人工知能(AI)技術を用いて制作された映画やドラマがNetflixに登場するのはいつなのだろうか。同社の最高経営責任者(CEO)であるTed Sarandos氏によれば、それはすでに実現している。
7月17日の決算発表後に開かれたオンライン会見で、Sarandos氏は質問に応じ、その1つはNetflixがいつ、どのようにAIツールを使ってコンテンツを生み出すのかというものだった。
意外にも、Sarandos氏はすでに実例があると述べた。アルゼンチン発のSFドラマ「エテルナウタ」で、ブエノスアイレスの建物崩壊シーンにおいて、Netflixの技術チームが制作陣と連携し、最終映像としてAI生成の映像素材を採用したという。
これはNetflixが自社制作の映画や番組で、生成AIを最終映像に用いた初のケースにあたるとSarandos氏は語った。
同氏は「AIは映画やシリーズのコストを下げるだけでなく、質を高めるための素晴らしい機会をクリエイターにもたらすと確信している」と述べ、「現実の人々が優れたツールを使って、現実の仕事をしている」とした。
同氏によれば、本作の予算では従来型のVFXツールやワークフローでは不可能だった映像を、AIのおかげで従来の約10倍の速さで完成させることができたという。「驚異的なスピードで素晴らしい成果を達成した」とSarandos氏は語った。
また、映画制作者らはプリビジュアライゼーションや撮影計画、若返りなどのVFXにもすでにAIを活用しているとも述べた。Netflixは今後もレコメンデーション機能など会員向けサービスの改善にAIを拡大していく計画だ。
「エテルナウタ」はすでにシーズン2の制作が決定しており、批評家からも好評を博している。
Netflixのこの発表は、新技術をいち早く取り入れてきたこれまでの姿勢と一致している。
「Netflixが『エテルナウタ』で最終映像に生成AIを用いたのは、ストリーミングからアルゴリズムによる推薦、インタラクティブコンテンツまで、新技術を早くに採用してきた実績を考えれば驚くことではない」と、KO Insights創設者で「What Matters Next」の著者、Kate O'Neill氏は米CNETに語った。O'Neill氏はかつてNetflix初のコンテンツマネージャーも務めていた。
「注目すべきは、CEOのTed Sarandos氏がそれをまるで当然の進化の一部かのように淡々と明かしたことであり、つまり同社がこれを大きな区切りではなく、自然な流れとして受け止めているということだ」とO'Neill氏は指摘する。
O'Neill氏は、AI技術の発展速度とストリーミング事業を取り巻く厳しいコスト競争を踏まえると、この手法が18~24カ月以内に業界標準になる可能性が高いと予測する。「技術の進展は、それを規制する法的・倫理的な枠組みよりも速い」と同氏は語る。
そうした倫理的・法的課題には、AIモデルがどのようなデータで訓練されているかや、著作権侵害の有無、俳優や職人およびVFXの専門家といった業界関係者への影響などが含まれる。
「AIは高度なVFXへのアクセスを広げる一方で、そうしたツールがどのように訓練され、既存の著作物を無断で利用していないかについて、透明性が求められる」とO'Neill氏は締めくくった。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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