東京の良心をさりげなく感じるそば屋におでかけ ~神田須田町「神田まつや」~ - マスヒロのちょっと食散歩

CNET Japan Ad Special2013年02月08日 11時00分

名店を求めて、ちょっとそこまで食散歩――。
料理評論家・山本益博さんが、関東近郊の食の名店と、その土地ならではのお土産を紹介する本シリーズ。秋葉原編として、特別編を全4回CNET Japanにも連載します。
特別編第1回となる今回は、東京の良心をさりげなく感じるそば屋、神田須田町「神田まつや」を訪れました。

東京の良心をさりげなく感じる

「神田まつや」
「神田まつや」

 私はこのそば屋の佇(たたず)まいと雰囲気が大のお気に入りです。風格を感じさせる店構え、それでいて威風堂々ではなく、町に馴染(なじ)んだ品格を漂わせ、店の前を通るとつい吸い寄せられてしまう玄関に下町ならではの風情があります。

 その玄関の扉を開けて店に入ると、大広間ですべて入れ込み式のテーブルが並んでいます。相席の所帯ですが、そこは東京の節度あるお客さんが自分の領分をしっかり自覚して、人の領域まで侵入してきません。そば屋のようでいてそば屋でなく、居酒屋のようでいて居酒屋でない、東京の良心をさりげなく感じさせる飲食店なのですね。

冬ならではの御馳走「鴨南ばん」

もり もり  ※クリックすると拡大画像が見られます

 もちろん、そばを手繰る客がほとんどですが、昼からそば前に一杯やる年配の客が自分のいつもの席らしき場所で静かに憩いの時間を楽しんでいます。二人客は酒を酌み交わしながら、話がつきません。一人客にはこのさんざめきも酒の肴になっているのでしょうね。にぎやかなのに騒々しくないんです。

 このざわめきに身を寄せて、まず注文するのが「岡本のうに」と「菊正宗」のぬる燗(かん)です。とろりとした雲丹(うに)をなめながら、ちびりちびり飲む酒の美味さよ!

 もちろん、酒についてくるそばみそでも「菊正」はいくらでもいけてしまいます。

 そば前の時間を楽しんだら、「もり」を注文します。かつては徳利(とっくり)と猪口(ちょこ)がセットになっていたはずですが、そばつゆを注ぎ足し注ぎ足し使わずに、いきなり猪口につゆを全部注いでしまう客ばかりになってしまったので、猪口のみになってしまいました。

鴨南ばん 鴨南ばん  ※クリックすると拡大画像が見られます

 私にはつゆが多すぎるので、少なめにお願いします。それでないと、そばを手繰りにくいのですね。

 「手繰る」は両の手を互い違いに使うことですが、右手の箸でそばを持ちあげたとき、左手の猪口はそばを受けようと下にさがります。そのあと、すぐにそばを受けるために猪口を上げなくてならないのですが、そばつゆがたっぷりと入っていると、つゆがこぼれそうで猪口を上下に動かしにくいんですね。それから、薬味の刻んだねぎはそば湯でいただくときに使うとして、そばを手繰るときにはつゆに入れません。

 もりそば一枚ではお腹がくちくならないので、冬ならば「鴨南ばん」です。合鴨のロースが3枚とつくね、それに葱が添えてあります。つくねの美味しいこと、葱の溶けるほど甘いこと、冬ならではの御馳走ですね。

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