「なんだこれは……まるで『チキチキ・バンバン』の出来損ないじゃないか」──。思わず呟きが口をついて出た。
グーグルがちょうど披露したのは、自社開発のAI映像制作ツール「Flow」を使った短編映画だった。
そこに登場したのは、巨大なニワトリと協力して空飛ぶ自動車を発明しようと奮闘するおじいさんの物語。プレゼンターはI/Oの基調講演でその映像を「かなりイケてる」と絶賛していたが、私には到底その感覚が理解できなかった。
振り返れば、Google I/Oのイベントはずっとこんな調子だった。Googleが自慢気に自社ツールによるコンテンツ生成の実演を披露し、「これはすごい」「まるで魔法のようだ」と繰り返し称賛するのを聞きながら、私はむしろ困惑していた。実際に私の目に映っていたのは、「AIスロップ」。要するにAIが雑に吐き出したような粗雑なコンテンツの数々だったからだ。
AIスロップとは、AIによって生み出された、質が低く美的にも残念なコンテンツを揶揄した言葉だ。一度AI特有のクセに気づいてしまえば、もうそれが目障りで仕方なくなる。
リアルに見せかけておきながら実際には虚構そのもので、どこか不気味で生気を感じさせない、あの奇妙な質感だ。残念ながらGoogleがI/Oで示した最新ツールの成果にも、この不自然さを拭い去ることはできていなかった。
Googleは基調講演のかなりの時間を費やして、この手のコンテンツ生成ツールのアップデートについて解説したが、そもそもコンテンツ生成というもの自体が論争の種だらけだ。こうしたAIモデルが訓練データとして一体どんなメディアを用いているのかという倫理的な疑問も尽きない。
さらに、こうして生まれたコンテンツに果たして真の芸術性があるのか、そしてこうしたAIが置き換えつつある人間のクリエイターの未来はどうなるのか、という根深い議論も忘れてはいけない。
イベントの冒頭で、GoogleのAIツール「Veo 3」だけで作られた奇妙な動画を目にした瞬間から、私は嫌な予感を抱いていた。その予感は講演を通じてますます現実味を帯び、結局最後まで私の印象は変わらなかった。はっきり言って「がっかり」である。
もちろん、グーグルのAI生成コンテンツを高く評価し、その品質に異議を唱える私の意見に猛反発する人もいるだろう。だが、芸術が世に送り出されれば必ず賛否は分かれるものだ。もしグーグルが本気で、長期的にクリエイティブ業界の役に立つAIツールを提供したいと考えているなら、こうした批判とも真摯に向き合わざるを得ないだろう。
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この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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