スマートフォンの普及によって急成長するモバイル広告市場には、広告主の熱い視線が集まっている。2011年春頃からスマートフォンにフォーカスしたプロモーション展開が増えており、グーグルの国内市場調査では今後3年間でスマートフォン広告の展開を予定する企業が41%を占めた。広告主から見た「 AdMob 」について、モバイル広告営業部で代理店営業を統括する藤沢聡明氏に聞いた。先進的な AdMob 活用の事例とその効果も紹介したい。
スマートフォン広告は、従来のモバイル広告と比較して優れた広告効果を持っている。複数の大規模スマートフォンキャンペーンで効果検証したところ、広告理解度、検索意欲、情報発信意欲、購入利用意欲の上昇が確認されたという。そして Google は AdMob の活用を通じ、その効力を最大限に発揮するノウハウの蓄積を進めている。
藤沢氏はスマートフォン広告が広告主の強い注目を集める理由として、「タッチパネル、アプリケーション、カスタマイズ、HTML5、ネット環境の充実、端末の高性能化、参加型 SNS / CGM / Video というスマートフォンの7つの特徴が起因している」と話す。
タッチパネルになったことでユーザエクスペリエンスは飛躍的に向上し、リッチな表現を可能にするHTML5などが、スマートフォン広告の訴求効果を高めているのだ。象徴的な例として以下に紹介するのは、ハイエンドデバイスに向けて行われた2つの AdMob キャンペーンだ。
2010年末にリリースされた Android 端末 IS03 のキャンペーン「 Android au プチプチアース」は、ユーザ参加型ゲームを通じてブランドの先進性や世界観を伝えることを目的に実施された。HTML5で構築したウェブサイトに広がる地図。それに覆いかぶさる無数の「プチプチ」をタップする事で潰し、潰した数をユーザ同士が競い合うゲーム性のあるコンテンツだ。商品ページへのリンク、潰したプチプチ数の Twitter での共有などに加え、ウェブサイトをホーム画面に追加する「 Add to Home 」のリンクなどが用意された。ホーム画面に追加してもらうことで常設コンテンツとなれば、ブランドとユーザとの接触回数を格段に増加させることが可能だ。
スマートフォン特有のGPS機能を活用したのは「 Nissan LEAF 」のキャンペーンだ。
製品のコンセプトを体感、共有してもらうだけでなく、試乗や情報収集等の購買行動を促すことを狙った。画面をこすって LEAF を充電すると、テーマ設定されたドライビングコースを充電した分だけ楽しむことができる。興味を持ったユーザには、試乗申し込み、メルマガへの登録、 Twitter と Facebook でのドライビングコースの共有といったメニューを用意した。
2つの事例は、スマートフォン広告がユーザと接触後のアクションの喚起にまで効果を発揮することを示している。
藤沢氏はスマートフォンキャンペーンにおける成功の秘訣について、「シンプルなつくりで、一目で何ができるのかがわかるようにすること」、「ユーザを巻き込むインタラクティブ性、ゲーム性」、「PCと異なるスマートフォンならではのユーザビリティに注意すること」と指摘する。
従来のモバイルではできなかったコンテンツを構築し、ユーザとのエンゲージメントを深めることがポイントになるのだ。
また au の事例にあるホームボタンへの追加も抑えておきたい。コンテンツ展開をクロスプラットフォームで行う場合、端末ごとにアプリを開発するのではなく、スマートフォンに最適化されたHTML5のウェブサイトが利用されるケースが多い。ウェブサイトでもホーム画面に追加できるようにしておくことで、アプリケーション的に繰り返し楽しんでもらうことが可能になる。ホーム画面への常設を狙うのは、今までになかった効果的な広告手段だ。
今後も右肩上がりの成長が予測されるモバイル広告市場( eMarketer )。一層多くのクライアントが投資意欲を増していくだろう。 AdMob では今後、多様多種なブランドを持つ広告主のため広告配信のバンドルに注力していくという。 Twitter や Facebook 関連のアプリケーションに絞って広告配信する「ソーシャルメディア・パッケージ」、ビジネスユーザが使用するウェブサイトやツールをバンドルした「ビジネス・パッケージ」、また10月以降には女性ユーザをターゲットにしたパッケージの提供も予定している。
広告主のモバイル広告市場への注目や需要の高まりは、アプリケーションの開発者にとって大きなビジネスチャンスを意味する。広告主が広告出稿するための、様々な分野の上質なアプリが求められるからだ。多くのナショナルブランドには既に決まったターゲットが存在する。適切なターゲットへのリーチを可能にし、かつブランドイメージを損なわない掲載媒体が必要なのだ。
次回は、アプリ開発者から見たモバイル広告活用のメリットについて解説する。
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