。これは、コンテンツが魅力的なものでないと見てもらえないし、CODECなどの技術の選択を誤るとビジネス全体が小さくなってしまうためだ。そして、ニールセン・オンラインによる動画サイトの統計を示した。これによると、動画サイトの上位10サイトすべてがFlashを採用している。またオンラインビデオ全体に占めるFlashの割合は、全世界で80%を占めるという。
Flashがこれだけ圧倒的なシェアを占めている理由として、太田氏は「最大リーチ」「コンテンツ保護」「高画質」「ビジネスモデル」の4点を挙げた。特に最大リーチ、つまりインターネットに接続しているパソコンにFlashプレーヤがインストールされている率は98.8%にもなる。「RIA Stats」という、ブラウザのプラグインシェアをモニターしているサイトでも、Flashは98%、Silverlightは約1/3という結果が出ており、これは同様のサイト「statowl.com」でもほぼ同じだ。また、IEしか利用できないサイトやサービスをFlashでクロスブラウザにするだけで、40%以上の商機拡大が可能というデータもある。
コンテンツ保護については、Flashは暗号化ストリーミングという手法を採用しており、パソコンのキャッシュにデータが残らない上に、経路も暗号化されているため途中でデータを抜き出しても再生することができない。高画質については、世界で最も視聴されているHDビデオが「YouTube HD」であり、これがFlashによるものだ。ビジネスモデルについては、すでに多くのモデルが存在している。その中でも、最も成功しているとされているのは、TV番組や映画を集約し無料配信している「Hulu」だという。
信頼されているFlashならではの豊富な事例
Huluは、広告ベースのビジネスモデルを採用している。公開されている動画に広告が差し込まれており、広告はスキップできないようになっている。その一方で、動画から任意の場面を切り出して外部サイトやブログ、SNSなどに貼り付けることができる。切り出したい場面のIN点とOUT点を指定するだけで、その埋め込みコードのHTMLが生成される。このようなサービスができるのも、動画の提供者がFlash Videoストリーミングを安全だと認めているためだという。Huluの月間利用者は3800万人、2008年10月での総転送量は17PB(ペタバイト)にも及ぶ。
PPVによるビデオの有料レンタルで成功しているのは、Amazonの「Video On Demand」だ。日本では提供されていないサービスだが、Amazonのサイト上でビデオを選び決済することで、そのままビデオを再生、閲覧できる。決済にはユーザー管理と課金システムを連動させており、暗号化ストリーミングによって配信する。ビデオの一部の暗号化を解除しておくことで視聴にも利用できる。また、BBCでは公共放送として、見逃した番組などを視聴できる「BBC iPlayer」を提供している。BBCの視聴料で運営されており、2007年12月にWindows MediaからFlash Videoストリーミングに切り替えたところ、ユーザー数が10倍に増加したという。ここではAdobe Airを利用したデスクトップダウンロードも提供しているほか、WiiやPS3での視聴にも対応している。
販売促進の例として、太田氏はソニーマーケティングのサイトを紹介した。ここでは、プレスリリースを自社メディアで配信している。同社はYouTubeにもチャンネルを持っているが、自社配信をすることでブランドコントロールやきめ細かい視聴分析が可能になる。Flashなので、ニュースメディアなどが動画をそのまま貼り付けて転載できるため、メーカーが伝えたいことを十全に伝えられるというメリットもある。このほか国内の採用例として、mixi Radio、第2日本テレビ、GIANTSストリーム、フジテレビOn Demand、テレ朝動画、BCH Playerなどが紹介された。国内外でこれだけ採用されているのは、Flashが動画配信に関するさまざまな懸念をすべて解決しているためであるとした。
最後に太田氏は、オンラインビジネスにおける最新のキーワードとその展望を紹介した。まずは「可変ビットレート」。国際配信やネットブック、携帯電話などに有効で、アドビでも「Dynamic Streaming」として利用しており「要注目」とした。また「Video SEO」については自社配信と投稿サービスで戦術が異なる、ビデオ内容のインデックス化技術が発展途上などの理由で「要注目」、「モバイルビデオ」については現状で容量や仕様がバラバラであるため「要注目」、「HTML5(Videoタグ)」はモバイル向けに期待ということで「様子見」、「HTTP Streaming、RTMP Streaming」は来る技術ではあるが現時点では「様子見」、テレビ向けの「Flash for Digital Home」はすでに始まっていることから「期待」、パソコン以外のスマートフォンなどに搭載する「Open Screen Project」も「期待」とした。
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