イノベーション創出とグローバル化をめざす企業が知っておくべき誤解と真実――ITで解決する課題

CNET Japan Ad Special2015年03月17日 15時00分
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※右から

早稲田大学ビジネススクール准教授 入山章栄氏

日立ソリューションズ
営業統括本部 ハイブリッドインテグレーションセンタ
プロダクト戦略部 担当部長
 増井章二氏

日立ソリューションズ
営業統括本部 ハイブリッドインテグレーションセンタ
プロダクト戦略部 部長代理
 松本匡孝氏

イノベーション創出とグローバル化をめざす企業にとって重要なこと

――近年、「グローバル化」をビジネス戦略とする企業が増加しています。世界市場でビジネスをする際に、留意すべきポイントは何でしょうか。

入山氏:最初に「グローバル化とは何か」を考える必要があります。「グローバル化」と聞くと、「世界中の国々がフラット化し、1つの巨大な市場のなかでボーダーレスにビジネスが行われている」と思い込みがちです。しかし、これは間違った認識です。各国のGDPや貿易統計などを冷静にデータ分析していくと、「世界経済の一国化」にはほど遠い、国ごとの差異が存在する「セミ・グローバル」な状況にあることがわかります。


 元ハーバード大学ビジネススクール教授のバンカジュ・ゲマワット氏は、企業がグローバル化するメリットは、「各国への適応(Adaptation)」「国の違いを生かした裁定(Arbitrage)」「特定の国への集積(Agglomeration)」であるとのフレームワーク(AAA戦略)を提唱しました。これは先のセミ・グローバルの前提に立ち、企業がグローバル経営戦略を立案する場合には、国ごとの差異を把握し、そのうえで適切なアプローチをとることが有益であるとの考え方です。

 海外進出をしている企業がグローバルなビジネスモデルを立案する際には、各地域の事情を考慮し、チャンス要因だけでなくリスク要因も念頭に置かなければなりません。また同時に、国・地域の差異を生かすことがビジネスチャンスになるのです。

松本氏:まさに入山先生のおっしゃる中の「Adaptation」の観点になると思いますが、ビジネスモデルを他地域で展開するためには、現地のパートナーや国内外の関係者と密にコミュニケーションを行い、情報共有することが重要だと思います。過去においては、「現地パートナーは他社」という扱いで、密な情報共有を行わず、想定した成果を得られなかった例もありました。

 ビジネスの背景には必ずコミュニケーションが行われており、我々は情報共有を活性化することがグローバル戦略に欠かせない要素だと考えています。


※クリックすると拡大画像が見られます

入山氏:おっしゃる通り、企業にとって情報共有の活性化は最重要課題です。注目すべきは「トランザクティブ・メモリー」という考え方です。これはハーバード大学の社会心理学者であるダニエル・ウェグナー氏が提唱した組織学習に関する概念で、組織で重要なのは「メンバー全員が同じことを知っている」ことではなく、「組織の中で誰が何を知っているかを知っている」ことであるとの考え方です。そのためには「誰が何を知っているか」を可視化する「知のインデックスカード」を作成する仕組みを、組織内に整備する必要があります。

松本氏:まさに、組織が大きくなると「どこで誰が何をやっているか分からない」という課題を抱えます。特に製品ごとに組織を縦割りにしている企業はなおさらです。そこで我々が考えたのは、日々の業務を行う上で行われるコミュニケーションの基盤にSNSの発想を取り入れることで、「各従業員が持つ知識が自然な形で可視化される」環境の構築です。

増井氏:例えば、問題が発生したときに、SNSで複数のスタッフが自分の知識を出し合って解決にあたれば、それは集合知になります。また、個々のスタッフが「どんな知識を持っているのか」も詳らかになります。こうしてSNS上に集められた情報は「知のインデックスカード」となり、組織として知識が蓄積されるんですね。これは組織にとって財産となります。


入山氏:「トランザクティブ・メモリーの高い組織・チームのほうが、パフォーマンスがよい」というのは、経営学の研究でも報告されています。「誰がどんな専門知識を持っているか」の情報を共有することで、組織内での専門知識の掛け合わせができる。ここにイノベーションが生まれるのです。

イノベーションの創出は「幅広い知の探索」と「既存の知の深化」のバランス

松本氏:入山先生は、「イノベーションを創出するために必要なのは『両利きの経営』である」と説かれています。具体的にどのようなものでしょうか。

入山氏:イノベーションとは「新しい知」を生み出すことです。そのためには、知の範囲を横に広げ、多様性の中から知識を収集する「幅広い知の探索」と、自らの専門領域を深く究めていく「既存の知の深化」の両方を追求する経営戦略が不可欠です。

松本氏:「新しい知」は自分の持っている知識や考え方と異なる人々とのコミュニケーションによって生まれます。そのためには「知のインデックスカード」が重要なのですね。

入山氏:そのとおりです。イノベーションとはゼロからまったく新しいアイデアを創造すると考えがちですが、そうした機会は少ないでしょう。既存知と既存知を組み合わせて「新しい知」を生み出し、そしてそれがビジネスチャンスになると確信したときに深化させること。組織を活性化し、継続的にイノベーションを創出するためには、この「知の探索」と「知の深化」のバランスが重要なのです。

 ただし、注意したいのは「コンピテンシー・トラップ」に陥ってしまうことです。知の探索には時間も手間もかかります。そうなると、知の深化だけに偏ってしまい、イノベーションの原則を失ってしまいます。

松本氏:まさに私達がめざしているのもそれです。

 日本にはすばらしい技術力を持っている企業は多い。ですから、知識も蓄積されているはずなのですが、現状多くの企業は組織内ですら知識の探索ができていないことがあります。我々はこうした課題に対して、企業内はもちろんですがパートナー企業やお客様とのコミュニケーションを通じて知識の交換を実現し、イノベーションの創出に役立ててもらいたいと考えています。

入山氏:企業にとって「知の探索」を支援する有用な手段は、「オープンイノベーション」です。これは、企業間でパートナーシップを締結し、お互いが持つ技術や知識を共有して、知の探索範囲を拡大しようという考えです。実際、欧米の多くのイノベーション企業は、異なる技術を持った企業とアライアンスを組み、継続的なイノベーションの創出に努めています。

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