日産、2万人減へ--日本含むグローバルで2027年度まで、2024年度は1兆975億円減の純損益で着地

 日産自動車は5月13日、2024年度の通期決算を発表した。

  1. 売上高525億円減、営業利益4989億円減
  2. エスピノーサ社長「関税の影響がなければ、2025年度は損益分岐点を目指す」
  3. 2万人削減の経営再建計画「Re:Nissan」発表

売上高525億円減、営業利益4989億円減

 2024年度通期の連結売上高は、前年同期比525億円減の12兆6332億円。連結営業利益は4989億円減の698億円、売上高営業利益率は0.6%で、純損益は1兆975億円減となり、マイナス6709億円だった。

2024年度通期の財務実績 2024年度通期の財務実績
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 なお、2024年度第4四半期の3カ月は、連結売上高が前年同期比243億円減の3兆4900億円。連結営業利益は846億円減の58億円、純損失は7773億円減のマイナス6760億円だった。通期のグローバル販売台数としては、中国の販売が10万台近く落ち込み、前年比2.8%減少。一方で中国を除くと前年並みにとどまったとしている。

2024年度の販売台数実績 2024年度の販売台数実績
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エスピノーサ社長「関税の影響がなければ、2025年度は損益分岐点を目指す」

 同社は競争の激化、為替やインフレ圧力などの厳しいビジネス環境が2025年度も継続すると想定。2025年度の営業利益、当期純利益、および自動車事業におけるフリーキャッシュフローの見通しを、現時点で未定としている。

 特に米国関税に関して、日産 社長兼最高経営責任者を務めるイヴァン エスピノーサ氏は、影響の予測額が最大4500億円などのいくつかの数値を明かしつつ、「関税の影響がなければ、2025年度は損益分岐点を目指すところ。もう少し目処が目処がたったところで、見通しを適宜報告したい」と話した。

米国関税の影響と対策 米国関税の影響と対策
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日産 社長兼最高経営責任者 イヴァン エスピノーサ氏 日産 社長兼最高経営責任者 イヴァン エスピノーサ氏
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2万人削減の経営再建計画「Re:Nissan」発表

 加えて同日、業績回復に向けた経営再建計画「Re:Nissan」を発表。日本を含むグローバル全体でコスト削減に取り組み、固定費と変動費を3年間で計5000億円削減する。人員は2万人、車両生産工場は17から10へ削減することで、ビジネス環境の変化に迅速に対応できるスリムで強靭な事業構造を実現する。2026年度までに自動車事業の営業利益と、フリーキャッシュフローの黒字化を目指すという。

Re:Nissanの計画イメージ Re:Nissanの計画イメージ
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 削減する5000億円は、変動費、変動費それぞれで2500億円ずつとなる予定。変動費の削減では、開発とコスト効率を向上する変動費革新プログラムの実行と、サプライチェーンの再考に取り組む。

変動率の削減イメージ 変動率の削減イメージ
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 変動費革新プログラムを実行すべく、TdC(Total delivered Cost)トランスフォーメーションチーフの下に各部門から約300人のエキスパートを集めるTdC改革オフィスを設置し、コストに関する意思決定を実行する。

 先行開発や2026年度以降の商品の開発は一時的に停止し、3000人の従業員がコスト削減活動に集中的に取り組む。ただし、開発期間を短縮するプロセスを迅速に適用し、商品の市場投入を遅らせることはないという。

TdC改革オフィスのイメージ TdC改革オフィスのイメージ
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 そのほか、サプライチェーンの再考ではより少数のサプライヤーでより多くの量を確保するため、サプライヤーパネルの再構築に取り組む。従来の基準を見直して非効率を排除するとしている。

 固定費では、2500億円を削減すべく、2027年度までに車両工場数を17から10に統合する。パワートレイン工場も見直し、配置転換や生産シフトの調整に加え、設備投資も削減するという。工場稼働率を3年間で70%から100%に引き上げつつ、生産能力は250万台に削減。需要の増加に合わせた50万台の上方弾力性を持たせるとともに、必用に応じてパートナーの工場も活用するとしている。

 なお、北九州市におけるLFP(リン酸鉄リチウムイオン)バッテリー新工場の建設も中止する。

 Re:Nissanでの人員削減数は、発表済みの9000人を含み、2027年度までに計2万人となる見込み。グローバルの生産部門、一般管理部門、R&D部門の直接員、間接員、および契約社員などが対象で、シェアードサービスの活用を進めることで販売費と一般管理費の効率向上も推進するという。

 開発面では、グローバルでR&Dのリソースを合理化させ、平均労務費単価を20%削減する。部品の種類は70%、プラットフォーム数は2035年度までに13から7に減らす。また、「新型日産スカイライン」「新型日産グローバルC SUV」「新型インフィニティコンパクトSUV」などでリードモデルの開発期間を37カ月、後続モデルの開発期間を30カ月へと短縮する取り組みを進めるとしている。

Re:Nissanの開発面での取り組みイメージ Re:Nissanの開発面での取り組みイメージ
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 市場と商品の戦略の再定義も実施する。顧客ニーズに合わせた最適な市場戦略と商品戦略を市場ごとに再構築することで開発リソースをコアビジネスに集中し、収益ある成長を確保する。

 市場戦略は米国、日本、中国、欧州、中東、メキシコを主要市場として位置付け、他の市場は各市場要件にあわせてアプローチする。例えば米国では、ハイブリッドなど急速に拡大するセグメントへの対応や、日産ブランドとのシナジーを通じたインフィニティブランドの再生に取り組む。日本ではモデルカバー率を拡大し、ホームマーケットにおけるブランド強化に取り組む。中国では複数の新エネルギー車(NEV)を投入することで市場でのパフォーマンスを強化しつつ、中国から輸出することで多様なグローバルのニーズに対応するとしている。

各市場ごとの戦略イメージ 各市場ごとの戦略イメージ
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 Re:Nissanでは、同社が従来目標として掲げた4000億円減という数値が見直された。エスピノーサ氏は「従来の予測の前提条件を全て洗い出して精査し、日産が抱える構造的な課題と市況を勘案すると、より大規模なコスト削減が必要だと判明した。非常に困難な決定だったが、今手を打たないと問題が悪化するだけ」と話した。

従来掲げた目標も再提示 従来掲げた目標も再提示
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