一般的なクラウドストレージサービスの中心となっている機能は複数のデバイスでのファイルの同期と共有(Sync & Share)だ。自分のPCとクラウド間で常に同期をとりながら、いつでもどのデバイスからでも同じファイルを扱えるようにするといった機能である。当然ながらBoxもこの機能は提供しているが、その真価でもあるコラボレーション支援という見地から、この機能を積極的にはアピールすることはないという。というのも、Sync & Share機能は個人で使う分には非常に便利ではあるものの、複数人で使うとなると、同時に同期することによるネットワーク負荷の増大など、逆に利便性を欠いてしまうのだ。加えて問題となるのが、ローカル側でもファイルを保存することによる情報漏えいのリスクが高まる点だ。これでは社外で使用するPCやスマートデバイスが紛失・盗難してしまった場合、極めて深刻な事態に陥りかねない。
しかしBoxであれば、プレビュー機能によって、クラウド上のPDFやOfficeドキュメント、動画、CADなどの各種コンテンツを、デバイス側にダウンロードすることなく、ウェブやモバイルアプリケーションから確認したり、簡単にコメントをつけたりすることが可能となる。ビジネスでよく使われる120種類以上のファイル形式に対応しているため、アプリケーションのインストールやソフトウェアの有無を気にすることなく複数ユーザー間でコンテンツを活用できる。3DファイルやDICOMファイル(医療用画像)も簡単にプレビューできる。しかもデバイスに合わせて最適化されたフォーマットに変換して表示されるので、タブレットやスマートフォンからでも快適に閲覧できる。
さらに、これらの多様なファイルは、そのままフルテキスト検索をすることが可能だ。
「組織内の誰かが作成したコンテンツであっても検索の対象とできるため、知識やノウハウの共有が劇的に進展することでしょう」(古市氏)
Boxは容量無制限であるため、誰がどれだけ、どの種類のコンテンツを保存しても問題はない。そのため、使えば使い込むほど企業内で共有できる知識・ノウハウが蓄積されていき、コラボレーションに貢献することになる。
また、社外のユーザーを招待しても安全にコンテンツを共有できることから、組織の壁を超えたコラボレーションにも大いに寄与するのである。
Boxにはワークフロー機能が備わっており、レビューや承認など一般的なタスクを自動化する簡単なルール作成によって、業務における情報フローの改善が可能となっている。例えば、"100万円以上の契約書で、契約期限が1ヶ月以内に迫ったものは、まず課長に連絡し、続いて部長が確認。部長の承認を経た後に「承認済みフォルダ」に移動し、関係者全員に更新のお知らせメールを送る"──こうした一連のフローが自動化できる。フローの設定やタスクの割り当ては、直感的なインタフェースを備えた画面から、誰でも容易に行えるようになっている。
古市氏は言う。「このようにコラボレーション機能とワークフロー機能が連携することで、仕事のやり方を大きく変えることができます。Boxにより場所、容量、組織境界、デバイスといった様々な制約から解放され、ぜひワークスタイル変革を実現していただきたいと願っています」
Boxに預けられたコンテンツは、IT・物理の両面で徹底的なセキュリティ対策が施された自社運営のデータセンターで保護される。複数のデータセンター間では常に同期をとるなど冗長化が図られており、無停電電源およびバックアップシステムに加え、保管施設での火災/水害防止対策も講じられている。こうした高水準のセキュリティレベルのシステムを自社のみで導入しようとすれば莫大な費用が発生するが、クラウドサービスならではのメリットとして、費用はユーザー企業による"割り勘"となるため、コストを抑える点も魅力的だ。
オンプレミスのシステムの場合、本社のサーバー、支社のサーバー、そして個人のPCなど、情報が分散してしまうため守ることが難しいが、(PCと同期をしない)クラウドを使えばコンテンツが一箇所に集約されるため守りやすい。とはいえ、悪者ハッカーの標的になりやすい。ここでセキュリティと使い勝手を重視するBoxと、安さを売りにする他社との差が出てくる。他社が時々情報漏えいを起こすのに対し、Boxは完璧なセキュリティを実現し、これがBoxの大きな差別化要因となっている。
Boxを利用すると、ログによる管理性が他社サービスよりも格段と高まる。各コンテンツへの権限についても、アクセス、プレビュー、編集、ダウンロード、共有に関する詳細な権限を設定してコンテンツを保護することができる。また、セキュリティポリシーをクラウド上で自動化することも可能だ。最高レベルのセキュリティを求める企業には、Box Enterprise Key Management (EKM)という、顧客自身が暗号化キーを管理できるサービスも提供している。
Boxが提供する「Box Content API」を利用することで、ERPやCRMなど既存のシステムと連携し、統合されたカスタムアプリケーションを構築することが可能となる。APIは公開されており、連携のためのツールキットもオープンとなっているため、ニーズに応じて自由にカスタマイズが行えるようになっている。そのため世界中のデベロッパーによるBox Content APIを用いたアプリケーション開発が活発に行われている。現在、4万7000以上のデベロッパーが1200以上のアプリを開発しており、APIのコール数は月間17億5000万回に達しているという。
「これからの業務システムはベスト・オブ・ブリードの考え方(1ベンダーに全てを任せるのではなく、機能毎に最高のアプリケーションを組み合わせて使う)が主流となっていくことでしょう。そうなるとBoxのようなコンテンツプラットフォームの役割はより重要になると見ています」(古市氏)
Box Japanでは、グローバルなサービス展開と合わせて、今後、国内のソフトウェアベンダー、システムインテグレーター、通信事業者などとも積極的に協力していく構えだ。
「日本の質の高いお客様向けに開発したソリューションの中には世界が求めるサービスになりそうなものがあります。国内に数多く存在する優れたベンダーとコラボレーションしながら、日本発のイノベーションを世界に発信していきたいですね。そうなれば、日本企業の生産性向上に陰ながら貢献できるだろうと自負しています」と、古市氏は力強く語った。
世界でコラボレーション・プラットフォームを提供するBoxのこれからに注目したい。
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