地元密着の不動産企業が挑戦した商習慣のシステム化—経験や勘までカバー

聞き手:江口ともみ、別井貴志 (編集部)2011年05月31日 10時00分
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不動産業は、永年の経験と勘がモノをいう、人のアナログな部分が大きな役目を果たす業界だ。埼玉および西東京を拠点に一戸建て・マンションの売買・仲介、分譲などを手がける西武開発も、「足でかせぐ」営業を地域で重ね、業績を伸ばしてきた不動産企業である。その同社が今、デジタル化の潮流に歩調を合わせ、アナログ的な経験や勘といった強みをITの活用でさらに強化しようとしている。その第一歩には、従来の基幹システムを完全リプレースするという、大胆な発想と取り組みがあった。

“よそ者”が創業した地元密着型企業

西武開発 社長 田形幸満氏

江口 まず会社の概要と、現在に至る沿革から教えて下さい。

田形幸満社長(以下、社長)  当社は、今から27年前の1984年8月に新所沢で創業しました。当初は埼玉を中心に事業を展開していましたが、その後2002年に東京の多摩地域にも進出、現在は埼玉で11店舗、東京に4店舗の合計15店舗で営業しています。社員数は約190名ですが、他にも建築関係や、「ぱど」という地域密着型の情報誌を西埼玉および多摩エリアで発行している関連会社などがあります。

江口 創業のビジョンといいますか、どのような会社を目指して立ち上げられたのでしょうか。

社長 実はこの会社は、「地元に役立ちたい」という私の個人的な思いからスタートしているのです。私は、大学は東京でしたが卒業して故郷の福岡に帰り、その後33歳の時にまた福岡から出てきたのです。そしてある不動産会社で営業をしていたのですが、いつもよそ者という意識があったのですね。業者さんのところに行っても「あぁ、君は福岡か」という感じで見られる。その反動もあって、ずっと地元で役立つ会社を作りたいと考えていたのです。社名を西武開発にしたのも、西武線沿線の地元の企業と勘違いしてくれるのではないかという思いがあったわけです(笑い)。

江口ともみ氏
タレント、東京都出身
装飾品協力:LANVIN COLLECTION(栄光時計)

江口 地元のことを思っているのによそ者と思われるという、その悔しさといいますか、そうした思いが会社創業の背景にあったのですね。

社長 そうです。以前は、建築関係は別の工務店に発注していたのですが、その後この分野にも手を広げることになったきっかけも地元に役立ちたいとの思いからでした。阪神・淡路大震災の惨状を見ているうちに、「自分のところで建築やリフォームまでできる体制にしていかないと、本当に地元の人に役立つ企業にはならない」と思ったのです。よそから来た人間ですので、不動産の仕事をするならなおさら地元の人に「良かった」、「助かった」と思われる企業にならなければならない、そんな意識が強かったのです。ですから社員採用でも、特に中途採用などは地元の人を優先しています。

江口 社長の地元意識は相当なものですね。

社長 一方で、地元を大切にすることにはメリットもあるのです。どういうわけか、不動産というだけで何か怪しげに見られることがあります。まじめにやっていても誤解されやすい。そのため、できるだけオープンにするためにも社員は地元の人の方がいいのです。その社員が人づてに情報を発信していくことができるし、そうした情報の方が信頼されやすい。同時に、友人やご家族にも、私どもの営業の範囲を広げることもできるわけです。ですから現在は、西武開発が手掛ける不動産業から、関連会社が担っている建築、リフォーム、情報誌まで地元の人間を中心にやっています。でも、社長だけはいつまでもよそ者ということで…(笑い)。

業界特有の商習慣をカバーするシステム

江口 今伺った地元密着型は御社のひとつの戦略だと思うのですが、一方で不動産業は多くの情報を多くの人に提供しなければいけないわけですね。そういった面で、情報戦略についてはどのようにお考えでしょうか。

社長 私はもともと、ITとはまったく無縁の男でした。ですから、最初にシステムを導入したときも、自分たちのやっていることを記録するだけという感じで取り組んだのですよ。まだ5~6店舗の時でしたが、いま考えると後追いのシステムであったこともあり、実際にはあまり活用していなかったですね。今考えると、使いづらい、いわばガチガチのシステムができてしまったわけです。そこで私から、将来25店舗くらいに拡大しても使える、そして経理業務とも連携する使いやすいシステムに作り替えるよう、専務に指示しました。

CNET Japan編集長の解説:西武開発の旧システムと新システム
西武開発が最初に導入したのは、独自のハードウェアをベースに、手組でプログラムを作り込んだシステムだった。そのため、専門の担当者以外には使いづらいシステムとなっていたが、それを2009年に、都築電気の不動産業向けソリューションにリプレースした。業務アプリケーションサーバ、業務データベースサーバ、給与/会計サーバ、連結会計サーバ、ファイルサーバーなどの役割を担う10台のPCサーバPRIMERGYと、200台あまりのクライアントPCが業務を支えている。

西武開発 専務取締役 田形宏太郎氏

江口 専務はまずどのようなことを考えましたか。

田形宏太郎専務(以下、専務) 以前のシステムは、紙ベースのものをコンピュータの中に記録として落としたようなもので、その情報を引っぱり出しても、専門的な知識がないと使いこなせないシステムでした。そこで新システムでは、欲しい情報を簡単に抽出し、そのデータを活用して的確に判断できるようなものを作りたいと考えました。

江口 現場からはどのような反応が?

専務 新しいシステムを入れるときはどうしても「昔の方が良かった」というような、回顧主義に陥ってしまうものです。そこで今回は過去の失敗を繰り返さないように、各部門から人を出させて、現場の使い手の立場を考えて開発することにしました。これは結果的に、各部門にも新しいシステムに対する責任感を植え付けることにもなりました。

江口 そこで都築電気さんのソリューションを導入したわけですね。その経緯は?

専務 最初はいろいろな会社さんにお声がけをしましたが、どうしても私どもの不動産業界というのは一般の人には分かりづらいところがあるのですね。特有の商習慣があるからです。たとえば、営業マンは売上に応じてインセンティブがあるとか…。仲介手数料についても仲介の物件に関しては発生しますが、自社物件ではお客様には発生しません。しかし営業マンのインセンティブに関しては、この場合も仲介手数料を換算して反映させていくというような独特の経理処理があります。こうした仕組みを分かってくれる会社さんがなかなかいないのです。その点、都築電気さんは不動産業界に実績があり、業界用語も理解されているので話がスムーズに進みました。一番熱心に働きかけてくれたということもあります。

都築電気 システム統括部
山本秀樹氏

江口 都築電気さんの方は、いかがでしたか。西武開発さんのシステムは作りやすかったのでしょうか。

山本 各部門のキーになるような方にご参画いただいて、みんなで作り上げていきましたが、非常にやりやすかったですね。 私自身20年間くらいこの不動産業界を担当していますが、今回は非常にスムーズに仕事を進めることができました。

江口 具体的に、システムにはどのような特徴があるのでしょうか。

山本 もともと、不動産業界は各社独自のやり方があって、なかなかパッケージが入りづらいところがあります。そのため、西武開発さんも最初は手組みのシステムを作られたのだと思います。しかし、これはどうしても担当者以外は分かりづらいシステムになりがちです。そこで当社のセミオーダー型の「KitFit」というソリューションを提案しました。お客様の要望通りに作り上げる、財務会計など他のシステムにもスムーズにつなげることが可能です。

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