Twitterの共同創業者でBlockの最高経営責任者(CEO)であるJack Dorsey氏は米国時間7月28日、新たなオープンソースの無料アプリ「Bitchat Mesh」(Bitchat)をAppleの「App Store」で公開した。Dorsey氏は7月上旬、X(旧Twitter)でこれを「週末のプロジェクト」として発表していた。
Bitchatをダウンロードすれば、友人や家族などの連絡先にすぐアクセスできる洗練されたメッセージアプリを使えると思うと当てが外れる。Bitchatは簡素な設計で、Bluetoothを使ってメッセージを送受信する。オープンソースである以上、誰でも脆弱性を探す目的でソースコードを検証できるが、サードパーティーの監査を受けるまで安全性には注意が必要だ。
このメッセージアプリをダウンロードする前に知っておくべき要点をまとめる。
Bitchatは連絡先や電話番号など従来の手段を使わない。インターネット接続もWi-Fiもモバイルデータも不要だ。代わりに、Bluetoothのメッシュネットワークを利用する。つまり、通信範囲内にある他の端末と接続してネットワークを作り、その端末がさらに別の端末とつながることで、通信範囲が広がっていく。
「Bitchatは、物理的に近くにある端末だけを用いてアドホックな通信ネットワークを作る。各端末はクライアントおよびサーバーとして機能し、ピアを自動的に発見し、複数ホップでメッセージを中継してネットワークの到達範囲を広げる」と、アプリのウェブサイトには書かれている。
このため、利用者が増えるほどネットワークは大きくなり、通常のBluetoothよりも長距離まで届く可能性がある。ただしメッシュルーター方式と同様、そのネットワークにいる相手としか通信できない。別の大陸にいる相手には送れないが、つながる利用者が十分に多ければ、数km離れた相手に届く可能性がある。
それでも一般的な意味の「つながる」とは少し違って、相手に招待を送るわけではない。アプリを開くと、画面右上に自分のネットワーク内の人数が表示される。筆者の環境ではその数は1だったが、それは自分の別の端末なので実質ゼロだ。自宅でBitchatをテストしたので、むしろ見知らぬ誰かがいなくてよかった。
この数字をタップすると、画面右側から接続中の相手の一覧が現れる。ここで相手の名前を選べば、メインチャットとは別に個別のメッセージを送れる。
ネットワーク内に他の利用者がいるときは、メインチャットで全員に向けたメッセージを送信できる。誰かが自分のネットワークに入ってきたときに通知するよう、設定することも可能だ。
現時点では、音楽フェスやパーティーなど大勢が集まる場で、身近な人と連絡を取り合う手段として便利に使えそうだ。利用者が十分に増えればネットワークはさらに広がり、活用できる場面は増える可能性がある。
Bitchatは機能面ではかなり簡素だが、メッセージを送る以外にできることもある。
相手の名前をタップすると、個別メッセージの送信、ブロックに加えて、hug(ハグ)やslap(平手打ち)を送る選択肢が出る。hugとslapはFacebookの「Poke」のようなもので、「誰々にハグした/平手打ちした」旨の文言がチャットに表示される以外、実質的な機能はない。
メッセージのスクリーンショットを撮ると、チャット内にそのことを知らせる通知がすぐに表示される。これは透明性の確保に役立つ機能だ。
これらの点を除くと、Bitchatは飾り気のないシンプルなメッセージアプリといえる。
Bitchatはオープンソースのため、脆弱性などの問題がないかを誰でもコードから検証できる。すでに少なくとも1件の脆弱性が報告され、Dorsey氏が対応した。セキュリティ研究者のAlex Radocea氏は7月のブログ記事で、アプリ内の認証の問題を指摘した。Dorsey氏はこれを受けてNoise Protocol Frameworkを実装した。Dorsey氏のホワイトペーパーによれば、このフレームワークは、エンドツーエンドで暗号化された「安全でプライベート、かつ検閲に耐性のある通信」を提供するという。
一方で、Dorsey氏はGitHubでアプリに関するセキュリティ警告も記載している。「このソフトウェアは外部のセキュリティレビューを受けておらず、脆弱性を含む可能性があり、記載されたセキュリティ目標を必ずしも満たしていない場合がある」「レビューが行われるまでは本番用途に使わないこと。レビューが行われるまで、そのセキュリティをいかなる形でも当てにしないこと」(同氏)
Bitchatはオープンソースだが、信頼できるサードパーティーのセキュリティ監査があれば、より安心して使えるものになるだろう。監査は万能ではないが、信頼と透明性の重要なシグナルになる。監査が行われるまでは、このアプリの安全性について慎重になるべきだ。
総括すると、このメッセージアプリは近くにいる相手と連絡を取り合うのに使えるが、どの程度安全かはサードパーティーの検証を経てから判断すべきだ。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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