地元密着の不動産企業が挑戦した商習慣のシステム化—経験や勘までカバー

聞き手:江口ともみ、別井貴志 (編集部)2011年05月31日 10時00分

経験と勘の“見える化”を実現、スピード向上も実感

西武開発 経営企画室 室長補佐 
松永王将氏

江口 今、西武開発さんの現場で一番システムを見られているのは松永さんですね。今運用されていていかがでしょう。前のシステムと比べて…。

松永 前のシステムは、正直いってあまり使われていなかったのですが、今回のシステムは「こういう場面ではこういう使い方をしたい」というような、現場からの要望を入れて作っていったため活用は格段に広まっています。

別井 営業マンのインセンティブ処理も含めて、経理処理もスピードアップしたのでしょうか。

松永 そうですね。前のシステムは属人化していましたので、たとえばイレギュラーが発生すると、担当者が2日必要だといったら2日待たなければならなかった。しかし今はそれが解消されていますので、どのようなイレギュラーが発生しても1日以内で処理できています。

専務 また財務会計システムとも直結していますので、前のシステムに比べて格段に効果が上がったと思っています。データ処理の速さも含めて。社員も実際にスピードを体感して「こんなことならもっと早くやってくれれば良かった」(笑い)みたいな感じでした。

別井 その意味では、昔は人間が機械に使われていたのが、今は人間が機械を使うようになったということですね。

専務 そうですね。専任要員の削減も可能になりました。そのため、今までできなかった分野にその人間を回すこともできるようになりました。

CNET Japan編集長の解説:KitFit導入の効果
西武開発は都築電気の「KitFit」を導入し、(1)専任要員を2人削減、(2)月次締め作業が1週間程度から3日程度へ短縮、(3)システムのブラックボックス化を解消、という具体的な効果を達成している。またKitFitは富士通の会計パッケージ「GLOVIA smart」に標準連動しているため、業務処理から財務会計までの幅広い分野をカバーできた。

松永 それから情報の精度も向上しました。以前のシステムでは情報をあまり活用できていなかったこともあり、入力データの精度が低かったのです。でもあまり使わなかったので問題もなかったのですが(笑い)。そのため、今回はデータの移行作業が大変でしたが、情報の精度は格段に向上しました。

江口 今回システムを再構築して、仕事のやり方が変わったということもありますか。

専務 まず、社長が経験と勘で話していたことが、数字で裏付けが出るようになりました。本当に正しいんだなということが分かり、営業もイメージを持ちやすくなりました。

CNET Japan編集部
別井貴志

別井 社長の経験と勘が見える化された、ということですね。

専務 まさにそうですね。今度は数字と照らし合わせて経験と勘の根拠を示しながら、新しい営業スタイルを社員に浸透させていくことに役立たせてもらっています。

社長 不動産の営業の現場では、1対1の人間の関係での瞬発的な情報が多く、そしてそれが重要なのです。その点このシステムでは、「これはこのくらいの価格で売れるのではないか」とか「ここはちょっと広めに作っておいた方がよい」といったようなわれわれが永年の経験や勘でやっていたものを、新しい人たちが統計的に見ることができる。それが役に立つのですね。また、最近は時代の流れに合わせてお客様も変わり身が早いんですよ。考え方がコロコロ変わる。ですから、いつまでも勘と経験に頼っていたのでは商売のタイミングを失ってしまう。その意味でも導入して良かったと思っています。

デジタル情報をアナログに変換する仕組みが重要

江口 不動産業といいますと、かつては大量のチラシを見ながら物件を探すというスタイルが多かったと思うのですが、今はやはりインターネットですか。

専務 そうですね。インターネットで物件を検索する人が増えています。しかしインターネットは一方通行になりやすいのですよ。双方向のコミュニケーションが取りづらいのです。昔は、問い合わせは電話でしたのですぐにコミュニケーションが取れたわけです。インターネットでは、その一歩手前の情報は広く取りやすくなりはしましたが、直接コミュニケーションを取るまでには行かないわけです。そこで今は、メールでお客様の心を開くノウハウとか、インターネットで情報収集をしているお客様にどうやって現場にまで足を運んでいただけるかとか。入り口はインターネットでいいのですが、本物の情報はやはり現場に行かないと手に入らないですよというところをいかに発信していくかが重要ですね。

江口 確かにそうですね。単なる物件だけの情報ではなく、その物件のある街はどういうところなのかという情報が必要だと思います。

松永 それと、お客様ごとに家を探す条件は違いますので、検索で見つからないものがお客様の本来のニーズということがあるのですよ。しかしインターネットだと、どうしても価格や部屋の広さなどから入ってしまう。調べてみたら、問い合わせ物件をそのまま買っている人は1%しかなかったのです。つまり営業マンが1対1でコミュニケーションを取るうちに、検索条件とは違う新たなニーズがでてきて、そこから家探しが始まっているわけです。

江口 お話を伺っていると、社員一人一人がこの地域を盛り上げようと頑張ってらっしゃる様子がよく分かります。さて今後ですが、地元密着企業としての強みをさらに発揮するためどのような経営戦略を考えていますか。

社長 お客様と知り合うきっかけが、今はインターネットと紙媒体が半々という感じになってきましたが、この流れに営業がまだまだ追いついていません。そこで今後力を入れたいのは、インターネットのお客様を紙媒体のお客様と同じように接触できるところまで呼び寄せられるかですね。お客様とお会いしてから契約するまでのノウハウはありますので、インターネットのお客様といかにしてコミュニケーションを取るか、これがこれからの一番の課題だと思っています。

専務 不動産のお客様は、ものを見ないで買うことは決してないわけです。ですから、やっていることはアナログなんですよ。しかし、時代はデジタルですね。そこでデジタルをいかにアナログに変換するかという、いわゆるD/A変換の仕組みやサービスの強化が必要だと思っています。

別井 まだまだ新たな戦略をお持ちのようですね。

専務 仕組みはいろいろ考えています。たとえばお客様に会員登録していただいて、こちらからリコメンドをしたり、また物件を購入していただいたお客様に「本日上棟しました」などの情報を流したりして、購入していただいたあとの不安を払拭してもらうなど、いくつかの計画を持っています。

江口 これからも次々と新たな取り組みがありそうですね。楽しみです。本日はどうもありがとうございました。


(左から)都築電気システム統括部 山本秀樹氏、西武開発 経営企画室 室長補佐 松永王将氏、CNET Japan編集部 別井貴志、西武開発 専務取締役 田形宏太郎氏、西武開発 社長 田形幸満氏、江口ともみ氏

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