新野: 続いては、クラウドに取り組む際に乗り越えるべき課題とは何かについてうかがいます。クラウドは安価なため部門ごとの契約もあり得る場合、社内統制上の問題は感じているでしょうか。
田井: 当社コニカミノルタホールディングスでは、クラウドを使いたいという希望があれば、評価シートに従って事業者がサービス内容を書き込んで申請してもらいます。それを審査した上で、契約内容を変更してもらったり、類似のサービスに変更してもらったりすることもあります。国内だけで60サービス程度利用しているので、どれかに当てはまることも多いのです。
新野: あえてうかがいますが、どんな業者が審査で不可になるのでしょうか。
田井: まあ、大手クラウドベンダーなら大抵は(審査に)通ります(笑)。業者というよりは、社外に出してはならないデータが対象になっていたり、利用期間が不明確だったりすると却下することもあります。長くても、2~3年程度で見直しをかけます。
髙原: ローソンでは、エンタープライズで利用するクラウドは情報システム部門で決めますが、部門単位で小規模なサイトを作るとかASPを使うケースは頻繁にあるので、当社も社内ルールに従い診断チェックリストを業者に書き込んでもらって申請をしてもらいます。
新野: 事前申請だけでは、セキュリティ上の細かい中身まで見えにくいのではないでしょうか。
髙原: チェックリストを回収する際に、技術的資料も提示してもらうようにはしています。
田井: あとは信頼関係でしょうか。あまり慎重になりすぎても利便性が損なわれますので、リスクを知った上で技術を活用するという難しい部分ですね。出せるものと出せないものを明確にすることが重要でしょう。
渋谷: そういう意味では、ゼンリンの現在のガバナンス上ではクラウドの活用は難しいかもしれません。クラウドを各部門で利用するための申請ルールやチェック項目はまだ整備してませんし、サービスを情報システム部門側管理するための仕掛け作りも必要になります。業務全体のバランスを考えて対応する必要があると感じています。
CNET Japanでは、会員読者854人を対象に「クラウドの業務利用に関するアンケート(重視・懸念する点)」を2012年9月に実施した。その中で、業務システムをクラウド環境(IaaS)に移行する場合、クラウド事業者の選定で重視する点について、「トータルコストが低い」(61.7%)、「運用コストが低い」(52.6%)、「自社で資産を持つ必要がない」(35.8%)がトップ3となり、稼働後のコストに着目している傾向が明らかとなった。
また、クラウドサービス(IaaS)に対する不安・懸念点に関する質問に対しては、「社外サービスのセキュリティレベルがわからない」(56.4%)、「自社以外のデータセンターに自社情報を保管すること」(40.0%)などのセキュリティに関する不安を挙げる一方で、「サービス提供業者の事業停止や倒産」(45.3%)といったベンダーの事業継続リスクにも懸念を示す回答も多かった。
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