ソニーが6月に発売したスマートフォン「Xperia 1 VII」で不具合騒動が起きている。
一部の製造スロットにおいて、製造工程の不備により基板が故障するという事例が発生。対象製品では再起動がかかる、電源が入らないことがあることがまれに発生するという。
対象製品については無償で交換するとのことだ。
なぜ、製造工程の不備が起きたのは明らかにされていないが、ネット上では「設計、製造を委託した会社が変わったのではないか」という指摘もあるようだ。
今回の騒動により、ソニー社内におけるXperia事業に対する目がさらに厳しくならないことを祈るばかりだ。正直言って、ソニーの中でもXperiaは厳しい立場に置かれている。
調査会社が発表するシェアを見ても、Xperiaのシェアは落ちている。MM総研の調べでは2024年度の出荷台数ではアップル、シャープ、サムスン電子、FCNT、Xiaomiとなっており、ソニーの名前は「その他」に含まれてしまっている。
かつてNTTドコモがGalaxyと共にXperiaを「ツートップ」として扱っていた頃の勢いは見る影もない。
そんななか、ソニーとしてもXperiaを立て直そうと奮起している。
もともとはソニーモバイルコミュニケーションズとして別会社であったが、2021年に他の家電事業会社と共にソニーに統合された。ソニーでは、デジカメ「α」の開発部隊と一体化されることで、カメラ性能で他社と差別化する方向性を目指していた。
ただ、このとき、αの操作性や使い勝手をできるだけ反映し、とことんマニアックなカメラアプリとなっていた感があった。
特に動画を撮影できる「Cinema Pro」は設定が難解で一度、色を変えると沼のようにもとの設定に戻すことは難しくなっていた。「Photo Pro」もαの操作性を再現したのが特徴だったが、実際、αを使っているユーザーでもとっつきにくく、一般的なユーザーにはさらに難解な操作画面となっており、本当にごく一部のユーザーにしか刺さらない撮影アプリとなってしまっていた。
しかし、その後、昨年発売したXperia 1 Ⅵではカメラアプリを刷新。複数あったカメラアプリを統合し、シンプルで使いやすくなるよう、大幅な見直しが行われたのだった。
「もともとソニーのプロ向け機材を使っている、限られた人向けのXperia」から「クリエイティブに興味のある、でもiPhoneじゃ満足できそうにない、ソニー製品の入門的な位置づけのXperia」へ舵を切ったのだ。
また、初代Xperia 1の頃から4Kディスプレイを搭載し続けることで「ソニーらしさ」をアピールしていた。5G時代の到来もあって、スマートフォンで4K動画を見るという習慣が出てくるかと思いきや、ほとんどのユーザーはYouTubeやTikTokで満足していた。
4Kディスプレイがオーバースペックであることにソニーとしても気がつき、Xperia 1 ⅥからはフルHD+にスペックダウン。結果として、バッテリー寿命を延ばすことに成功している。
また、製品ラインナップとしては、昨年、フラグシップとエントリーモデルの中間にあたるXperia 5シリーズをスキップしている。販売的には、Xperia 5シリーズを買っていたユーザーの多くがXperia 1 Ⅵを購入するという流れを作ることができ、ラインナップを減らしても、悪影響はあまりなかったという、ソニーとしての評価になったようだ。
まさに、Xperia事業を立て直している最中に今回の不具合騒動が起きてしまった。コストを抑えようという努力が、製造工程の不備につながってしまったのであれば、なんとも残念な限りだ。
Xperiaは、動画クリエイターの作品を尊重し、ディスプレイにパンチホールやノッチを絶対に作らないというポリシーを貫いている。また、音楽やゲームファンのために3.5mmのイヤホンジャックを頑なに残している。他のメーカーがBluetoothで代用がきくと、3.5mm端子をすぐに廃止したとは対照的なのだ。
さらに、長時間動画を撮影し続けても容量的に問題ないようにmicroSDカードスロットを残し続けている。そんなこだわりもあって、Xperiaは根強いファンに支えられている。
今回の不具合騒動を乗り越え、いままで以上にファンが広がるXperiaを作り続けてほしいと願うばかりだ。
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