2023年の「Vision Pro」、2024年の「Apple Intelligence」に続き、2025年には何が登場するのだろうか。Appleは直近2回の開発者会議「WWDC」でAR/VRと生成AIという新たな分野に飛び込んだ。しかしVision ProとApple Intelligenceはいずれも立ち上がりが鈍く、批判も多かったため、6月9日に開催されるWWDC25の目玉は依然としてはっきりしない。
Appleは新たなカテゴリーへの大胆な進展を示すことを求められているが、今回はOSの再設計と既存の取り組みの段階的な改良に注力する可能性が高い。
WWDCは例年、Appleが先端的なアイデアを披露する場となっている。開発ツールの説明はもちろん、新しいOSバージョンのプレビューが公開され、「iPhone」「iPad」「Mac」などがどのように進化するかをいち早く示す場でもある。
新しい製品分野への再挑戦として、ディスプレイ付き「HomePod」が披露されるとの見方もあるが、現時点で最も有力なうわさは、複数のOSに及ぶデザイン刷新と名称変更だ。これは、発表できる優れたAIの新機能がないという事実から注意をそらすApple流の方策かもしれない。
BloombergのMark Gurman氏によると、Appleは長年用いてきた番号付けをやめ、西暦の下2桁を冠した名称に切り替えるという。「iOS 19」ではなく「iOS 26」、さらに他のOSも「iPadOS 26」「macOS 26」「watchOS 26」「tvOS 26」「visionOS 26」となる見込みだ。サムスンも2020年に同様の変更を行い、「Galaxy S10」の後継機が一気に「Galaxy S20」になった。
複数のデバイスカテゴリーでApple製品の名称に含まれる数字がどんどん大きくなり、分かりづらく感じられる。新たな方式により、自分が最新バージョンを使っているかを把握しやすくなるだろう。
WWDCの招待状に描かれた霞んだ透明のリングは、ソフトウェア全体における新たな「ガラス」風のデザインを示唆しているようだ。Gurman氏はこれを劇的な刷新と表現し、近年最大規模だと報じた。そのデザインはVision ProのvisionOSに似て、フロストガラスのようなパネルや透明なレイヤー、円形のアイコンが多用されるという。Front Page TechのJon Prosser氏が情報源に基づき示したプレビューも、確かにvisionOS風だ。
見た目だけでなく、OS同士の機能もさらに近づくのだろうか。特にiPadOSとmacOSがどこまで融合するかが気になる。iPadはマルチタスク用の「ステージマネージャ」などでPC的な動作を強化してきたが、最終的には「MacBook」に近い体験を提供する流れが不可避であるように感じられる。
Apple Intelligenceが未対応の代表的デバイスである「Apple Watch」にもAIが導入される見通しだ。次期watchOSではメッセージ要約や翻訳、メッセージ作成支援のほか、ヘルスケアとフィットネスの強化が期待される。Appleは「ヘルスケア」アプリのデータに生成AIによるインサイトを追加し、2026年を目標に医療サービスとしてのAI活用も検討中と報じられている。ヘルスケアアプリにも「Apple Fitness」同様の有料サブスクリプションが加わる可能性がある。
Gurman氏はAppleがAIでバッテリー持続時間を改善する見込みだと報じた。対象はiPhoneだが、Apple Watchにも及ぶことを願いたい。iPadやMacのバッテリーは概ね良好だが、どのデバイスでも長持ちするに越したことはない。Appleは従来から段階的にバッテリー機能を強化してきたが、今回はより有能な省電力モードが導入されるかもしれない。
「Nintendo Switch 2」の登場に合わせ、Appleはゲームの重要性を再度押し出すかもしれない。Bloombergによれば、「Apple Arcade」などを統合する新アプリでゲームとサービスを一元管理し、「Game Center」を刷新するという。「Backbone」などのゲームコントローラー向けアプリが既に似た機能を備えているが、Apple純正の統合ハブは理にかなう。Appleは初のゲームスタジオとして、「Sneaky Sasquatch」開発元のRAC7を買収済みだ。
VRゲームについても、以前の報道どおりなら「PlayStation VR2」のコントローラーがVision Proに対応するかもしれない。AppleのVR/ARヘッドセット向けにゲームを強化する狙いだ。同社は2026年に廉価版Vision Proを投入する計画だとされる中、開発者を取り込む狙いもあるとみられる。Vision Proはゲーム分野においては、より安価なMetaの「Quest」ヘッドセットに対抗できていない。
2024年、Appleは企業の開発者にVision Proのカメラへのアクセスを提供した。次は一般ユーザー向けに、見たものを説明したり、覚えることを支援したりするAIツールが登場する段階だ。AppleはこれまでVision Proなどにカメラを使った支援機能を追加しており、今後も増やしていくと予告している。
WWDCの基調講演ではAIの進展に関する発表は多くないとみられるが、Appleは依然として、GoogleやOpenAI、Perplexityなどの競合に対抗する必要に迫られている。「AirPods」の一部モデルにはリアルタイム翻訳機能が搭載されるとの報道もあり、これはGoogleやMetaがスマートグラスやイヤホン、スマートフォンで実装している機能と同様だ。
visionOSで最も大きな動きとして期待されるのは、カメラからの情報を認識するAIの導入だ。2月にVision ProでApple Intelligenceが提供開始されたが、ユーザーが見ているものをカメラで「見て」活用するものではない。Googleは発売予定のヘッドセットやスマートグラスのカメラ情報をGeminiで活用する計画であり、MetaもQuest向けアプリ開発者がカメラにアクセスできるようにした(「Ray-Ban Metaスマートグラス」のAI機能も拡充している)。Appleも、将来のヘッドセットやスマートグラスで利用できる、カメラを認識するAIという分野に今すぐ進む必要がある。
WWDCでは新製品として、長らくうわさされている画面付きHomePodが披露される可能性がある。この製品は現行のHomePod同様にスピーカーとマイクを備えつつ、タッチスクリーンを搭載するとされる。フォトフレームのように使える大型画面になるのか、スマートホームの操作パネル程度の画面なのか、設置場所や価格も不明だ。当初は顔を追従するロボットアームの搭載もうわさされたが、その計画は見送られたようだ。
AppleがWWDCで発表するかもしれない意外な製品の中でも、これは実現の可能性が最も高そうだ。
WWDCは6月9日に開催予定で、基調講演の動画配信は米国太平洋時間午前10時(日本時間10日午前2時)から。米CNETはApple Parkで現地取材もして、ソフトウェアが示唆する新型ハードウェアの兆候、AppleのAI戦略の現状を確認する予定だ。製品に関するニュースも飛び出すかもしれない。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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