仮想空間に再現された筆者の姿は驚くほどリアルで、3D化された写真は過去を今によみがえらせた。ウィジェットを仮想空間の壁や窓に貼り付ける体験ですら、筆者の予想をはるかに超えていた。
Appleが米国時間6月9日にWWDCで発表した新OS「visionOS 26」をさっそく体験した。最初に試したのは、自分の3Dアバター「Persona」の作成だ。Persona機能は以前から存在するが、ついにベータ段階を脱したことが正式に発表された。以前はPersonaを不気味で、こっけいにすら感じていたが、今回は違う。不安になるほど、リアルだ。
まるで自分自身を見ているように感じる。
強化されたPersonaは、2025年のWWDCで発表された、「Vision Pro」(3500ドル、日本では税込59万9800円)の新機能の1つにすぎない。他にもいくつか驚くべきアップデートがあった。例えば「iOS」でも利用できる「空間シーン」モードは、2D写真に奥行きを与えるもので、ヘッドセットで見ると、その臨場感に驚く。新しいウィジェットは仮想空間の壁に貼り付けるだけでなく、埋め込むこともできる。Apple本社で行われたデモでは、その自然さに驚かされた。仮想の窓に表示された東京のパノラマ写真は本物と見紛うほどで、窓から頭を突き出せば、そこに東京の風景が広がっているような気がした。
こうしたアップデートは、どれも革新的な変化とは言えないが、実際に試してみると、予想していたレベルをはるかに超えていた。Appleが基調講演で披露したデモは、新機能の真価を正しく伝えていなかった。やはり実際にヘッドセットをつけて体験してみなければ、そのインパクトはわからない。
残念ながら、Vision Proカメラに対応するAIに関しては、まだこれといった進展はない。この種のAIは、Googleが「Android XR」で実現しようとしているもので、筆者も体験できる日を楽しみにしている。とはいえ、Appleが今回Vision ProのAR/VRプラットフォームに追加した新機能の完成度の高さは、実際に体験してみると目を見張るものだった。このレベルのアップデートが続くなら、今後の展開には大いに期待が持てる。2026年、あるいは2027年にはもっと軽量で、もっと価格を抑えたVisionデバイスが登場するかもしれない。その頃にはカメラの情報を活用できるAIも搭載されているはずだ。
AppleはvisionOS 26において、Persona機能はベータ段階を脱したと発表した。実際、その進化は目覚ましい。PersonaはvisionOSが使用する3Dスキャンされたアバターで、徐々に改善されつつあったが、不気味な印象はぬぐえなかった。しかし最新のバージョンでは横顔も鮮明に表示できるようになり、「FaceTime」通話中は相手のPersonaが別のウィンドウではなく、部屋の中に表示されるようになった。
これまでのようにVision Proで自分をスキャンすると、良くも悪くも現実の自分に近いアバターが作成された。目の下のクマも、白髪交じりの髭も、自分によく似ている。メガネをかけた状態ではスキャンできないので、普段使っている度入りメガネはまだ使えない。しかし仮想メガネの選択肢は格段に広がり、さまざまなフレーム、色、素材、サイズから選べるようになった。この機能だけでも、将来Visionメガネのショッピングアプリが登場しそうな可能性を感じる。
表情にも違和感がない。すべてとは言わないが、いろいろな表情を試してみたところ、かなりの確率で再現できた。残念ながら手の描写はまだぼんやりしており、顔に近づけると消えてしまう。
サードパーティ製アプリでPersonaの動画を撮ってみたが、自分の特徴をかなりよく捉えていると感じた。他の人は、このPersonaを見て筆者本人だと思うだろうか。今後はVisionデバイスだけでなく、2DアプリなどでもPersonaを自分のアバターとして使えるようになるのではないかという考えが頭をよぎった。Personaはいずれ、iOSやMac全体に導入されるのかもしれない。
Vision Pro発表時の広告には、映画「マイノリティ・リポート」のように、思い出の写真を3Dで再現する場面があった。このビジョンが、ついに実現しつつある。これまでは2D写真を自動で3Dに変換するだけだったが、空間シーンは複数の視点から作成されるため、写真の中に入り込むような感覚を得られるようになった。
視野は広く、まるで博物館のジオラマをのぞき込むようだ。デモで見たシーンの中には、思わず息をのむようなものあった。空間シーンは、空間をまるごと撮影して3D化するボリュメトリックビデオとは別物だが、視点を動かすと周辺部のディテールがAIによって補完されるため、シーンが本当に目の前で展開されているように感じる。
映画「レディ・プレイヤー1」に、主人公のウェイドがハリデー記念館を訪れ、ジェームズ・ハリデーの3Dの記憶を眺めるシーンがある。ちょうど、そんな感じだ。ただ、対象は静止画像に限られる。
空間シーンはiOSにも対応しているが、正直なところ、没入感はヘッドセットに遠く及ばない。
ウィジェットを仮想空間の壁などに固定するデモも見た。仮想の部屋に入ると、あちこちにさまざまなウィジェットが表示されている。壁には音楽のポスターや写真、さらにカレンダーや時計のウィジェットもある。OSのアップデートにより、部屋のレイアウトを認識・記憶できるようになった。また、部屋に入るまで仮想オーバーレイを非表示にすることで、他の部屋の画面が壁から透けて見えることもなくなった。
ディスプレイやウィンドウを固定する機能は、他のヘッドセットやスマートグラス、アプリでも見たことがある。しかしvisionOS 26のウィジェットの完成度には驚かされた。Apple Musicのポスターはかなりリアルで、近づくと詳細が表示され、タップすると音楽が流れる。時計は本物の掛け時計のようだ。ウィジェットはなんと、壁に埋め込むこともできる。
パノラマウィンドウにはライブラリから写真を追加できる。カーブのついた白いパネルに写真が反射し、まるで本物の風景が広がっているようだ。3D効果は十分に説得力があり、実際にそこに行けるように感じる。近づくほど、リアリティは増した。
こうしたウィジェットを実際に使うかどうかはわからない。しかし複合現実(MR)の可能性をかつてないほど感じた。
それだけだけではない。「空間ブラウズ」モードを使えば、「Safari」で表示しているコンテンツを変換し、中の画像を3Dに自動変換できる。衛星から木星を眺める新しいインタラクティブ環境も追加され、時間の推移に合わせて木星が変化する様子を観察できるようになった。このインタラクティブ機能は他のVision 3D環境の背景にはまだ導入されていないが、いつか実装されることを期待したい。
Appleは他にも便利なアップデートを予定している。コラボレーションアプリを使えば、同じ部屋にいる他の人と一緒に作業ができるようになる。Personaとして仮想的に参加してもらうことも可能だ。今回は試せなかったが、「PlayStation VR2」コントローラーやサードパーティ製スタイラスなどの空間コントローラーにも対応する。この機能は2025年中に実装予定だ。今回使えなかったのは、関連アプリがまだ完成していないためだろう。
Visionが万人向けのフェイスマウント型コンピューターになるまでには、まだ長い道のりがありそうだ。しかし、visionOS 26のアップデートは予想以上に魅力的だった。AppleはMetaやGoogleといったAI分野に注力するライバルとは異なるアプローチで、新たな領域を切り拓こうとしている。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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