企業のクラウド導入の現状と課題とは? 今後のITインフラのあり方の今後を考える座談会(前編)

CNET Japan Ad Special2012年12月03日 11時00分

クラウドで重視されるのはコスト削減かスピードか

新野: ところで、まだPaaSについての話題が出ていませんが、皆さん、あまり興味はないのでしょうか。

田井: いや、そんなことはありません(笑)。サービスを提供する形ではけっこう使っていますよ。将来サービスがどれほどの規模で拡大していくか見えない場合は、自前でシステムを構築していたら大変ですしね。

 例えば、複合機の稼働状況を把握してコンサルティングする代理店向けのサービスなどです。このソフトウェア自体は当社が開発しましたが、それを載せる基盤はPaaSを使っています。このサービス自体が拡大するかどうかが見極められないので、利用状況に応じて、すぐに変えられる気軽さは便利です。

髙原: ローソンでも検討してはいるのですが、さまざまなPaaSが登場している中で、成功例や失敗例の話を両方聞きますし、当社のビジネスのどこにポイントを置いて利用すべきか、事例収集や一部サービスを利用したり、大規模に拡大していくかどうかを比較検討している段階です。

渋谷: ゼンリンも同様です。地図データの上にプローブ情報を載せて人の動きを見るようなサービスでは、データがどこからどのように飛んでくるか予測がつきません。そもそも全データをアーカイブしていくととんでもない量になってしまいます。それを自社で保有するのは現実的ではないため、PaaSを利用して対応することが必要になると考えています。

 CNET Japanが会員読者854件2012年9月に実施した「クラウドの業務利用に関するアンケート(現在の利用状況)」によると、CNET IDを持つ会員読者854件のうち、クラウドサービスを「本番環境で利用中」と応えた割合は全体の36.4%となり、現在利用に向けて「検証中」なのは7.9%、「利用すべく検討中」は13.6%、「今後検討予定」は23.4%となった。8割超はクラウド利用に前向きという傾向が明らかとなった。
 また、利用中(利用検討中)のクラウドサービスについては、「パブリッククラウド(IaaS)」が21.5%、「プライベートクラウド(IaaS、自社所有型)」が20.8%、「SaaS型サービス」が15.3%という回答だった。

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新野: 次の話題は、クラウドで提供される価値をどのように考えているのかについて議論を深めてみたいと思います。クラウドで重視されるのはコスト削減か、スピードか、それとも生産性向上でしょうか。

田井: コストかスピードかを選ぶのは難しいのですね。あえて選ぶとしたらコストでしょうか。現在、ERPをクラウドで立ち上げようとしていますが、自前で構築すると半年以上かかるところを短期間で可能になり、スケーラビリティが未知数なのでコストはミニマムからスタートしています。オンプレミスでERPを立ち上げた場合に比べて、圧倒的にコストは安く済みそうです。

新野: 確かにイニシャルコストは安いかもしれませんが、ERPのように利用するユーザーも限られ、ソフトウェアの用途も限定されているものを5~10年というスパンで考えた時はどうでしょうか。

田井: 10年という長さでは考えません。コントラクトを2~3年で見たいというのが当社の方針です。テクノロジーの進化は非常に早く、10年にわたって特定技術にロックインするメリットはありません。2011年までは、24時間/365日稼働するシステムはオンプレミスの方が安いというのが業界の常識でした。しかし、今年になって、少なくとも海外ではクラウドが逆転しています。また、DR(災害復旧)強化の面でメールシステムを海外のプライベートクラウドに移す計画もあります。

新野: コニカミノルタホールディングスさんはかなりクラウドに積極的な印象を受けますが、実際はどのように切り分けをしているのでしょうか。

田井: 全社会計システムは外部に出すつもりはありませんし、技術情報や開発情報などの企業のコアコンピタンスに関わる情報はクラウド化するつもりはありません。

髙原: ローソンも店舗系システムやバックオフィス系システムなど様々なシステムが24時間フル稼働しています。そのフル稼働しているシステムを無理矢理クラウドにしようとは考えていません。更新のタイミングで会社の投資計画を考えながら、ビッグバン導入にならように、社会インフラレベルでクリティカルなのか、また、分析など情報系なのか、システムの重要度によってオンプレミスかクラウドかを判断することになります。

座談会はまだまだ続く。
後半ではクラウドに取り組む際に乗り越えるべき課題や、クラウドに対する期待などについて議論を深めた。(近日公開)

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