音の世界標準へ--DTSが導く新時代サラウンド【前編】

CNET Japan Ad Special2012年01月30日 14時00分

Blu-rayの音声規格として世界標準へ

 DVDからBlu-ray Discへと、パッケージメディアの主流が移ると、DTSは正式な音声規格としてBlu-ray Discに採用されることとなった。Blu-ray Discの時代となると、高音質でありながらエンコーディング作業がシンプルで分かりやすいDTSは、一気にシェアを伸ばしていった。現在米国ではBlu-ray Disc全体の84%、日本では映画Blu-ray Discの売り上げ枚数の90%以上がDTSサラウンドを採用しており、圧倒的なシェアを確保している。

 また、Blu-ray DiscになってDTSが新たに採用したのが「DTS-HD Master Audio(以下DTS-HD MA)」というロスレス規格。DVDで音が圧縮されていることは前述したが、その状態では録音した音の情報が再生時に失われてしまう。DTS-HD MAでも音声は圧縮して収録されるが、再生する時には記録時とまったく同じ音声データが再現できる。録音時と再生時で情報の欠落がない、つまり「ロスレス」サラウンドを可能にさせたのだ。

通常の圧縮方式(イメージ)
通常の圧縮方式(イメージ)
ロスレス方式(イメージ)
ロスレス方式(イメージ)

 DTSは、対応のプレーヤーやアンプを用意すれば再生が可能だ。DVD/Blu-ray Discプレーヤーを持っている人であれば、プレーヤーに描かれたDTSのロゴを見たことがあるのでは? 現在では、ほぼすべてのプレーヤーやAVアンプに採用されているほど、メジャーな規格となっている。また、ゲームやカーオーディオなど、再生できる機器の種類も続々と増えている。

DTSが核となる次世代の映像・音楽コンテンツの配信技術

 今やBlu-ray Discの標準規格となったDTSだが、すでにBlu-ray Disc以後の音響の世界へと、その目は向かっている。映像、音楽などのパッケージメディアは、乱暴な言い方かもしれないが、おそらくはBlu-ray Discが最後になるだろう。映像、音楽というエンターテイメントのメディアは今後間違いなく配信へとシフトしていくことになる。

 日本に住んでいるとあまり実感がわかないかもしれないがで、海外ではすでにパッケージメディアから映像配信へと大きく舵をきり始めている。そのわかりやすい例が、大手の映画会社や家電メーカーなど、20社以上が加盟した「Digital Entertainment Content Ecosystem(DECE)」で定めらた「UltraViolet(ウルトラバイオレット)」という規格だ。これは購入した映画などのソフトを、Blu-ray Discプレーヤーなど再生するハードを限定せず、PCやスマートフォンなどでも再生できるよう策定された最新の規格。

UltraVioletロゴマーク
UltraVioletロゴマーク

米国で発売されているUltraViolet対応のBlu-ray Discパッケージ。パッケージを開くとUltraVioletの説明書とコードが封入されている

 UltraViolet対応のBlu-ray DiscやDVDなどの市販パッケージを購入すると購入履歴を登録するコードが封入されており、ネット経由でこのコードを送付。するとネット上に自分が購入したソフトの履歴が記録される。記録されたソフトは、様々な機器で再生できるよう配信サービスが提供されるというもの。すでに米国で2011年秋から対応パッケージソフトが発売されており、75万人以上の会員を集めているという。

 次世代の主力と目される配信型サービスだが、映像を配信する時に一番の課題は何だろう? それは映像、音声をどれだけ効率的に圧縮できるかということだ。ネットで映像を見ていると、通信が混雑して切れてしまうことが頻繁にある。今後は回線が太くなることも重要だが、より効率的に圧縮した映像を載せることも重要になってくる。

 UltraVioletでは、音声の配信規格として、DTS-HD MA、DTS Digital Surroundなどを標準規格に採用。また「DTS Express」というさらに低いビットレートに最適化された規格も採用している。

 DTS Expressは、最大5.1chの再生ができるロービットレート技術。音声は固定データの転送方式で192~256kbpsまでをサポートしながら、帯域幅に合わせて最適化する「Fit-to-Stream」を採用している。スマートフォンなどへ配信するオーディオ技術としてもきわめて有効だ。

 これまでのBlu-ray DiscやDVDは、ディスクを購入して再生するには通常Blu-ray/DVDプレーヤーが必要で、プレーヤーのある場所でしか見ることができなかった。だが今やPCやスマートフォンなど、映像を見られるハードはたくさんある。UltraVioletはこうした身近な機器をプレーヤーとして使いたい、時間や場所に制限されるコンテンツを見たい、という消費者の要求に応えるサービスだ。今後、日本でもサービスが拡充していくことは充分に考えられる。

 DTSは、Blu-ray Discという現行の定番商品において標準規格として使用されている一方、UltraVioletのような次世代規格においてもすでに採用が決定されている。高音質というだけでなく、音の最新鋭装備としても選ばれている規格と言えるだろう。

 前編では、DTSの現状と最新の映像配信UltraVioletについてレポートした。後編では配信型に移行しつつあるエンターテインメントコンテンツの新しいハードとして注目されるPCやスマートフォンがDTS技術を用いることで、どう高音質化していくかについて紹介する。

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